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東谷暁による「事件」に対する解釈論

英首相トラス辞任に追い込まれる;最初から「レイムダック」の政権だった

予想されていたことだが、進展は速かった。内務相までが反旗を翻せば、もうこうするよりなかったのだろう。英保守党は新しい党首にたいして、1年は批判を控えることになっているというが、そんなことは言っていられないほどの危機状態だった。それは保守党のみならず英国、そして世界経済への影響が大きすぎた。

パフォーマンスと自己宣伝のはてに混乱だけをもたらした


しかし、同じようなことは日本でも起こりうると思われる。パフォーマンス先行で自分を売り込む政治家が、未来を切り開く人物のように見えやすい事態となっている。それは政治制度の機能不全だけでなく、世界を蔽っている空気が胡乱なものを呼び寄せているのだ。すでにアメリカでは十分に実験されたし、イタリアでも別種の実験が始まった。ブラジルなどでは再実験されようとしている。

ft.comより:辞任を発表するトラス英首相


トラスについては何度か書いたので、今夜は、これまでの記事(下の4つ)への案内だけにとどめておくことにしたい。あれこれ情報も集めて、時間ができしだい少しずつ、英国および世界の受け止め方や、それにかんする背景を考えてみたい。とりあえず書いておきたいのは、アメリカのバイデン大統領が偉そうにトラスを批判していたが、少しは自分自身の政策の出鱈目ぶりを反省してみろといいたい。それは国内の粗野な経済政策だけではなく、自分の傲慢で野卑な国際政治が、いったい何を生み出しているか、分かっていないのだ。

The Economistより:1900年以来就任45日で辞任。最悪の記録だ

 

【追記:10月24日】すぐにでも追記を書くつもりだったが、その後、混乱が続いたので、様子を見ているうちに時間がたってしまった。一時はジョンソンが再登板かと見られたが、23日には党首への再立候補を断念したようだ。となるとスナク元財務相が最有力となるが、意外に若く(42歳)、また、政治家としてのキャリアはそれほど長くない。おそらく頭の切れる人物として財務相に抜擢されたのだろうが、トラスの場合と同じく、個々の問題に道筋を見つけたり、大衆受けを狙うのとは異なり、首相に相応しいのかは完全に未知数といってよい。

こうした英国の状態を生み出した責任は、すべてではないにしてもジョンソンの近視眼的な政治に帰せられる。問題は解決するものであって、自分の野望の手段ではない。しかし、大衆社会の政治においてはその2つを一致させることが求められる。世界に先駆けてそうした政治に慣れ親しんできたはずの英国が、肝心なことができない。国力が低下してくると、悪い面だけが突出してくるのだろう。日本は成熟した政治を実現してきたわけではないが、これから悪い面だけは出てくる危険がありそうだ。

 

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