HatsugenToday

東谷暁による「事件」に対する解釈論

停戦に「栄光」は必要なのだろうか?;ウクライナ戦争の終わり方が議論になっている

ウクライナ戦争をどのように停戦にもっていくのか。いま問題になっているのは、冬が終わってからウクライナが再び開始する「反転攻勢」ではなくなっている。イスラエル・ハマス戦争によって一度話題の中心から外れたウクライナだったが、その結果が、この戦…

なぜ米民主党にはバイデンしかいないのか;大統領選に向かうアメリカと世界の憂鬱

いよいよアメリカ大統領選挙の年が近づいてきた。このままいけば民主党の候補者はバイデンだというが、いったい何故なのだろうか。共和党がトランプというのは、それなりに理由がある。勝てるからである。しかし、これまで民主党がバイデン以外に有力候補者…

ネタニヤフ首相は戦争を指揮していない;強硬派に乗っ取られたイスラエルのガザ掃討作戦

イスラエルのネタニヤフ首相は、すでにガザ地区作戦の指揮から外され、戦争を遂行しているのは、戦時内閣に参加しているヨアフ・ガラントと軍部だという指摘は有力になりつつある。これが正しければ、そしてかなり正しいと思うが、たとえアメリカがイスラエ…

ウクライナの反転攻勢が「失敗」した原因;あらわになったアメリカの「計算違い」と「思惑違い」

ウクライナ軍による反転攻勢はアメリカ側の計算違いで「失敗」し、今後も成功の見込みは立たないと見られるようになった。これはもちろん、ウクライナ政府および軍の失敗でもあるが、戦争遂行に必要とされる武器弾薬および財政を支援してきた、アメリカの責…

ゼレンスキーはどれくらい困っているか;データで読むウクライナの現在の窮状

ウクライナでは戦争が続いているが、イスラエル・ハマス戦争に世界の目が集中するなかで注目度が低下している。しかも、欧米のウクライナへの支援に重大な懸念が生じている。いうまでもなくアメリカの軍事・財政支援が、米国内の政争のために追加できず、今…

イスラエルの病院攻撃は正当化できるか;証拠の提示と法理の適用の先に行く前に

イスラエルとハマスの一時的停戦は2日延長となった。その後、どのように展開するかは不明だが、イスラエルがハマス殲滅を明言している限り(そしてハマスがイスラエル消滅を夢見るかぎり)、停戦は可能でも講和にたどりつくのは困難だと思われる。今回の場…

解放されたパレスチナ人はほとんどが少年だった;捕虜交換の内実を検証する

イスラエルとハマスの一時的停戦で、イスラエル側から解放された人たちはほとんどが少年で、しかも、西岸地区で拘束された者たちだった。彼らはどのようにして捕虜となったのか。そしてまた、これについてハマスの反応はどうなのか。ともかくデータから見て…

ウクライナ戦争とイスラエル・ハマス戦争への視点;「チェンバレンの失敗」か「スパルタの成功」なのか

現在、イスラエルとハマスは一時的停戦に入っていて、ハマスがイスラエルから連れ去った人質と、イスラエルが拘束しているパレスチナ人捕虜との交換が行われている。この停戦が可能になったのはアメリカが本腰になって介入したことが大きかった。そのタイミ…

シファ病院地下のハマス司令部はどこに行った?;いまも司令部の存在を信じるバイデン大統領

どこにいった、地下の司令部は? いまのところイスラエル軍はシファ病院の下にあると主張してきた、地下のハマス司令部を公開していない。公開したのはシファ病院のMRIセンターの荒廃した施設のなかに、「置き忘れられた」と思われる武器とパソコンだけで…

アメリカの世界戦略はどうなるのか;バイデンが演じ損ねた「世界の警察」のゆくえ

イスラエル軍がシファ病院に突入して、イスラエル・ハマス戦争は新局面を迎えたが、どのような結末を迎えようとアメリカ政府の責任は大きい。そして、いかに病院への突入は好ましくないといったところで、バイデン大統領の再選には暗雲が立ち込めている。こ…

