HatsugenToday

東谷暁による「事件」に対する解釈論

2021-01-01から1年間の記事一覧

オミクロン株が急伸する世界;目で見るコロナ禍の現状

オミクロン株が登場して以降、1日あたりの感染者数が、これまでのピークを大幅に超えてしまう国が多くでてきた。この新しい変異株はきわめて感染力が強いというのは、ほぼ間違いないと思われる。しかし、そのいっぽう、オミクロン株が引き起こす症状が本当…

英国の学生に流行する「スタディ・ドラッグ」とは何か;頭をよくする薬をめぐって悩む有名大学

英国にある有名大学の学生たちが、試験を受けるさいや論文を書くために、頭脳が明晰になるクスリを使っているという報道があった。小説や映画に登場するような、最先端の知能促進薬が発明されたのかと思ったが、どうもそうではないらしい。そうした昔のSF…

【増補】「ファクターX」探しはもうやめたら?;理研の国内発表は誤解を誘発している

【文末にかなり増補してあります】面白いことは、しばしば役に立たないことが多い。もちろん、面白いことは人びとを楽しませて、気持ちを快活にさせてくれる効果があり、直接に役に立たなくても貢献することがある。しかし、まだ役に立たないことが分かって…

オミクロン株は本当にマイルドなのか?;最前線の研究が提示する希望と警告

オミクロン株の感染力はすさまじい。12月22日現在ですでに106カ国に拡散している。この新しい変異株についてはさまざまな議論があるが、ようやくいくつかの研究がその感染の諸傾向をぼんやりとだが提示しつつある。ここでは海外の2つの報道機関が取…

中国の「ゼロ・コロナ」は維持できない;オミクロン株がもたらした新しい条件

中国のコロナ対策はこのまま維持できるのか? オミクロン株が登場することによって、この疑問はますます強いものになっている。これまで中国は新規感染が見つかるたびに、その地域の感染疑惑者を全員隔離するといった「ゼロ・コロナ」戦略を採用してきた。し…

英国でオミクロン株の最初の死者がでた;なによりも正確な状況の把握が必要だ

現地時間の12月13日朝、英国のジョンソン首相は同国でついに最初のオミクロン株による死者がでたと発表した。感染は早いが症状は軽いとの予想が広がっていたが、一転して死亡の危険が現実のものとなった。ジョンソン首相も「オミクロンでは死なないとい…

日本が立つ2つのフロント;わが国は経済でも防衛でも最前線にいる

日本はいまも世界の「フロント」に立っている、と言われれば、冗談でしょうと言いたくなる。あるいは、それは逆説的に言っていると思うだろう。しかし、英経済誌ジ・エコノミストが12月11日から電子版に掲載している「最前線に立つ日本」というスペシャ…

米国のインフレがとまらない;なぜ上昇するのか、そしてなぜ日本はデフレなのか

アメリカのインフレがとまらない。最新の発表では消費物価は前月比で6.8%の上昇を見せている。この傾向が続けば、中央銀行にあたるFRBが政策金利を引き上げることは確実で、なかにはこの数値が間違っているのではないかと言い出す人もいる。しかし、…

中国の台湾防空認識圏への侵入は戦争のリハーサル;米国防相オースティンが激しく牽制した理由

バイデン政権の国防長官ロイド・オースティンが「中国の頻繁な台湾の防空識別圏への侵入は、台湾侵攻のリハーサルだ」と発言して話題になっている。11月4日の「レーガン国防フォーラム」で講演後、司会者の質問に答えたものだが、侵入した中国軍機にはジ…

南アフリカがオミクロン研究を発表;新変異株の何がどこまで分かったのか

オミクロンについて最初の研究レポートが、12月2日、南アフリカ国立伝染病研究所から発表になった。(データは4日のものを追加した)同研究はこれまで得た新型コロナへの免疫を、オミクロン株は回避する可能性があることを指摘していて、世界中のオミク…

もう気分は新ワクチン発売中!;製薬会社と保健機関の大いなるギャップ

新しいコロナウイルスの変異株オミクロンは、いまのところまだその性格がしっかりとつかめていない。WHOは「懸念すべき変異株」に指定して「高いリスク」があると警告しているが、最初にオミクロンが発見された南アフリカからは「入院した患者はいまのと…

オミクロン株へのワクチン開発がすでに始まっている;いまのところmRNA型が有利だというが

新型コロナウイルスにオミクロン株が登場したことで、新たな恐怖が世界に広がっている。まだ、その性質がよく分かっていないのだが、ともかく可能な対策はとらなくてはならない。なかでも機敏に動いているのが、コロナワクチンを供給してきた製薬会社である…

南アフリカで発見された新変異株とは何者か;まだ名前もないが慎重な情報収集が必要だ

南アフリカで新しいコロナウイルスが発見され、この変異株がワクチンの効果を低下させる危険性があるというので、世界は大きな衝撃を受けている。日本では株価が下がったと騒いでいるが、それよりもおさまったかにみえる日本における感染拡大が、ふたたびこ…

なぜ日本だけがデフレなのか?;金融資産の移動だけが問題ではない

先進諸国でインフレが進行している。アメリカでは最近のインフレ数値を見て、FRBの金利引き上げが来年の中頃にはあるという予測が飛び交っている。ところが、先進国のなかでは日本だけがデフレに戻ってしまっているのだ。欧米のメディアはその理由を求め…

いまや世界的に「大きな政府」の時代になった;それが繁栄と幸福をもたらす保証はない

いまや世界的に「大きな政府」が普通になっている。いや、それどころか「巨大な政府」と呼ぶべき様相を呈しつつある。この現象については、コロナ禍だけでなく経済成長の長期停滞が原因だとして、すでにさまざまな議論が展開している。しかし、規模において…

