HatsugenToday

東谷暁による「事件」に対する解釈論

イスラエル

バイデン外交に見る失敗の本質;スティーヴン・ウォルト教授が指摘する「負の遺産」

トランプ大統領の第2期目が始まろうとしている。すでに多くの懸念が生まれており、とくに外交においては、混乱を収拾するのではなく、むしろ加速するのではないかと憂慮されている。そこでいま確認しておくべきは、前任者であるバイデン大統領の外交が、ど…

イスラエルは中東に秩序をもたらすのか;ハマス、ヒズボラ、イランに勝利した後に来る危機

ハマスを掃討し、ヒズボラに多大な損害を与え、イランにも核施設の一部に打撃を与えたことで、イスラエルは中東において存在感をさらに増強している。では、イスラエルはこの地域の「大国」となって君臨していくのか。それとも中期的にはアラブ勢力の反発を…

アサド政権崩壊で浮上する無秩序;そもそも秩序を破壊したのは誰だったか?

バッシャール・アサド大統領はロシアに亡命して、シリアは父親のハーフィズと合わせて50年ほど続いたアサド独裁から解放されたと報道されている。しかし、その解放を実現した中心勢力がハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)であることは、西側諸国…

イスラエルとヒズボラの停戦はいつまで続く;現実を直視するための5つの視点

イスラエルとヒズボラの間に停戦が成立した。もちろん、これで中東に長期的な平和が来たわけではない。この停戦が、おそらくはイスラエルによるイラン爆撃の華々しい成果によるものであることを考えれば。むしろ、中東のパワー構造が大きく変化していくわけ…

イスラエルはイランの核施設を攻撃していた;アメリカの要請など無視するネタニヤフの暴走

イスラエルが10月に行ったイランへの報復のなかで、核施設の「特定の構成施設」を攻撃したと、ネタニヤフ首相が議会で演説した。これはあきらかにバイデンを「卒業」して、トランプに「入学」したということで、アメリカ政府はイランの核施設と石油施設は…

イランの核兵器完成は意外に早い?;対イスラエル戦略は大幅に変更されている

イランは核武装に至るのか。イスラエルはそれを阻止する行動に出るのか。この問題を考えるうえで、イランのいまの開発力がどのレベルにあるのか、そして、どれほどのスピードで核保有に至るのかが問題になる。実は、その開発期間については確定した説がなく…

ネタニヤフに欺かれ続けるバイデン;次はイスラエル・イラン戦争が世界をパニックにする

イスラエルのネタニヤフ首相は、いまイランへの報復プランを画策するのに忙しい。ちゃんと米バイデン大統領にも相談しているようだが、決断するのはネタニヤフで、バイデンはまたしても欺かれると予想されている。ネタニヤフが狙うのはイランの油田なのか、…

イランによる報復は次の引き金を引く;イスラエルが行う再報復は何が標的になるのか

イランによるイスラエルに対する報復は何を引き起こすのか。それはもちろんイランとイスラエルとの全面戦争である。それでは、その先にあるものは何か。今回の報復がかなり本格的なものだったことで、中東情勢は一気にいままでと異なる状況に突入してしまっ…

このまま戦争を続けるとイスラエル経済はどうなる?;すでにキャピタル・フライトが始まっている

イスラエルはヒズボラとの全面戦争に突入しようとしている。ガザ地区での徹底した戦いかたをレバノンにも適用しようとしているのだろうか。軍備について考えれば、素人目にみてもアメリカ製を含めて圧倒的であるように思われる。しかし、ではイスラエル経済…

ハニヤ暗殺はゲストハウスに仕掛けた爆弾による;モサドの作戦は成功したがイスラエルはさらに孤立へ

ハマスの最高指導者イスマイル・ハニヤが暗殺されたが、それはテヘランの定宿にしていた施設に、数か月前から仕掛けられていた爆弾によるものだった。また、その作戦を指導したのがイスラエルの情報機関モサドによるものであることはほぼ間違いがない。最初…