バイデンの経済政策を米国民は評価していない;最新の世論調査はトランプに負けることを示している

アメリカのバイデン大統領は本当に来年再選できるのだろうか。いや、それどころか立候補できるのかも怪しくなっている。バイデンの経済政策についての世論調査が発表されたが、もうこれだけで再選は無理だと思わせる内容だった。経済政策に加えて、歴史上最…

イスラエル・ハマス戦争以後の世界;第3次世界大戦にならなくとも大きな変化が生まれつつある

ガザ地区での戦いは続いているが、それが終了したのち、世界はどうなるのか。第3次世界大戦がすでに始まっているという人もいるが、それはどこまで妥当なのか。世界規模で情報戦が進行するなかで、正しいイメージを持つことはきわめて難しい。しかし、こう…

欧米による停戦提案に立場を失うゼレンスキー;しかし世界はそれだけで済みそうにない

ウクライナ戦争は急速に世界の中心的トピックから外されつつある。もちろん、これはイスラエル・ハマス戦争に資源を回したい欧米の都合だが、ゼレンスキーの焦りは大きい。すでに欧米はウクライナ停戦を画策しており、来年の大統領選挙を行うようにゼレンス…

ネタニヤフは「すでに終わっている」;本格的な地上戦を前に支持率が激減する理由

イスラエル軍はガザ地区の包囲を完了し、本格的な地上戦に入ろうとしている。準備は整った。ところが、指揮をとるネタニヤフ首相への支持が下落して1桁というデータもある。国民の間からは「もう辞めたほうがいい」との声もあがるが、ふつうは支持率が急騰…

イスラエル・ハマス戦争の経済的帰結;この戦いは世界経済をどれくらい悪化させるのか?

イスラエル・ハマス戦争は世界経済にとってどれほどの影響を与えるのか。もちろん、ガザ地区での地上戦は始まったばかりだが、これまでの類似的事件などから推測することはできる。それと同時に考えなくてはらないのが、この地域紛争が世界的な規模になりは…

イスラエル軍はガザ市に到達した:膨大な犠牲者を生み出したネタニヤフとバイデンの末路

イスラエル軍はガザ市に達した。いまやハマスと直接戦闘を続けていると報じられている。すでに予想されていたように、これから「厳しく長い」戦いが続く。その結果が出るのは先のことだが、まちがいなく膨大な数の犠牲者が生まれ、世界からの人道的な観点か…

ネタニヤフ首相が軍幹部たちを投稿で批判;イスラエルの戦時内閣は内部分裂状態に

ガザ地区への「次の作戦」に踏み切ったイスラエルのナタニヤフ首相は、奇妙なことにこの微妙な時期に、ハマス急襲の責任を軍部に押し付ける投稿をして閣内孤立の危機に陥っている。ただでさえ、国際世論がガザ地区への地上戦における非人道性に集まっている…

中国はイスラエル・ハマス戦争に介入するか:ブリンケン国務長官と王毅外相との会談で決まった次の一手

バイデン大統領と習近平首席との会談が、今年11月に開かれる可能性が出てきた。もちろん、会えばいいというものではない。いま世界は多くの問題で満ちている。それぞれの国においても、この二大巨頭もそれぞれの問題を抱えている。王毅外相がワシントンを…

報復を超えてガザ抹殺に邁進するイスラエル;バイデン大統領の「抱きしめ」戦略は失敗した【図版更新】

バイデン米大統領の対イスラエル「抱きしめ」戦略は、完全に裏目に出たといってよい。まずはハグして同情を示し、それから過度な報復を抑制するというシナリオだったが、イスラエルは暴走といってよい「過度な報復」に傾斜してしまった。欧米のマスコミもイ…

報復を超えてガザ抹殺に邁進するイスラエル;バイデン大統領の「抱きしめ」戦略は失敗した

バイデン米大統領の対イスラエル「抱きしめ」戦略は、完全に裏目に出たといってよい。まずはハグして同情を示し、それから過度な報復を抑制するというシナリオだったが、イスラエルの暴走といってよい「過度な報復」に傾斜してしまった。欧米のマスコミもイ…

