HatsugenToday

東谷暁による「事件」に対する解釈論

日本の生活水準を世界の中で見直す;いますべきことを地道に考えるために

日本の生活水準は世界のなかでどの程度なのか。ズバリ言って24位である。国連の発表だからいちおうは根拠があるだろう。また、日本の一人当たりGDPが20位にも入っていないことからすれば、相応の順位だということもできる。さらに、日本と順位の近い国と…

ウクライナの問題は何も解決していない;単にアメリカ下院で支援予算が通過しただけ

アメリカ下院はウクライナへの支援を回復させた。欧米の報道機関は称賛するところが多かったが、それほど喜べるかは疑問だろう。まず、アメリカの武器が届くには時間がかかり、ウクライナ兵士の不足は解消できない。そしてなにより、今年の11月の大統領選…

イスラエルはイランに再度攻撃をしかけるのか;スティーヴン・ウォルト教授による「起きていることの本質」

イスラエルはイランに報復するのか。それが今の国際ニュースのトピックだが、まずイランの攻撃自体がイスラエルへの報復だったことを言っておくべきだろう。日本の報道も「悪の権化イラン」のイメージを先行させ、いかにもイスラエルに正当性があり、報復を…

イスラエル軍がガザ南部ハンユニスから撤退した?;ラファ攻撃や米国の圧力との関係はどうなのか

イスラエル軍がガザ地区南部から撤退したとのニュースが流れている。これはどの程度確度の高いニュースなのか。また、その撤退はどの程度の撤退で、目的は何か。いまのところまだはっきりしていない。とりあえず、最初のロイターによる報道と日本でのニュー…

プーチンは世界制覇を目指しているという説の危うさ;スティーヴン・ウォルト教授が論じる「ウクライナ戦争後のロシア」

プーチンは世界支配を目指しているという話ほど、根拠がないだけでなく危険なものもない。ロシアがウクライナに戦争を仕掛けたことは確かでも、ヨーロッパ支配の一段階だという説や世界全体を征服する野望の一端であるというのは、歴史的に見れば独裁的な人…

トランプが激戦州をほぼ制圧;なぜバイデンは勝てないかをグラフで見る

バイデンが急追していると言われているが、トランプの勝利の可能性が今も高い。理由は独特のアメリカ大統領選挙の仕組みにある。全体で上回っても激戦州で勝てなければ大統領にはなれないのだ。いまのデータを見る限り、バイデンが勝利する可能性は低い。に…

アメリカはスポーツ賭博国家?;いま数値当て宝くじが低所得層を蝕んでいる

アメリカでは州ごとに宝くじを発行して、そこから生まれるあがりを政策に使っている。しかし、宝くじを買っているのは低収入の人が多く、その傾向はますます加速している。たしかに、宝くじの掛け金は少ないかもしれないが、全体の構図で見れば低収入層への…

イスラエルが米国のいうことを聞かないのはなぜか;スティーヴン・ウォルト教授が指摘する「問題の核心」

もうラファ攻撃においてイスラエルの大義は成立しない。それでもアメリカがラファ攻撃をやめさせられないのは何故なのか。ネタニヤフの自暴自棄か、米国イスラエル・ロビーの圧力か。もういちど、超大国の影響力とは何かを考え、そのうえでアメリカとイスラ…

バイデンの日鉄によるUSスティール買収阻止という喜劇;小さな土地を守るのに壮大な壁を建設する愚行

いかに米バイデン大統領が苦境に陥っているかは、日本製鉄のUSスティール買収をやめさせようとしているのを見ても分かる。これはかなりの愚行であるだけでなく、自国への投資を阻害する損な行為である。もちろん、自国の産業を守ろうとすること自体が悪いわ…

バイデンがネタニヤフを説得できない理由;米大統領の最初の曖昧メッセージが暴走を生んだ

イスラエル軍によるガザ地区攻撃は、いまや間違いなく虐殺の範疇にあるというのに、なぜアメリカはそれをやめさせられないのか。たとえハマスの行為が虐殺であったとしても、ここまで規模を拡大して報復する必要はないのではないのか。それは世界中の人道派…

