HatsugenToday

東谷暁による「事件」に対する解釈論

ハマスはなぜイスラエルを急襲したのか;スティーブン・ウォルトのアメリカ中東外交批判

先進国のほとんどがハマスを激しく非難して、イスラエルを支持すると表明している。たしかにハマスは市民を殺害し混乱をもたらしているが、では、彼らに何の理由もないのだろうか。これまでのハマスとイスラエルの抗争を、おさらいしてくれるメディアもある…

イスラエルはなぜハマスの急襲を阻止できなかったのか;世界を不安定化しているのは誰だ

圧倒的な軍備と情報力を誇るイスラエルが、なぜハマスの急襲を阻止できなかったのか。そして、イスラエルのネタニヤフ首相による反撃は、これからどのように展開するのか。さらには、ウクライナやアフリカでの戦争が続いているなかで、この中東の「戦争」は…

ウクライナに武器さえ渡せば勝利するのか;ホーキッシュ・リベラルの極端で楽観的な論理

アメリカでは共和党の分裂に見られるように、ウクライナへの支援をこれ以上続けるべきか否かの議論が高まっている。その一方では、ウクライナが欲しいだけの武器をあたえるべきだという極論も出てきた。例によって理念的なリベラル派からのものだが、ホーキ…

ロシアの核サイトに新しい動きが見られる;プーチンは核戦争の訓練を始めさせた

最近、ロシアでの核兵器についての報道が少なかったが、もちろんプーチンが忘れてしまったわけではない。ソ連時代の核兵器実験場に新しい動きが続いている。全土におよぶ核戦争のさいの避難訓練も行われている。ウクライナでの戦いにおける、重要な駆け引き…

中国は「日本の罠」を回避できるか;大規模な試行錯誤と長い時間が必要となる

中国の不動産バブルが崩壊して、いまやどうすれば日本の「失われた20年」の轍を踏まないで済ませられるかが議論の中心になってきた。中国の場合は日本のバブル崩壊に似ているだけではない。規模がずっと大きいのだ。中国政府がこれから採用する回復策しだ…

ロシア軍もまた戦いから必死に学んでいる;ウクライナ軍の反転攻勢が停滞した大きな理由

ロシア軍もウクライナでの戦いから学んでいるという、当然のことが報道されなかった。いまになってようやく、その肝心なことが欧米の新聞に載るようになってきた。ウクライナ軍が反転攻勢で成功しない理由は、兵士が臆病だとか西側諸国の支援が少ないとかで…

ウクライナをめぐる米共和党の分裂:「私は彼に問いただしたい」発言の衝撃

ウクライナのゼレンスキー大統領が国連で演説したが、空席が目立っていてとても好評だったとは言えない。安保理の出席首脳はアメリカのバイデン大統領1人だけという異常事態で国連批判が加速しているが、それよりもウクライナをめぐる雰囲気が大きく変わっ…

ウクライナの今の財政状況が分かってきた;パッチワークでしのぐ軍事費の調達

ロシアとの戦いを続けているウクライナの財政事情は、これまでまとまった形では報道されてこなかった。軍事費だけで50%増やす計画のなかで、自国の財政支出の増額や西側諸国からの援助はもちろん、さまざまな金融のテクニックを駆使して、来年の防衛予算…

中国の国防相は失脚して取り調べ中だ;李尚福をめぐる混乱の根本的問題に迫る

中国の国防相だった李尚福の更迭あるいは失脚が確実になりつつある。アメリカの高官および情報関係者は、李が取り調べを受けていると見ている。これも不動産バブル崩壊によって生まれた混乱が関係していると思われるが、もちろん、それがそのまま習近平体制…

ウクライナの反転攻勢を邪魔しているのは誰か?;ウクライナ軍の戦術をめぐる論争のゆくえ

ウクライナの反転攻勢から3カ月余が過ぎたが、めぼしい成果が得られないまま、これからしばらくは停滞する。数十日後には冬に入り、天候が悪化して戦場はぬかるみと化すからだ。米英のシンクタンクを中心に、なぜウクライナ軍が反転攻勢の目的を達せられない…

