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東谷暁による「事件」に対する解釈論

オミクロンの派生型BA.2の性質;これまで発表されたデータを読む

オミクロン株の派生型「BA.2」がデンマークや英国で感染が広がり、「ステルス変異株」などとのニックネームもついたこともあって、欧米では緊張が走った。1月28日、英国の保健安全保障庁が暫定的な見解を発表したことで、ひとまず見通しがついたかっこうになったが、報道がまちまちなので、ここで簡単なおさらいをしておきたい。

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まず、英紙ザ・タイムズ1月29日付の「オミクロンのBA.2変異株が英国に急速に広がっている」では、保健安全保障庁のスーザン・ホプキンスの記者会見をもとに、一通りのデータを提供している。もともとのオミクロン「BA.1」に比べて、家庭内での感染拡大が30%速いと初期データから言えるが、ワクチンの効果についてはBA.1と重大な違いはないとのことである。

1月24日現在のデータでは、BA.2の感染割合は約4%だったが、その後、急速に増えている。ただし、地域によって大きく違うのは注意すべきことで、たとえばロンドンなどでは約8%に達しているという。ブースター接種(3回目のワクチン接種)から2週間後の場合、感染に対する予防率はBA.1の場合は63%であるのに対し、BA.2の場合は約70%とわずかながら高い(これはデータがもっと多くなるまで厳密には分からないだろう)。

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BA.2の感染速度については、初期データからかなり早いと見込んできるが、いまはさらに多くのデータが上がってきている。とはいえ、すでにBA.2が感染の主流になったデンマークの場合の数値が、BA.1に比べて約50%高いということなので、これは英国での初期データ30%と矛盾はしていないという(かなり違うと思うけれど,、これからのデータを待たなくてはならない)。

前出のホプキンスは「われわれはBA.2の感染率が高いことを認識しています。入院率や死亡率は高くありませんが、地域によって、年齢によっては、感染率はやはり高いので、注視し続けることが重要だと考えています」と述べている。

他のメディアも似たようなものだが、ブルーグバーグ電子版1月29日付は、家庭内感染の頻度が比較的高いことに触れている。「家庭内接触での感染率はBA.1では10.3%だったのに、BA.2では10.4%とわずかながら高い」。ブースター接種は依然有効であり、「2回目の接種から25週以上経過すると感染予防率は13%に落ちるが、ブースター接種2週間後は70%に上昇する」とのこと。

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CNN電子版1月28日付の「BA.2、オミクロン株の新たに発見された派生型は、警告の必要はないと専門家は言っている」では、ノースウエスタン大学のラモン・ロレンツォ=レドンド准教授がコメント。BA.2が発見しにくいので「ステルス変異株」というニックネームが付いたことについて苦言を呈している。

「このニックネームは人びとに見つけられない変異株だと信じ込ませてしまう。しかし、そうではありません。これは混乱を引き起こすもとです。実験室でも家庭内の検査でも、オミクロンのBA.1と同様に、この派生型は見つけることができます」

報道も過熱するにつれて、気を引くネーミングでないと注目されないという現象が起こっているのかもしれない。また、自分とは見解を異にする論者に対する侮蔑的な表現も多くなっている気がする。そうした傾向は、ただでさえ混乱しているコロナ禍情報をさらに誤解の多いものにしていく危険がある。