安倍晋三がキックバック廃止で狙ったこと;裏金問題を権力の闘争として見直す

自民党旧安倍派による裏金の解明とかは、おそらく曖昧なままで終わるだろう。それよりも私の頭の中を占めたのは「キックバックが廃止されていたら、どうなっていたか」である。そもそも、なぜ安倍晋三会長が「やめよう」と言い出したのだろうか。潔癖な人だ…

ウクライナをNATOに加盟させるのは危険だ;スティーヴン・ウォルト教授の「停戦への道」

NATOはウクライナを加盟させる方向でロシアに対抗しようとしているようだが、本当にウクライナを加盟させれば戦争は終るのだろうか。停戦への道だとする論者たちはNATOの条約第5条を根拠としているので、他の加盟国がウクライナに兵力を送ることに…

ロシア経済は崩壊どころか成長している;プーチンの表情が明るい理由をデータとグラフで見る

ロシア経済がなかなか崩壊しない。それどころか成長すらしている。データを改竄して発表しているのではないかとの疑いはあるが、さまざまな他のデータから推測すれば、それほど奇妙なことではない。プーチンはこのまま大統領に再選するだろうし、また、その…

イスラエルがハマスとの停戦に合意か;ラマダン月が迫るなかでバイデンは時間との競争に

アメリカ国務省の高官は、イスラエルはハマスとの6週間の停戦に「基本的に合意」したと発表した。「いまボールはハマスのコート内にある」。もちろん、まだ正式に決まったわけではない。取り決めの細部はまだまだこれからのようだ。フィナンシャルタイムズ…

アメリカ空軍がガザ地区に食料投下を始めた理由;バイデンが直面した「飢民暴発」の真実

ようやくアメリカはガザ地区の海岸地域に空から3万8000人分の食糧を投下した。しかし、すでに50万人が餓死の危機に直面している。なぜ、こんなに遅れたのか。この空輸は継続されるのか。イスラエルはまだ邪魔をしているのか。アメリカとイスラエルの…

いよいよ米株価は危険水域に入った!;もちろん日本の株価もつれ落ちする危険が大きい

今日も株価は歴史的な最高値だった、という事態が永久に続くわけがない。とくに日本の株価はいまの日本経済から考えると不自然すぎる。もちろん、世界の株高を引っ張っているアメリカの株高は、もう完全に安全水域から遠いところにある。AIの衝撃、中国か…

ネタニヤフ首相による情報操作;米国人のイスラエル支持率がガザ殲滅戦の正当性に化ける仕組み

イスラエルのネタニヤフ首相は、2月27日、アメリカにおけるイスラエル支持が80%以上であることを根拠に、いま進行中のガザ地区南部への攻撃を、「完全に勝利するまで」継続すると述べて注目された。前日にはアメリカのバイデン大統領が、3月4日まで…

ロシア軍の戦死者はどれだけ増えたか?;グラフでみるプーチンの軍隊の内情

ウクライナのゼレンスキー大統領は自国の戦死者数を3万1000人と発表した。では、ロシア側の戦死数はどれほどになっているのか。ゼレンスキーによればウクライナの6倍だそうだが確認されていない。ロシアの死傷者数は31万5000人とのロイターによ…

米国の紛争介入が無力化する構造的な理由;スティーヴン・ウォルト教授が指摘する「解決法ギャップ」

バイデン政権がかかわった紛争はすべて事態が悪化している。ウクライナ戦争も援助したのに反転攻勢に失敗し、イスラエル・ハマス戦争もアメリカの警告など無視したイスラエル軍の暴走といってよい状態である。それ以前にもアフガニスタンからの撤退は失敗し…

米国による国際紛争への介入は有効なのか;スティーヴン・ウォルト教授が提示する4つの疑問

いまアメリカが行っている紛争への介入は、果たしてよく考えられたものなのだろうか。継続されているウクライナ戦争、イスラエル・ハマス戦争への関与のしかたや、イエメンやシリアへの爆撃は本当に効果をもっているのだろうか。ハーバード大学の政治学者ス…

