HatsugenToday

東谷暁による「事件」に対する解釈論

中国でのゼロコロナ崩壊後の死者は何人か?;最新シミュレーションは140万人から240万人と推計

中国ではゼロコロナ崩壊以降、いったいどれほどの人たちが亡くなったのか。最新のシミュレーションによれば、昨年12月だけで140万人から240万人との推計が提示されている。残念ながら中国当局はいっさい信用のおけるデータを提供してくれていない。こうした推計による数値を考慮しつつ、未来を構築するしかない。


これまでもゼロコロナ崩壊以降の予想がいくつも提示され、それは150万人前後が最も可能性のある数字とされていた。その後、中国はいちおうデータを発表し、いまは8万7468人だというが、それは既往症のある人の死や、自宅での死者は除外されたものであり、とても納得のいくものではない。

しかたなく、欧米のジャーナリズムは中国人が葬儀に使う種類の菊の花の価格が50%急騰したことや、中国の各種研究所が発表した研究者の訃報から数値を割り出したりした。今回の推計は英経済誌ジ・エコノミスト2月24日号に掲載のもので、これは世界のコロナ禍が始まってから知られるようになった、「超過死亡」という統計学の概念を用いてのものだ。


簡単にいうと、毎年の死者数の平均値から何人多く亡くなっているかを計算し、その超過分をコロナ死だとするもので、この方法によって同誌は世界の本当のコロナ死が、実はWHOが発表した統計上の数値の約3倍に相当するとの仮説を発表して話題になった。今回は中国でも例外的なマカオと香港の死者数を基に、超過死亡の数値を割り出している。この2カ所は「特別行政地区」であるため、数値がいまも発表されているわけである。

もちろん、超過死亡という考え方に基づく方法には欠点もある。その年に他の感染症も流行して死者を多く出していると、それがコロナ死なのかを判別するのは難しい。また、コロナ感染対策として十分な予防措置が取られると、これまで多くの死者を出していたインフルエンザなどによる死者数が減って、場合によれば超過死亡の数値が逆にマイナスになったりすることもある。したがって、ジ・エコノミストはあくまで「完全ではない」ものだと断っている。

The Atlanticより


さて、ともかく同誌による仮説的数値を見てみることにしよう。まず、マカオだがグラフを見ていただければ明らかなように、超過死亡は昨年12月上旬から急増して、この月には例年の約4倍にも達している。この島には70万人弱の人口があるので、超過死亡を計算すると12月だけで約600人に達したことになる。

いっぽう、香港のほうは、すでに2022年2月に感染爆発があって、グラフに見られるように1回目のピークを見せている。このさい2022年1月31日から同年5月2日までの間に超過死亡は約1万人を超えていた。今回の2回目のピークについての数値は、当局がまだ発表していないので推計によると、2022年11月7日から2023年2月22日までの超過死亡は、2000人から5000人の間だと推計される。


こうした超過死亡による計算を中国本土に応用すると、普通の年の平均死者数が約1000万人であることなどから計算して、昨年12月の中国本土でのコロナ死は140万人から240万人と推計されるという。これはもちろん不完全な推計だが、これまで発表されてきたさまざまな中国のコロナ死の推計と比較して遜色はないといえる。

たとえば、いくつもの研究機関が発表してきた数値は、60万人から230万人であり、また、ジ・エコノミストが感染ピーク前に発表した予測は150万人というものだった。今回のマカオと香港から作成されたモデルで、2019年以降のコロナによる死者数を推計すると、18万人から270万人、つまり、中国当局が発表している数値の2倍から30倍になるというわけである。