イスラエルはなぜ地上戦を始めないのか:アメリカとイスラエル側の都合を推理する

なぜイスラエルはガザ地区への地上戦を開始しないのだろうか。地上戦の準備はほぼ整えたと言っているのだから、これまでの経緯からすれば先制したほうが有利なのではないのか。いま指摘されているのは、実は地上戦というのは、ウクライナでも明らかなように…

バイデンの構想はすでに破綻した;病院爆破の悲劇とネタニヤフの不人気

バイデン大統領がイスラエルに出発する、まさにその直前にガザ地区の病院に起こった爆発で数百人が殺害された。失われたのは彼らの命だけでなく、バイデンが描いていたハマス・イスラエル紛争の鎮静化の絵図だった。そしてまた、彼が「大いなるチャンス」と…

バイデン大統領がイスラエル訪問を発表した;その背後で画策される「最悪の事態」の回避

バイデン米大統領が10月18日にイスラエルを訪れることが発表された。ブリンケン国務長官がイスラエルに入っており、CBSの同月15日に放送されたインタビューで、バイデンのハマス対イスラエルについての考えを、すでに米国民に語っている。周到な準…

バイデンが「ガザ占領」は失敗すると牽制;イスラエルのハマス掃討は支持するという

イスラエルが地上戦によりハマスを掃討すると表明している。しかし、それでは一般市民の犠牲も大きくなる。そこでバイデン米大統領がガザ占領は大きな過ちと発言したことが注目されている。もちろん、バイデンはハマス掃討を支持しているが、ガザ占領によっ…

ハマスはなぜイスラエルを急襲したのか;スティーブン・ウォルトのアメリカ中東外交批判

先進国のほとんどがハマスを激しく非難して、イスラエルを支持すると表明している。たしかにハマスは市民を殺害し混乱をもたらしているが、では、彼らに何の理由もないのだろうか。これまでのハマスとイスラエルの抗争を、おさらいしてくれるメディアもある…

イスラエルはなぜハマスの急襲を阻止できなかったのか;世界を不安定化しているのは誰だ

圧倒的な軍備と情報力を誇るイスラエルが、なぜハマスの急襲を阻止できなかったのか。そして、イスラエルのネタニヤフ首相による反撃は、これからどのように展開するのか。さらには、ウクライナやアフリカでの戦争が続いているなかで、この中東の「戦争」は…

ウクライナに武器さえ渡せば勝利するのか;ホーキッシュ・リベラルの極端で楽観的な論理

アメリカでは共和党の分裂に見られるように、ウクライナへの支援をこれ以上続けるべきか否かの議論が高まっている。その一方では、ウクライナが欲しいだけの武器をあたえるべきだという極論も出てきた。例によって理念的なリベラル派からのものだが、ホーキ…

ロシアの核サイトに新しい動きが見られる;プーチンは核戦争の訓練を始めさせた

最近、ロシアでの核兵器についての報道が少なかったが、もちろんプーチンが忘れてしまったわけではない。ソ連時代の核兵器実験場に新しい動きが続いている。全土におよぶ核戦争のさいの避難訓練も行われている。ウクライナでの戦いにおける、重要な駆け引き…

中国は「日本の罠」を回避できるか;大規模な試行錯誤と長い時間が必要となる

中国の不動産バブルが崩壊して、いまやどうすれば日本の「失われた20年」の轍を踏まないで済ませられるかが議論の中心になってきた。中国の場合は日本のバブル崩壊に似ているだけではない。規模がずっと大きいのだ。中国政府がこれから採用する回復策しだ…

ロシア軍もまた戦いから必死に学んでいる;ウクライナ軍の反転攻勢が停滞した大きな理由

ロシア軍もウクライナでの戦いから学んでいるという、当然のことが報道されなかった。いまになってようやく、その肝心なことが欧米の新聞に載るようになってきた。ウクライナ軍が反転攻勢で成功しない理由は、兵士が臆病だとか西側諸国の支援が少ないとかで…