分けのわからないことをいうのは、安倍首相だけではなく、ちゃんと周囲の「専門家」といわれる人たちにも「感染」しているようだ。新型コロナウイルス感染症対策専門家会議のまとめ役のような人物が「エビデンス（根拠）はないが、そうでないと説明がつかない」と発言して話題になっている。
朝日新聞電子版より
エビデンスつまり証拠や根拠がないけれど、自分たちが言っている「新型コロナウイルスは若者たちが感染させまくっている」という説がないと、いまの北海道やその他地域の感染状況を説明できないといったわけである。
しかし、たとえば「人間はときどき根拠のないものを恐れてパニックにおちいる。それはこの世に幽霊というものが存在すると考えないと説明がつかない」とか、「古代文明が突然成立してしまうことがあるが、それは宇宙人が文明をもたらしたと考えないと説明がつかない」と言われても、納得できないのと同様、この専門家と言われている人たちって、変な人たちだなあと思ってしまう。
そもそも、北海道には本当は９５０人くらいの感染者がいると推測して、上のような仮説を立てているのだが、それはそれでいいとして、その初期条件についてほとんど述べていないことは、なんとしても納得できない。それは、常識的に考えて、雪まつりのさいに「個人的」に来日した中国からの観光客を拒否しなかったからではないのか。しかも、その人たちが北海道内を旅行することを、拒否できなかったからではないのか。
日経電子版より
興味深いのは、日本経済新聞が、北海道で新型コロナウイルスの感染が急速に伸びたのは、雪まつりが終わってからだったと報じているが、ここでも「初期条件」について、示唆するていどで、はっきりと「アベ政権が春節の中国人観光客が落としていくお金と、習近平来日の政治的栄光を、北海道人の健康と命よりずっと高く見積もった」からと述べていないのである。
もうひとつ興味深いのは、前出の「専門家」たちは感染の「一定条件を満たす場所」のモデルとして、「大阪のライブハウス」を挙げて、どのような人たちがこのライブハウスにいたかを解説しているのだが、なんと、ここには４０代３人と３０代１人が濃厚接触したことになっている。
朝日新聞電子版より
これはもちろん、モデルあるいは一例として挙げているにすぎないのだが、思い付き以上のものとしているなら、「若者たちがコロナウイルスをばらまいている」という見解に至ったというのは、あまりにもご都合主義的ではないだろうか。４０代って若者なのか？ ３０代って若者なのだろうか？
産経新聞電子版より
下衆の勘繰りをしてしまうのだが、安倍首相が感染率が２％ていどでしかない小・中・高生の学校封鎖を突然いいだして批判されたので、政権べったりの「専門家」たちが、なんとか「若者を活動させてはいけない」という議論に根拠を与えようとしたのではないか。しかし、そんなことをしたって、学校を閉めたら子供たちは別のところ（学童保育やゲーセンなど密度の高い空間）に集まることになるのだ。
カラオケが犯人だったのか？
たとえこれが勘繰りだとしても、３０歳代や４０歳代はともかく、６歳から１８歳までの子供たちが、ビュッフェ形式のパーティに出たり、参加者が４０歳代中心のライブハウスに通ったり、ましてや雀荘に行ったりはしない。つまり、専門家たちの説というのは、まったく安倍首相のパニック政策の援護にはなっていないことは確かなのである。
そんなことよりも、毎夜毎夜、口角泡をとばして「情報収集」をしあっている、安倍首相とそのお取り巻きたちのなかに、専門家のいう「若者」で感染者がいれば、たちどころに濃厚接触となって、みんな感染してしまうということを期待、あ、失礼、心配したほうがよいんではないだろうか。
