HatsugenToday

東谷暁による「事件」に対する解釈論

南アフリカ変異種にはアストラゼネカは効かない?;他社のワクチンも何らかの対策が必要らしい

2月6日、南アフリカで発見されたコロナウイルスの変異種には、アストラゼネカ製のワクチンの効果が限定的だと分かって、世界中にショックが広がった。特に、同社製のワクチンをコロナ対策の中心においている国にとっては深刻である。その後、2月7日に南アフリカ政府が予定していたアストラゼネカ社製のワクチン接種を、一時中止すると発表したので、さらに悲観的な空気が生まれた。

f:id:HatsugenToday:20210208231835p:plain


最初の報道はフィナンシャル・タイムズ2月6日付だったが、同紙はもう少し詳しい内容を追加して報道しているので、その概要を紹介しておくことにしたい。8日現在での情報では、症状が中程度あるいは低度の症状を抑える効果が低下するということで、重症の場合には十分な効果があると、オクスフォード=アストラゼネカの関係者は予想している。

 フィナンシャル・タイムズ2月8日付の「南アフリカアストラゼネカのワクチン接種を一時中止した」によれば、英国のオックスフォード大学と南アフリカのウィッツ大学が共同で小規模な試験を行ったところ、南アフリカで発見されたコロナウイルスの変異種(501Y.V2)については、程度の低い症状に対しては、低い効果しか得られなかったというのは正しいようだ。

f:id:HatsugenToday:20210208231913p:plain


ただし、この治験はわずか2026人を対象に行なわれ、年齢の中央値が31歳と若く、治験対象者には死者もいなければ、また、入院した者もいなかった。オクスフォード大とアストラゼネカ社としては、南アフリカ変異種に十分な効果が生まれるワクチンを、必要ならば今年の秋までには供給できるようにしたいとのこと。また、南アフリカの公衆衛生当局はファイザーのワクチンとの契約があるので、当面、医療従事者への接種はこちらで行うらしい。

 さらに、同紙2月7日付の「オクスフォード=アストラゼネカのワクチンは、南アフリカ変異種で生じる中度から低度のコロナの症状を阻止できない」との記事には、他のワクチンが、どこまで南アフリカ変異種に効果を持つのかを簡単に紹介している。

f:id:HatsugenToday:20210208235101p:plain


ノバックスとジョンソン&ジョンソンのワクチンも、南アフリカ変異種への効果は落ちるが、他のコロナワクチン変異種については完全な効果があるという。モデルナのワクチンの場合も、研究の結果、やはり南アフリカ変異種については効果が落ちるので、効果を上げるための効果的な接種法などの検討を行うとのことである。

 ビオンテック=ファイザーのワクチンは、実験室での研究によれば、南アフリカ変異種に対してはやや効果が低下するが、この研究についての詳しい研究はまだ公表されていない。総じて、英国で発見されたコロナウイルス変異種に対しては、ほとんどのワクチンは今のところ効果があるとされているが、南アフリカ変異種についてはより困難がありそうだと同紙は述べている。

f:id:HatsugenToday:20210208231933p:plain


オクスフォード大学の研究員サラ・ギルバートは、同大とアストラゼネカのワクチンについて、次のように述べている。「今度のことで分かってきたのは、私たちは全体の感染者数を減らすことにはならないかもしれないが、(アストラゼネカのワクチンは)いまでも死亡、入院、重症化に対する防御にはなるということです」。

 先に触れた、秋までに南アフリカ変異種をターゲットとするワクチンの供給ができるという話については、同紙は特に細かく触れていないので、これまでの経験を生かせば可能だということなのだろう。また、新しい情報が出てくれば追加したい。

 

【追記】

さっそくだが、ザ・タイムズ紙2月8日付は「オックスフォード・コロナワクチンは重症に対して『重要な』防御を提供する」を掲載して、オックスフォード=アストラゼネカのワクチンを弁護あるいは称賛している。つまり、中程度と低程度の症状では効果が下がるが、重篤な場合にはきわめて有効なのだというわけだ。

重症には効くが中程度と低度には効かないというか、中程度と低度には効かないが重症には効くというか。単なるレトリックではないことを祈るが、ともかく変異種には何らかの対策が必要であることは、他のワクチンも同じなのだ。この点、もう少し情報を集めてみたい。