HatsugenToday

東谷暁による「事件」に対する解釈論

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

経済制裁下のロシア国民の消費生活;見かけよりずっと健全な理由とは何か

ロシアへの経済制裁を確実なものとするため、ドイツがエネルギー政策を変えるというニュースが繰り返し流れている。テレビなどでも、この変更を積極的に支持する市民の動きなどが、きわめて好意的に報道されている。では、経済政策を受けているロシアの経済…

上海がついにロックダウンに突入した;見えてきた中国の「ゼロ・コロナ」の終わり

中国の上海はついにロックダウンに突入した。ほんの数週間前まで、2600万人の上海はロックダウンしないだろうとの見方が強かった。しかも、街を2つに分けて交代で封鎖するという、かなり変則的な方法を採用している。これで中国政府も「ゼロ・コロナ」…

ウクライナとロシアの停戦交渉は難航する;「中立化」で合意しても具体化には困難が多い

3月29日の午後から、ウクライナとロシアの4回目の停戦交渉が、トルコのイスタンブールで始まった。最新のニュースではウクライナ側は「中立化」を受け入れてNATOへの参加をあきらめ、ロシア側はウクライナの「非ナチ化」「非軍事化」は要求しないと…

ウクライナ軍の兵士たちの肖像;祖国防衛戦を遂行しているのは誰なのか

ロシア国防省は3月25日、この1カ月でのロシア軍の死者は1351人に達したと発表した。それに対しウクライナ側の死者は、同省によれば、1万4000人以上、負傷者は1万6000人に達しているという。しかし、少なくともロシア側のこれらの数値を信…

中国のコロナ禍はこれからが本番;破滅的リスクを回避する方法はあるか

ロシアにばかり目を向けていると、ひょっとすると日本にとって、もっと大きな影響を与える中国の動向を忘れがちになる。いま中国は多くの問題を抱えながら、秋の中国共産党大会に向かおうとしている。このときおそらく習近平は、総書記の3期目続投を確実な…

いかにしてロシアは核を使うのか;ウクライナ戦争が核戦争に移行するとき

3月22日、ロシアのペスコフ大統領報道官が、核兵器の使用を否定しなかったとの報道が世界を駆け巡った。CNNのインタビューに答えたもので、「ロシアが存立の危機に直面した場合、核兵器の使用を否定しない」との発言だったが、ウクライナ戦争が膠着状…

ウクライナとロシアの交渉はなぜ進まない?;「戦争も交渉のうち」と見る戦争取引モデルからの分析

ウクライナとロシアの停戦交渉はなぜ進展しないのか。もちろん、そこにはプーチンが戦争遂行の野望をもち、ゼレンスキーに抗戦継続の意志があるからだが、さらに、いまや流動的な戦争の状況そのものが、それぞれの交渉条件となってしまったからだ。「戦争も…

ロシアはウクライナの中立化と武器制限を提案;それが停戦の条件だが、いったい誰が保障するのか

ウクライナとロシアの和平交渉に進展があったとの報道が世界を駆け巡った。ロシア側からの提案として、ウクライナが中立化を宣言して一定のレベルの自国軍に甘んじると約束すれば、ロシア軍は停戦に応じて軍隊をひきあげるというものだ。もちろん、これには…

ロシアの戦車はなぜ進軍できないのか;補給線と軍事テクノロジーから考える

なぜロシア軍はウクライナのキエフを攻略できないまま、戦車を渋滞させているのだろうか。もちろん、その理由はいろいろ論じられているが、有力な説が「兵站(補給線)」の問題と、「軍事テクノロジー」の問題だ。しかし、そんなことは侵攻を決断する前に分…

中国のコロナ感染爆発が深圳に;1750万人の大都市をロックダウン!

中国のコロナ感染は爆発的な拡大が続いている。ついにハイテク・ビジネスの中心地である深圳がロックダウンに入った。深圳は1750万人の大都市であり、中国のコロナ政策は、これまでで最も厳しい試練を迎えることになりそうだ。 フィナンシャル・タイムズ…

ウクライナ危機の責任は西側にある;ジョン・ミアシャイマーの冷徹な分析

アメリカの国際政治学者ジョン・ミアシャイマーがジ・エコノミスト3月11日号にエッセイを寄稿した。このエッセイの結論から紹介しておこう。「プーチンは確かにロシア軍の実力を見誤り、ウクライナの抗戦を甘く見たかもしれない。しかし、追い詰められた…

ウクライナとロシアの外相会談は進展なし;ただし、語られた言葉からそれぞれの思惑は推測できる

ウクライナとロシアの外相会談は3月10日に開かれたが、「見解の相違は大きく、進展はなかった」と報じられている。何も決まらなかったが、何も話さなかったわけではない。ウクライナのクレバ外相は世界的な安全保障のもとでのウクライナの「中立化」を提…

ゼレンスキー大統領の亡命計画が進行中;しかし彼は「私はキエフにとどまる」と国民に訴えた

ウクライナとロシアの第3回目の交渉も進展がなかった。そのいっぽうでウクライナのゼレンスキー大統領を亡命させる計画が進んでいる。しかし、ゼレンスキーは「私はキエフにとどまる」とビデオメッセージでウクライナ国民に宣言しているため、欧米による救…

ウクライナ戦争の思想的な意味;フランシス・フクヤマの理念と世界のリアリティ

2022年2月24日は世界史にとって、決定的な転機の日だったとフランシス・フクヤマは述べている。プーチンのロシア軍がウクライナに侵攻することによって、「歴史の終わり」だった1991年以来続いてきたリベラルな世界が終わり、「プーチンの世界」…

ウクライナ、台湾、そして日本(8)プーチンを支持して窮地におちいる習近平

世界はウクライナ情勢に引き付けられているが、同時に中国にも目を向けなくてはならない。少し前まで、習近平主席は今年秋の中国共産党大会で、盛大な拍手のなかで異例の第3期目の党総書記に就任するはずだった。しかし、いまや3つの失態が彼に大きな影を…

ウクライナ、台湾、そして日本(7)プーチンの戦争はすでに東アジアの領土問題に及んでいる

ウクライナ戦争の勃発はアジアにおける領土問題に大きな影響をもたらす。それは間違いないことだ。ところが、奇妙なことにウクライナと台湾は「違う」と主張して、ウクライナと比較して台湾有事について考えるのは危険だとか、あるいは10年早いとか述べて…