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東谷暁による「事件」に対する解釈論

中国はついにmRNA型ワクチンを手にした?;事実なら多くの国民の命が救われる

習近平はついにメッセンジャーRNA型ワクチンを手にした。これでゼロコロナで大失敗を繰り返していた中国のコロナ対策も、なんとか正常に戻る? まだ情報が少ないが新型ワクチンを手にしたのは本当らしい。しかし、それが中国人民の多くの命を救うには、これからいくつものハードルがある。

 

英経済紙フィナンシャルタイムズ1月6日付は「中国の新しいメッセンジャーRNA型ワクチンが初期段階でポジティブを示した」との記事を掲載した。この記事によると中国の製薬メーカー、キャンシノバイオ社が、400人を対象とするワクチンの治験の「第2フェイズb」をクリアしたと報じている。「オミクロン変異株BA1およびBA5に対して、効果ありの結果となった」。

これが本当なら、中国は念願のメッセンジャーRNA型のワクチンの自国製を手にしたことになり、ゼロコロナ崩壊後のコロナ対策にとって大きな援軍となる。そもそも、ゼロコロナに異様にこだわらざるをえなかったのは、自国製のワクチンがウイルスを無毒化して製造する旧式のワクチンしかなかったからで、もう少し早くファイザー社やモデルナ社と同じ先端技術が開発されていれば、コロナ対策はもっと別の展開を見せたかもしれないのだ。

ft.comより:中国のコロナ対策の欠陥はワクチンだった


もちろん、これまでもアメリカのモデルナ社から、メッセンジャーRNA型のワクチンの供与を得ようとしたり、他の会社にもアプローチしたようだが、知的財産権の曖昧な国ゆえに、パテントの問題が解決しなかった。また、シノファームやシノヴァックといった国内の製薬会社も開発してはいたのだが、昨年秋の共産党大会にはまったく間に合わなかった。

では、このキャンシノバイオ社製ワクチンが、すぐに中国人民に接種されていくのかといえば、そうでもない。まだ、フェイズ2bをクリアした段階なので、まだしばらくはかかりそうだ。このフェイズ2bというのは、そこそこの数の人間にプラセボ(偽薬)をつかった治験を行って、本物のワクチン接種者との比較から、効果を確率的に割り出す段階のことだ。次は大量の人びとに接種して、この効果等を確かめるフェイス3が残っている。

「キャンシノバイオ社のメッセンジャーRNA型のワクチンは、ライバルのシノファームの同型ワクチンとともに、中国が治験段階にあるワクチンだ。もし成功すればコロナ感染を抑制し、重症化して入院する感染者を劇的に減らすことができるだろう。しかし、こうしたワクチンが当局によって許可されるまでには、およそ数カ月はかかると思われる」


運命のいたずらというべきなのだろうか、このプロセスが遅滞していたために、今回の政府によるゼロコロナ政策に対する抗議行動を生み出し、そして、その後のあまりにも無謀なゼロコロナ解除という措置を断行することになった。もちろん、このワクチンが本当に使えるかどうか、完全に分かったわけではない。まだ、製薬会社が成功だといっているだけなのだ。以前にも爆弾的にある製薬会社が、メッセンジャーRNA型を完成させたとのニュースが流れたが、いまも実際には使われていない。

フィナンシャルタイムズのスクープは、今回はかなり控えめで、それほどショッキングなものとしては扱われていない。しかし、フェイズ3を潜り抜ければ、中国政府のあまりにもひどいコロナ対策で命を落とす人が、かなり減っていくことは間違いない。同紙の締めくくりはキャンシノバイオ社の株価が上昇したという話で、1月6日の香港株式取引所で同社の株価は4%ほど上がったとのことである。