デルタ株にはどのワクチンが有効なのか;これまでのデータの中間報告を見ておこう

新型コロナのパンデミックはいまも続いていて、感染や重症化の度合いも国によってマダラ状になり、これからどうなるかの予想は難しい。そんななかで、コロナワクチンに何を選ぶかの問題はいよいよ重要になっている。もちろん、個人が勝手に選べる状況にはな…

アシステッド・ダイイング法が世界に広がっている;「安楽死」について考えることが死生観を鍛える

アシステッド・ダイイングについての世界的な議論が再び高まっている。聞きなれない言葉だと思う人もいるだろうが、日本でいう安楽死のことだ。しかし、安楽死という言葉は安楽という語感が誤解を生みやすいとの指摘は多い。このアシステッドという語の翻訳…

東ヨーロッパでコロナによる死者が急増;その理由はデルタ株だけではない

ヨーロッパでは新型コロナの感染が急激に拡大し、多くの死者を生み出している。ドイツについては最近のブログで書いたし、ニュースでも頻繁に報じられているから、もはや周知のことといってよいだろう。その理由は、デルタ型への移行が大きいというのも間違…

米国の物価上昇は他人事ではない;日本でも企業物価は40年ぶりの急上昇だ

アメリカではインフレがじわじわ続き、ついに今年10月は31年ぶりの消費者物価6.2%上昇を記録した。コアCPIも4.6%であることから、いよいよインフレ時代に移行したとの見方も出てきた。日本でも企業物価指数が40ぶりの前年比8・0%上昇と…

中国の不良債権が姿を現し始めた;氷山の一角でまだ序の口でもすごい

中国恒大集団の経営危機に端を発した、中国の不動産バブル崩壊は、ここにきて次第にその実態をあらわにしつつある。恒大が一部の負債利子を払ったことで、一時は鎮静化したような印象を与えた負債問題が、恐るべき数字として姿を見せ始めているのだ。バブル…

英国で「マスクは役に立たない」裁判が始まる;公的機関の医師の私見は表現の自由なのか

新型コロナウイルスについて「表現の自由」を根拠にし、医師の資格をもっていて公的医療にたずさわる人物が、政府のコロナ対策に真っ向から反対する自説をソーシャルメディアで発表してよいのか。英国ではある医師が医療監察委員会(GMC)にソーシャルメ…

FRBが緩和政策を転換した!;まずは証券買上げを縮小、次は利上げか

アメリカ連邦準備理事会(FRB)は、11月3日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的緩和縮小(テーパリング)を今月から開始すると決定した。当面は財務省証券と住宅ローン担保証券(MBS)の購入月額を減らしていくが、「いまは利上げのときでは…

コロナ禍での自殺白書への疑問;職場で追い詰められただけなのか

日本における2020年の自殺が11年ぶりに増加しており、しかも、男性は微減しているのに女性が15%もの増加だったとの『自殺白書』が閣議決定された。このことから、コロナ禍のなかで追い詰められた人たちが自殺に追い詰められ、とくに、女性は労働環…

スウェーデンのコロナ委員会が報告;対策は遅すぎ、そして不十分だった

【追記】いまスウェーデンは、政治的混乱のさなかにある。ロベーン首相の辞任をうけて女性初のアンデション次期首相が選出されたかとおもうと、たった1日で辞任してしまった。さらに与党の社会民主党が政権の座からおりる可能性は高いと報じられている。そ…

米中冷戦は米ソ冷戦よりずっと危険だ;ミアシャイマーが指摘する5つの理由

中国が台湾にいつ侵攻するのかが話題になっていたと思ったら、一足飛びにアメリカと中国の「新冷戦」の行く末について論じる人が増えてきた。国際政治学におけるリアリストのひとりジョン・ミアシャイマーは『フォーリン・アフェアーズ』11月/12月号に…

「新しい資本主義」の本当の現実;パンデミックがもたらす「即時経済」は監視経済だ

新型コロナのパンデミックはいまも世界を蔽っているが、この大混乱が新しい資本主義をもたらしつつあるという議論は、いまのところ期待と希望をもって語られているといってよい。ことにコロナウイルスとの戦いのなかで、データの収集と分析は急激に進歩した…

英国のコロナ感染急増が鎮静化しない;ワクチン3回接種と規制復活で乗り切れるか

英国での新型コロナ感染再拡大については、すでにニュースでも目にしていることだろうが、10月20日には4万9139人の感染者が確認されたから、同国政府の焦りもはなはだしいものがある。先日行われたサジド・ジャヴィド保健相のブリーフィングでは、…

英国のコロナ感染がぶり返したのは新型ウイルス?;さらに感染力のあるデルタ・プラスが登場した

英国では新型コロナの感染が、またしても急拡大して、同国民を不安におとしいれ、政府をあわてさせている。10月18日現在で1日の感染が5万人に近づいており、とくに子供の感染が広がっているという。そのなかで、デルタ株から枝分かれした新しい「デル…

中国の成長4.9%に減速の意味;ばらばらに見える事件は大変動の兆候だ

中国の国家統計局が10月18日に発表した、今年7~9月(第3四半期)のGDP伸び率は実質4.9%だった。これは中国にとって良い数字なのか、それとも悪い数字なのか。6四半期続けてプラスといえば良い話だが、伸び率が明らかに減速していることを見…

中国の極超音速ミサイルの何が脅威か;飛行を把捉できず破壊もできない滑空体

フィナンシャル・タイムズが10月17日朝(日本時間)、中国が核搭載可能な極超音速ミサイルの実験を8月に行っていたと報じて、アメリカを含む世界の軍事関係者にショックを与えている。世界の核兵器の構図が大きく変わる。たとえば、台湾問題にとっても…