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東谷暁による「事件」に対する解釈論

中国の極超音速ミサイルの何が脅威か;飛行を把捉できず破壊もできない滑空体

フィナンシャル・タイムズが10月17日朝(日本時間)、中国が核搭載可能な極超音速ミサイルの実験を8月に行っていたと報じて、アメリカを含む世界の軍事関係者にショックを与えている。世界の核兵器の構図が大きく変わる。たとえば、台湾問題にとっても、いわゆる「極超音速滑空体」を中国が持てば、戦術も戦略すらも大きく変わることになる。

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まず、同紙が伝えている事態から見てみよう。中国軍は8月、極超音速滑空体を搭載したロケットを発射した。この滑空体は低空軌道スペースを目的に到達するまで巡行することができるという。

同紙によれば、核弾頭の搭載が可能な極超音速滑空体がロケットによって宇宙空間に打ち上げられ、地球を旋回した後に、極超音速滑空体は地上の標的に向けてスピードを上昇させながら飛行した。しかし、今回は地上の標的を外したという。用いられたロケットは「長征」だったと思われる。

では、この「滑空体」の何がすごいのか。何が脅威で問題なのか。この極超音速滑空体は音速の5倍程度のスピードで、弾道ミサイルの速度にはかなわないが、その飛行進路を把捉することが極めてむずかしいので、完成すれば世界の核戦略を変えてしまう。

中国の軍備についての専門家でMIT教授のテイラー・フレーベルは次のように述べている。「極超音速滑空体はより低空の軌道を飛行するので、戦術的な目的に使われるが、その飛行進路をトレースすることも破壊することもきわめて難しい。もし、中国がこれを完成させれば、いまの核戦略は大きく動揺することだろう」。

すでに米国空軍のフランク・ケンダールは、先月に中国の新しい武器開発について警告を発していた。また、北米エアロスペース司令官のグレン・ヴァンヘリックは「中国はかなり進んだ極超音速滑空体の可能性について、最近、誇示するようになっている」とコンファレンスで語っていた。

中国外務省は、同紙に対して、この極超音速滑空体についてのコメントを避けたが、スポークスマンのリュウ・ペンギュウは「われわれはアメリカと違って世界戦略などもっていないし、また、軍事行動についてのプランも持ち合わせていない」などと述べてはぐらかし、逆にアメリカが「中国の脅威」を強調することを非難したという。

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afpbb.comより ロシア軍が極超音速ミサイルを水中発射


なお、ロシアは今年の7月に極超音速巡行ミサイルの試射に成功したと発表している。すでに開発していることは2018年にプーチン大統領が述べていた。また、アメリカについては、アームズ・コントロール(サイト)の9月付によれば、「アメリカの極超音速滑空体の試射にまた失敗」したとの記事を掲げている。

付記時事通信のサイト、NHKのラジオとサイトなどではこのニュースが報じられたが、いまのところ、あまり大きく扱われていない。ちょっとチェックが甘いが、とりあえず投稿しておくので、後に追加あるいは修正を加えるつもりでいます。