イスラエルは自滅してしまうのか?;ネタニヤフの国家のあとに来るものを考える

イスラエルはハマスから提示されていた停戦案を問題外として拒否した。介在していたアメリカの顔は完全に潰された感がある。しかし、これはイスラエルの孤立を加速したのではないだろうか。いかにハマスの行為に対する憎しみが深いとしても、その報復は過剰…

トランプを支援する福音派の内実;2050年までにキリストが再臨、トランプは神が遣わした守護者

トランプ前大統領はアイオワ州に続いてニューハンプシャー州でも予備選に勝利し、共和党大統領候補となるのも時間の問題だ。注目されるのが支持団体である福音派との関係強化をどう進めているかである。2016年の選挙ではアメリカのキリスト教福音派がト…

ウクライナのザルジニー総司令官が発表した論文とは何だったのか【増補】;国家の危機を克服するクーデターの必要性

ウクライナのザルジニー総司令官が8日に解任された。ゼレンスキー大統領との確執が伝えられてきたが、その中心的な対立点は何だったのだろうか。ザルジニーは解任を予想して論文を発表しているが、この論文にはいまのウクライナの軍事体制に対して、何が不…

バイデンはトランプに対して圧倒的に有利?;【グラフで見る】選挙資金だけは積み上げた米大統領選の裏事情

いまやバイデン大統領はトランプ前大統領に対して圧倒的に有利、などといったら馬鹿にされるだろう。多くの世論調査がバイデンには疑問を投げかけ、トランプは共和党の予備選では圧倒的な強さを見せている。しかし、選挙費用の潤沢さからいったら、どういう…

イスラエルとハマスの停戦が提案されている;これ以上の惨禍を阻止するには何が必要なのか

アメリカ、カタール、エジプト、イスラエルの4カ国代表がパリに集まってハマスとの交渉枠組みを協議した。これに対してハマスの政治指導者ハニヤが「検討中」だとの反応をした。もちろん、この検討中は否応のどちらにも転ぶもので、たとえ応じると答えても…

国連職員はなぜハマスの急襲に参加したのか;イスラエル情報機関から米国に渡された報告書から読む

国連パレスチナ難民救済事業機関の職員が、ハマスの急襲に加わっていた。イスラエルによる情報機関文書を根拠に、アメリカを始めとする先進国が救済資金の拠出を停止している。では、このイスラエル情報機関が、アメリカ政府に見せた文書の内容とはどんなも…

国際司法裁判所のガザ地区改善の命令;強制力のない裁定のいっぽうでカウンター情報による反撃

国際司法裁判所は1月26日、イスラエルに対してガザ地区でのジェノサイド的行為を防ぐために、あらゆる措置を講じるよう命じた。しかし、実質的な強制力はまったくないといってよい。事実、同裁判所は戦闘の停止を命じていないし、報道も「シンボリック」…

イスラエル軍はハマスの3割弱を殺害したのみ;完全掃討するにはさらなる一般住民殺戮が予想される

イスラエルのネタニヤフ政権が行っているガザ地区攻撃は、ハマス全体の2割から3割を殺害したにとどまる。他の情報も併せて考えれば、この作戦はいつになったら終わるか分からないことがますます明らかになっている。ネタニヤフの党リクードを支持するイス…

イスラエル・ハマス戦争がすぐには終らない理由;スティーヴン・ウォルトが指摘する5つの要素と批判

イスラエル・ハマス戦争はなぜ停戦の見通しがたたないのか。その5つの理由をハーバード大学のスティーヴン・ウォルト教授が分かりやすく簡潔に説明してくれている。すでにハマスの急襲から100日が過ぎ、ガザ地区はほとんど廃墟と化しているが、アメリカ…

台湾の総統選挙をめぐる情報戦の内幕;終わりのない熾烈な戦いは続いている

台湾の総統選挙は1月13日に行われているが、選挙運動中にも中国の情報操作の試みは続いていた。それに対して、台湾もさまざまな方法で中国の介入に抵抗してきた。すでに結果が出ようとしているが、いまに至るまでの情報戦について、思い出しておくのも無…