こんどは中国の国防大臣が姿を消した;経済が急速に低迷する中で断行される腐敗摘発

中国の高官がまた姿を消した。この間は外務大臣だったが、こんどは国防大臣である。もちろん、前回同様、どこに行ったかは政府によって発表されていない。しかし、次から次へと要職にある高官が消える事件が続くということは、政府による単なる締め付けだけ…

ロシア軍も「改善」を続けている;ウクライナ軍の反転攻勢が停滞したのは武器の不足だけではない

ロシア軍における旧態依然の戦い方は、ウクライナ戦争でも変わっていないと指摘されてきた。しかし、ウクライナ軍が反転攻勢を始めると、何かが違うと感じられるようになった。反転攻勢の停滞は西側諸国の支援が遅いからだとか、守りより攻めが難しいからだ…

中国経済はもう世界最大にはなれない;日本の「失われた20年」の二の舞になる危険は大きい

中国はこれからどうなるのか。世界のなかの日本を考えるさいに、アメリカの動向と並んで最大の関心事である。中国経済の破綻を見て、この国は解体すると論じる人がいるいっぽうで、住宅価格も下げ止まったので再び繁栄が戻ってくるとの報道もある。では、中…

ウクライナ国防相が解任された本当の理由;反転攻勢に転換を迫った西側諸国

ウクライナの国防相が解任された。汚職がらみの混乱と報じるメディアもあるが、反転攻勢の真っ最中とあって、動揺が広がっている。この事態の内実を知るには、数日前のコロモイスキーの拘留についても思い出すべきだろう。ウクライナを支援する西側諸国は、…

なぜ民主党にはバイデンしかいないのか?;トランプがいるからバイデンが生き延びている

なぜこんなことになったのか? 来年の米大統領選挙に出馬する2人は、これまでなら名前すら上がらなかっただろう。民主党のバイデンはもう80歳であり、共和党のトランプは91の容疑で4つの裁判に起訴されている。トランプだって77歳だから、これまでな…

ウクライナがロシアの防衛線を突破した?;その規模はどれほどか、そして戦略的意味は何か

ウクライナ軍がロシアの防衛線を突破したというニュースが世界を駆け回っている。沈滞ムードが漂っていると報道されていたウクライナ軍が、反転攻勢で新しい段階に入り米国は「顕著な前進」とすら評価しているという。これまで何度も報道された「突破」だが…

中国経済を破綻させたシャドーバンキングの威力;巨大なバブルを膨らませ破裂させたもの

中国の不動産バブルは、ついに金融・投資家の破綻に及んだ。とくに、バブルの元凶とされるシャドー・バンキングの崩壊が続いている。いわゆる「信託」と呼ばれる投資会社は、経営の不透明さで知られてきたが、破綻してみれば予想以上の悲惨さである。その投…

プーチンはクレムリンのゴッドファーザーか?;マフィア国家にしてしまったロシア体制移行期の失敗

プリゴジンの墜落死が、プーチンによる「処刑」であった事実がほぼ明らかになったことで、改めてプーチン体制の本質とウクライナ戦争の行く末がさかんに論じられている。多くの欧米のジャーナリズムがロシアを「マフィア」に、プーチンを「ゴッドファーザー…

ついにプリゴジンが殺害された;なぜ今なのか、そして影響はどうか

プリゴジンが殺害された。もちろん、ロシア当局は事故であるかのように発表すると思われるが、これはモスクワ行進といわれた反乱への報復であり、見せしめだと考えて間違いない。旧ソ連時代はもちろんのこと、ロシアになってからも、権力への反逆者は何らか…

世界の金融機関が予測する中国の成長率;もっと刺激策を打ち出さないとさらに落ち込む!

