HatsugenToday

東谷暁による「事件」に対する解釈論

中国政府の「訂正」がもつインパクト;激変する新型肺炎のピークと終息の予測

中国政府が2月14日0時に発表した、新型コロナウィルス肺炎への感染者数および死者数の訂正は、これまでの発表が信用できないものと分かると同時に、新型肺炎の感染力や致死率についての見直しを促すものだった。そしてさらには、これまで不確実な情報から割り出してきた、感染規模や終息時期の予測がご破算になって、やり直しをせざるをえなくなったということである。

 このブログでも漠然とした予測の手がかりを紹介してきたが、もともとの数値がまったく異なっていれば、予測算出の方法がおおむね妥当だとしても、出てくる予測はまったく間違ったものになってしまう。それは素人が勘でやるものでも、大規模なモデルを作ってスーパーコンピューターで計算するものでも同じことである。

 

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(これは簡単なモデルによるシミュレーション。数値は任意)


ここでは、これまで発表されていた数値が大きく修正されることで、いったいどれほどの規模で将来の見通しが変わってしまうのか、発表されたグラフで見てもらうことにしたい。まず、AFPが提示してくれたグラフ(下図)を見ていただこう。中国政府が発表した数値と、これまでの数値をつなげようとすると、グラフの線は不自然に折れ曲がってしまう。

 

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(AFP.comより;折れ曲がっているのは「訂正」したから)


すでに、このブログで拙劣な手作りの感染症流行予測のグラフ(下図)を提示していたが、楽観的な青線はなくなるわけで、悲観的な赤線が妥当だということになる。つまり、ここに描かれている青線の山は、もっと大きなものになることが確実だ。したがって流行のピークはもっと先になり、流行の終息はさらに先に延びるわけである。

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(2月4日のデータにより、だいたいの予測をしてみたもの)


こうしたグラフがメディアで提示されないので、しかたなく自作してみたのだが、近日、英国の経済誌『ジ・エコノミスト』が提示しているのを見つけた。ここに図版引用するが(下図)、このグラフの実際値(Actual)は大きく変わってしまったので、山はおそらく一番大きなものになるだろう。いや、さらに大きな山になってしまい、流行が終息するのは、もっともっと先になることすらあり得る。

 

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(The  Economistより;一番高い山がペシミスティックだというが……)

 

 すでに、日本国内でも死者が出て、第二次感染、第三次感染が問題になりつつある。これまで新型肺炎についてSARSより致死率が低いと述べて、事態を比較的穏やかなものと解説してきたひとたちが「新しい段階に入った」というのを聞くとむなしい気持ちがする。もともとの中国政府発表を信じて予測を組み立ててきたことについて、反省をする弁はないようだ。わたしは、彼らの妙に「寛容」な姿勢が気になっていた。

これからは、中国国内の予想だけでなく、世界各地での新たな感染症流行のシミュレーションがつけくわわる。それは、WikipediaでおなじみのSARSの感染数グラフ(下図)を見てもらえれば、今後、新型コロナウィルス肺炎の感染がどのようなものになっていくか、数値的な正確さは得られないものの、イメージだけは持つことが可能である。

 

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Wikipediaより;感染のピークが国ごとに異なるのが分かる)

 

【追加】2月21日の中国湖北省衛生当局の発表によれば、感染者の累計は6万2442人、死者は2144人に達した。飛び火して新たな感染地域となった数字はこれから上昇するものと思われる。

経済的な影響については、「コモドンの空飛ぶ書斎」での連載で詳しくやる予定だ。そのさいに、ここに紹介したグラフの説明も付け加えたいと思っている。とりあえず、下の2つのページをお読みください。

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