HatsugenToday

東谷暁による「事件」に対する解釈論

2019-01-01から1年間の記事一覧

和牛の輸出を2倍にすると安倍首相がいってる;いったい誰がその和牛を生産するんだ?

安倍政権は12月10日、2018年に14.9万トンだった和牛の生産量を、35年度には30万トンに倍増する計画だという。例によって数字上の辻褄合わせで、ご都合主義的なお話なのだが、そもそも肉用牛飼育の農家が激減しているなかで、いったいどうや…

和牛の精子と卵を守るそうだ;でも飼育する農家は激減している

農林水産省は和牛の海外への流出を防ぐため、交配に使われる精液や受精卵の転売などを規制する方針だという(日本経済新聞12月8日朝刊)。ちょっと遅すぎると思うが、何もしないよりはいい。しかし、他にも、もっとやるべきことがあるのではないのか。ア…

インフレでなくともバブルは起こる;もう十分に危険水域です

世界の企業の負債が急増して、アメリカ株式が最高値をつけている状況からして、もうこれは「バブル」と呼ぶことができる。もちろん、あらゆる経済学者が一致したバブルの定義などはないのだが、いくつかのファンダメンタルズと株価あるいは負債率を比較して…

日米貿易協定は不利かだって?;不利に決まってるじゃないか

朝日新聞が日米貿易協定の収支試算をして、ようやく今日になって発表した。ちょっとおそくはないだろうか。まあ、それでもやらないよりはいいが、自動車関税および自動車部品関税を事実上アメリカが拒否したのだから不利は最初から分かっていた。 (朝日新聞…

最近、書いてみた文章などについて;日米貿易協定やMMTの考察

このブログは今年の5月に始めましたが、その少し前に「コモドンの空飛ぶ書斎」というサイトも準備を始めて半年ほど、多くはないですが、あれこれ書いてみました。そのなかで比較的読んでいただけたものを簡単に紹介しておきます。 まず、ひとつは日米貿易協…

いきなり社会主義ですか?;米国のマネをしても日本経済は救われない

米大統領選挙が1年後に迫り、アメリカでは民主党の候補者たちが、社会主義の色調を帯びてきたことが話題になっている。もちろん、トランプを擁する共和党側からの批判も多いが、民主党の最有力候補バイデンが、他の民主党候補を批判するさいに、ソーシャリ…

ジョンソン首相は選挙に勝てるのか;データで見る複雑な未来

最大野党の労働党のかなりの部分が賛成に回ったため、英国下院は29日、総選挙を12月12日に前倒しして行う特例法案を賛成多数で可決した。この選挙がジョンソン首相の思い通りになるかは分からないが、EU離脱(ブレグジット)への国民の意思を、選挙…

安倍政権のトランプへの「忖度」;日米貿易協定で自動車関税をプレゼント

わが国の首相は「その話はそのうちに続きをやりましょう」といわれると、「あ、これはもうOKの合図だな」と思うらしい。京都人の「考えておきますわ」ほどではないにしても、相手はトランプなのだ。勝手に自分たちに有利な判断をすれば間違うと、何故思わ…

増税に「納得」していいのですか:何に使われるのか考えないと

朝日新聞の調査によると、消費増税に「納得」した人は、全体の54%に上るという(同紙10月22日付け朝刊)。今回の増税を「納得している」は自民党支持層で74%というのは分からないでもないが、無党派層でも44%に達しているのは奇妙な話である。 …

日米貿易協定で4兆円のGDP押し上げ?;ただの情報操作でしょう

こういうのを「ごまかし」「インチキ」あるいは「ファジーマス(皮算用)」というのだろうか。政府は10月18日に「日米貿易協定の経済効果分析(暫定値)」を発表したが、GDPの押し上げ率が0.8%、約4兆円に相当するという。まず、この数値には「…

災害が起きても公務員がこない:なぜなら極端に少ないからです

つぎつぎと台風がやってきて、多くの災害をもたらす。いまも次の台風が接近中である。こんなときこそ防災についてあれこれ論じるべきだが、そのまえに念頭に置くべきことがある。それは日本にはあまりに公務員がすくなく、そのため防災に人員が回らなくなっ…

増税の影響が少ない?;それは十分に倒錯です

消費税増税を断行したけれど、それほどのマイナスの影響は出ていないようだというので、「安倍さんのやることには間違いがない」などと称賛している向きは別として、ほっとしている日本国民もどうかしている。それはもう十分に倒錯ではないのか。 この十年ほ…

5分で分かる、世界の核戦略:嫌悪する前に知っておいた方がいい

またしても、北朝鮮のミサイル実験が始まった。もちろん、これは核戦略の一環として行なわれている。核戦略と聞いただけで嫌悪を覚える人は多いだろう。また、報道の多くも、その悲惨さだけを伝えようとするので、そんなことを語る人間はどうかしているので…

いまさら進次郎を叩く者たちの浅ましさ

小泉進次郎環境大臣のさまざまな発言が批判されて、急に人気に陰りがさしているように見える。多くの評論家があれこれ批判を始めている。しかし、いまさら何をいっているのかと思われる話ではないか。進次郎の発言は内容のないもの、有権者の気を引くだけの…