中国経済の低迷は確実となってきた。中国に甘い日本の経済ジャーナリズムも、しぶしぶとそのことを認めている。政府目標のGDP伸び率5%は無理で、場合によれば4.5%で終わる可能性すらでてきた。もちろん、中国政府が団体旅行を許可したからといって…

ロシアは通貨ルーブルが下落しても平気な理由;この軍事大国にとってウクライナ戦争は総力戦ではない

ロシアの通貨ルーブルが下落して、いよいよ戦争継続は困難かと思わせたが、他の指標がそれほど悪くならない。戦時ロシア経済の粘り強さは、何から生まれるのか。データを見ながら根本からしっかり考え直してみよう。そこには、この軍事大国の戦争の驚くべき…

中国のデフレと日本のインフレから考える;政策も経済学もそのときの課題に依存する

植田日銀総裁が国債の金利上昇を是認したというので、いよいよ日本もインフレに突入するという報道が見られるようになった。例によって単純なインフレ対デフレの構図だが、これまでの黒田時代とは異なる金融政策に、おずおずと進みつつあることは間違いない…

世論調査が浮き彫りにしたウクライナの試練;アメリカ人の過半数が今以上の支援に反対している

アメリカのウクライナ支援について、CNNが世論調査したところ、約55%が今後の支援を続けるための基金に反対していることが分かった。すぐにホワイトハウスが支援を訴える声明を発表したが、民主党と共和党のイデオロギー的対立を超えて、全体でも懐疑…

来年のアメリカ大統領選は大動乱への入り口;バイデンもトランプもアメリカ・ファースト

来年のアメリカ大統領選挙は、いったいどうなってしまうのだろうか。バイデンが再選してもあまりの高齢で硬直した政治しかできず、トランプが復活しても野蛮な政治による混乱は大きいだろう。奇妙なのは民主党も共和党も彼らに代わる候補者を育てられなかっ…

米国の平均寿命があまりに低いのはなぜか;他の先進国より6年も早く死ぬ謎を解明する

アメリカの平均寿命は、他の先進諸国に比べて6歳も低い。最近はオバマケアもなんとか定着傾向にあり、癌治療による生存率は世界一だ。それなのに何故? 世界の政治経済を支配している国の不思議な現象は、実は、これまで必ずしもよくわかっていなかった。し…

中国の台湾侵攻の時期をデータから読む;空軍基地の設備や経済指標で予測する試み

中国は本当に台湾に侵攻するのか。それは何時どのようにして? しかし、これまで中国が着々と進めてきた準備に変化が生まれている。侵攻を成功させるための基地の増設や、戦時中の食糧を維持するための穀類の備蓄に、かなり大きな変化が発見されるようになっ…

中国の外相が失脚した原因は何か;秦剛と王毅との暗闘を推理する

中国の元外務大臣・秦剛が行方不明になってから1カ月を超えた。外務大臣には政治局員に出世していた王毅が復帰したが、今回の混乱については憶測や噂が絶えない。それはもちろん事件の異常さにもよるが、米中の緊張が高まると同時に、ウクライナ戦争も微妙…

クリミア橋が再びウクライナに破壊される!;ロシアにとっての実質的および象徴的意味を考える

クリミア橋が再び攻撃され、かなりの損害が出たと報道されている。ロシアにとってクリミア半島とロシアをむすぶ唯一の橋といわれ、その破壊の度合いによっては、これからの戦局に大きな影響を生み出すと思われる。ロシアとしては、なぜ2度目の攻撃が阻止で…

中国経済が勢いを失っている;コロナ対策失敗のツケが大きく回ってきた

中国経済の第2四半期は予想どおり思わしくなかった。奇跡的な復活を煽っていたビジネス誌もあったが、無理やりコロナ政策を変更して150万人ともいわれる死者を出し、それでも経済が順調に成長したら、それこそ世界中の人間の努力をあざ笑うものになって…

プリゴジンのソーシャル・メディア帝国;なぜレストラン経営者が軍事ビジネスを支配できたか

反乱の直後は、ロシアを救う英雄のように称賛されたプリゴジンは、いまや行方知れずとなった。私邸に捜査の手がおよび、変装写真や膨大な資産が暴露されつつある。なかでも彼が支配していたソーシャル・メディアの規模は予想よりもかなり大きく、あれほどロ…