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東谷暁による「事件」に対する解釈論

上海で警察隊とデモ隊が衝突!;ウルムチとゼロコロナを批判、習近平退陣の連呼も【増補】

上海のウルムチ通りでは、11月26日の深夜から翌日の未明にかけて、抗議のデモ隊と警察隊が衝突した。ロックダウンが続いていた新疆ウルムチ自治区で、同月24日に発生した火事で10人が死亡する事件が起こっていた。上海でのデモはウルムチでの大規模デモに呼応したもので、当局は否定しているが、SNSではビデオや写真でデモ隊と動員された警察が衝突する映像が確認されている。


「上海のウルムチ通りでは、何百人もの人たちが11月26日から27日にかけて夜を徹しての抗議行動に参加した。いうまでもなくウルムチ通りとは新疆ウイグル自治区の主都からとられた名前だ。この事件のビデオ映像や写真は、フィナンシャルタイムズ紙が確認したところによれば、27日の未明に起こった警官たちと抗議デモへの参加者たちの、衝突の様子をとらえている」

英紙フィナンシャルタイムズ11月27日付は「ゼロコロナ政策への怒りが広がるなか、上海市は抗議者たちによって封鎖された」との記事を掲載した。ウルムチのアパート街の火事で10人が亡くなった事件に対する、政府の対応に抗議する人たちが、上海のウルムチ通り(ウルムチ中路)に何百人も集まり、それがデモに発展して警察隊と衝突した様子を報じている。

ft.comより;デモ隊を阻止する警察


さらに注目すべきは、同月27日付の時事通信電子版やロイターによれば「集まった大勢の市民らは『共産党退陣、習近平国家主席)退陣」と連呼したことで、ウルムチでの事件だけでなく、同時にゼロコロナ政策に対する不満を、責任者の名をあげて表明している。同紙は「強権体制の中国で、最高指導者を街頭で批判するという異例の事態となっている」と報じている。

もちろん、これがさらに拡大して天安門事件のような、軍隊が出動するという事態に発展するとは思われない。また、大規模な衝突を繰り返すことになるかも、いまのところ不明だ。とはいえ、これまで習近平への直接の抗議は控えてきた上海市民が、退陣要求を繰り返すところまできたというのは、やはりゼロコロナ政策への不満が膨らんでいたことを示すものだろう。そしていうまでもなく、今の体制を揺るがしかねないウルムチでの政策批判とリンクしていることも、軽視することはできない。

New York Timesより;衝突するデモ隊と警察


いまのところ、警官たちとデモ隊との衝突がどの程度の規模になったかは、詳しく報道されていない。新しい情報が入りしだい、追記を加えるつもりだ。中国で11月26日に確認された感染者は4万人にせまるいきおいだというが、もちろん、これもそのまま信用できる数字だとは思えない。

【追記:28日13:00ころ】

NHKの朝10時のニュースでは、上海では早朝の混乱がウソのように静まりかえっていると報じていた。しかし、その後、不服従の行動は中国の他の都市に広がっているもようだ。すでにロイター27日付11時によれば、「市民の反抗的行動の波は、北京を含む他の都市に広がっており、習近平が政権を握って以来、中国本土では初めてのものだ。これは習が行ったゼロコロナ政策に対する不満が高まっていたことを示すだろう」と述べていた。

朝日新聞の28日朝刊からも引いておこう。「中国で続く『ゼロコロナ』政策の批判が、かつてなく強まっている。27日には習近平国家主席の母校でもある北京の精華大学の学生が抗議する事態に。各地の若者も声を上げ始め、当局にあらがう市民の姿も目立ち始めた」。アルジャジーラ電子版28日付はなおウルムチでの火災で10人が「殺害された」ことに端を発した抗議行動であることを強調している。

また、英経済誌ジ・エコノミスト電子版11月27日号は「ロックダウンへの不満が募るなか、混乱が中国に広がっている」を掲載し、中国政府には今のロックダウンをどのように何時やめるかの見通しはないと指摘している。そもそも、このゼロコロナ政策に傾斜してしまったのはメッセンジャーRNA型のワクチンが国内生産できなかったことが大きく、外国のワクチンを輸入する気はないらしいという指摘もしている。

「いっぽうでは、最も効果的なmRNA型ワクチンの接種は、それが西側で製造されていることもあって、中国ではまったく推奨されてこなかった。これまでは中国共産党がコロナによる死者数を抑えてきたが、冬季に入ることで急増の波が始まるかもしれない」。こうしたこれからへの恐怖も、いまの抗議行動の広がりを生み出していると思われる。

●どれほどの広がりがあったのかは、次の投稿をごらんください

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