リアリストはなぜガザ戦争に反対しているのか;スティーヴン・ウォルト教授が語る「戦略と倫理」

国際政治学におけるリアリストはたいがいの戦争に反対してきた。不思議に思う人もいるかと思うが、リアリストの代表であるスティーヴン・ウォルトが、なぜリアリストは戦争を喜ばず、今回の「ガザ戦争」についても反対しているのかを語っている。ポイントは…

イランの核武装は急速に進んでいく;スティーヴン・ウォルト教授が予測する近未来

イランのライシ大統領の事故死によって、同国をめぐる情勢は急速に緊張の度を増している。注目されるのは次の大統領が誰になるか、もうひとつが同国の核兵器開発はどうなるかである。前者はハメネイ師の次男が有力だといわれるが、後者のイランの核兵器につ…

イスラエルはイランに再度攻撃をしかけるのか;スティーヴン・ウォルト教授による「起きていることの本質」

イスラエルはイランに報復するのか。それが今の国際ニュースのトピックだが、まずイランの攻撃自体がイスラエルへの報復だったことを言っておくべきだろう。日本の報道も「悪の権化イラン」のイメージを先行させ、いかにもイスラエルに正当性があり、報復を…

イスラエルの病院攻撃は正当化できるか;証拠の提示と法理の適用の先に行く前に

イスラエルとハマスの一時的停戦は2日延長となった。その後、どのように展開するかは不明だが、イスラエルがハマス殲滅を明言している限り(そしてハマスがイスラエル消滅を夢見るかぎり)、停戦は可能でも講和にたどりつくのは困難だと思われる。今回の場…

解放されたパレスチナ人はほとんどが少年だった;捕虜交換の内実を検証する

イスラエルとハマスの一時的停戦で、イスラエル側から解放された人たちはほとんどが少年で、しかも、西岸地区で拘束された者たちだった。彼らはどのようにして捕虜となったのか。そしてまた、これについてハマスの反応はどうなのか。ともかくデータから見て…

イスラエル・ハマス戦争以後の世界;第3次世界大戦にならなくとも大きな変化が生まれつつある

ガザ地区での戦いは続いているが、それが終了したのち、世界はどうなるのか。第3次世界大戦がすでに始まっているという人もいるが、それはどこまで妥当なのか。世界規模で情報戦が進行するなかで、正しいイメージを持つことはきわめて難しい。しかし、こう…

バイデン大統領がイスラエル訪問を発表した;その背後で画策される「最悪の事態」の回避

バイデン米大統領が10月18日にイスラエルを訪れることが発表された。ブリンケン国務長官がイスラエルに入っており、CBSの同月15日に放送されたインタビューで、バイデンのハマス対イスラエルについての考えを、すでに米国民に語っている。周到な準…

バイデンが「ガザ占領」は失敗すると牽制;イスラエルのハマス掃討は支持するという

イスラエルが地上戦によりハマスを掃討すると表明している。しかし、それでは一般市民の犠牲も大きくなる。そこでバイデン米大統領がガザ占領は大きな過ちと発言したことが注目されている。もちろん、バイデンはハマス掃討を支持しているが、ガザ占領によっ…

ハマスはなぜイスラエルを急襲したのか;スティーブン・ウォルトのアメリカ中東外交批判

先進国のほとんどがハマスを激しく非難して、イスラエルを支持すると表明している。たしかにハマスは市民を殺害し混乱をもたらしているが、では、彼らに何の理由もないのだろうか。これまでのハマスとイスラエルの抗争を、おさらいしてくれるメディアもある…

イスラエルはなぜハマスの急襲を阻止できなかったのか;世界を不安定化しているのは誰だ

圧倒的な軍備と情報力を誇るイスラエルが、なぜハマスの急襲を阻止できなかったのか。そして、イスラエルのネタニヤフ首相による反撃は、これからどのように展開するのか。さらには、ウクライナやアフリカでの戦争が続いているなかで、この中東の「戦争」は…

コロナの「集団免疫」神話よさようなら;しかし、新しい救世主はまだいない

希望を支えていた神話が崩壊すると、こんどは新しい神話や新説にすがりつきたくなる。それは人間の当然の性向で、とくに注目すべき現象ではないが、なかにはちょっと気をつけたほうがいいと思われるものもある。たとえば、コロナ禍について盛んにいわれた「…