秋風の吹くMMT;正体が分かってみれば猫マタギ

日本のMMT(現代貨幣理論)のファンたちは、公式入門書といわれるL・R・レイ『現代貨幣理論』の翻訳が出たので、MMTに対する批判が姿を消したなどといっているらしい。しかし、現実はまったく逆で、いよいよMMTのブームも秋風とともに下火になり…

果てしない後退;日米FTAの裏切り

どうやら、9月25日には「日米FTA」に安倍晋三首相は署名させられそうだ。まあ、安倍首相はもはや何の恥の意識もないから平気だろうが、「TPP並み」という話だった日米貿易協定は、次から次と「TPP越え」が明らかになっている。もちろん、日本側…

日米FTAのみじめさ;TPPに参加した当然の帰結

この問題について、いまさらあれこれ安倍政権に苦言を呈したところで、安倍首相はいたくもかゆくもないだろう。さすがに、この8月25日にフランスのビアリッツで、得意満面のトランプ大統領にひきまわされて記者会見したときには、浮かない顔をしていたが…

世界経済の転落はもうそこまで来ている

争点らしい争点もないままに参議院選挙が終わり、政治の季節は過ぎ去ったような気持ちになっていたが、こんどはアメリカの経済があきらかに変調をきたしはじめた。いや、そんなことはとっくに分かっていたのだが、トランプ大統領の勢いに圧倒されて、国際経…

新しいお金の理論にはご注意を;支配するつもりで支配される

1980年代のアメリカ経済学は「マネタリズム」の時代だった。米ケインジアンとの激しい論争を制して台頭したミルトン・フリードマンの経済学が、「ヴードゥ経済学(呪術経済学)」と言われたアーサー・ラッファーの「サプライサイド経済学」とともに、レ…

お気の毒なケルトン教授;ご都合主義的な日本のMMT派

先日、MMT(現代貨幣理論)のマドンナであるステファニー・ケルトン教授が来日して講演と記者会見に臨んだ。講演や会見では、その時間のほとんどが、これまでのMMTの主張に終始しており、ネットを含む新聞や雑誌の報道も、こうした大筋の話に集中して…

MMTの思想的背景:歴史学と文化人類学

日本では最近になって注目されるようになったMMT(現代貨幣理論)だが、欧米ではそれなりに思想的な背景があって形成されたものであることは間違いがない。政治的な背景についてはすでに書いたので、ここでは経済学以外の分野での動向をみておくことにし…

忘れられた論争の歴史:ハイパーインフレと財政赤字危機

デフォルトとインフレについて、定義も条件もなしに論じる傾向があることは、すでに述べた(デフォルトとインフレ:定義なしのデタラメ論議)。今回はハイパーインフレと財政赤字について、すでに忘れ去られた、あるいは故意に忘れたことにされている研究に…

デフォルトとインフレ:定義なしのデタラメ論議

いよいよ消費税増税が現実のものとなりつつあるなかで、増税に反対する議論も盛り上がりをみせている。そのいっぽうで、日本の政府負債が対GDP比で230%に達していることから、財政破綻への恐怖がこれまで以上に高まるとともに、自国通貨でファイナン…

金融庁の『高齢社会』報告書をめぐる混乱を楽しむ

もうほとんどオコの沙汰といってよいレベルまで堕落したのが、金融庁が発表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」をめぐるドタバタである。 わたしも前期高齢者で、また、周囲には後期高齢者も多くいるので体験的にいえば、この報告書はそこそこ納得…

流行りを追うだけなら学者はいらない:浜田宏一氏への疑問

エール大学名誉教授で経済学者の浜田宏一氏が、安倍晋三首相にMMT(現代貨幣理論)についてレクチャーして、主流派も財政については、これまでと違う解釈を行うようになっていると述べたそうである。まあ、アメリカで活躍していた一流の経済学者のいうこ…

幻視のなかのMMT;日本が根拠である意味

すでに知られるようになったことだが、自国通貨を持つ国家ならば、いくら政府支出を増やしても破綻することはないと主張するMMT(現代貨幣理論)が、根拠としてきたひとつの現象は日本経済である。 日本経済はすでに政府の負債が対GDP比で200%を超…

やっぱりおかしなMMT;あまりに楽観的な世界観

「自国が発行する通貨なら、国家は無制限に発行できる。したがって、財政赤字がどれくらいになったかに関係なく、国家は完全雇用を実現し、社会保障を拡大することができる。デフォルト(国債の償還停止)など起るわけがない」 こんなことを言われたら、財政…

人は「いつまでも」働けるのか:貧相な働き方改革

安倍晋三政権は高齢化社会への対応として、また労働力の逼迫への対策として、国民が70歳まで働ける仕組みをつくるといっている。そしてそれは、国民が望んでもいるからだというのである。 しかし、国民の多くが高齢になってからも、本当に働きたいと思ってい…

安倍首相の「内奏」はルール違反ではないか

元号が令和にかわり、国民の皇室にたいする敬意も高まり、上皇の「お言葉」に始まった譲位への経緯も平穏にすみそうである。これは国民として喜ぶべきことだろう。 しかし、今上が即位されてすぐに安倍晋三首相によって行われた「内奏」が、テレビ画面に登場…

最近はこんなことを始めています

Hatenaでブログを始めることにしましたが、他にも最近は「コモドンの空飛ぶ書斎」というサイトも開設しました。まだ、仮開設といってよい状態ですが、6月1日には正式開設ということにしたいと思っています。 こちらのブログでは、可能なかぎりジャーナリス…