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東谷暁による「事件」に対する解釈論

ウクライナに供与されたF-16が戦闘中に墜落;その原因によってはゼレンスキーの反撃構想は挫折する

ウクライナに供与されたジェット戦闘機F-16が墜落してパイロットが亡くなった。まだ、細かい経緯は発表されていないが、ロシア軍のミサイルおよびドローンの攻撃に対抗する戦闘中の出来事だったという。いまウクライナは調査を行っているが、墜落の原因しだいではアメリカを始めとする西側の戦闘機供与の在り方が再検討されるだろう。亡くなったパイロットは、普通は数年かかるF-16の訓練を6カ月で繰り上げたとも報道されている。


まず、比較的長い記事を掲載した英経済紙フィナンシャル・タイムズ8月29日付によると、「ウクライナ空軍がばらばらに述べている話では、戦闘機パイロットのオレクシー・メス中佐はロシアの攻撃のなかで戦闘中に殺されたとのことである」と報じている。そのいっぽう、ある人物の話では「敵の攻撃で撃墜されたものではない」との情報も紹介している。

さらには、「ウクライナF-16は、月曜日、空戦用のミサイルユニットを装備してロシアのミサイル攻撃に反撃することになっていた」とウクライナ司令部のスタッフが木曜日に証言している。メス中佐のF-16は、「目標に接近しつつあったが、連絡が途絶え、その後、F-16が墜落し、パイロットが死んだと分かった」。特別調査委員会がこの墜落の調査をすでに始めており、「パイロットおよびメカニカルなエラーから、友軍による攻撃の可能性まで」を検討することになっているという。

ウクライナ軍のスポークスマンは、この墜落で亡くなったパイロットについての情報を提供することを控えたが、空軍筋は29日に個人的に次のように語っている。「メス中佐は月曜日、ロシアの激しい弾幕を撃破しているときに殺された。彼は『ムーンフィッシュ』の愛称で呼ばれており、最後の戦いでも英雄的だった。今度の作戦では三基の巡航ミサイルと一機の自爆ドローンを撃墜している」。


いっぽう、米紙ワシントン・ポスト8月29日付も、同じように作戦に参加していた軍機との連絡がとだえ、その後、墜落しており、パイロットが死んだことが分かった」と述べている。同紙によれば、ウクライナ軍は亡くなったパイロットの名前を公表していなかったが、テレグラム・ポストへの投稿でメス中佐の名前が分かったという。戦闘の経緯としては「ウクライナF-16が墜落し、そのパイロットが亡くなった。このF-16はロシアのミサイルによる攻撃に反撃中だった」とだけ述べている。

いずれの新聞でも、この事件の真相いかんによっては、ウクライナへのF-16供与と、ゼレンスキーが開始した積極的なロシア領内への越境攻撃の計画が打撃を受けるのではないかと指摘している。それはそうだと思うが、メス中佐がロシアと交戦中に撃墜されたとすれば、それ自体は戦争にはつきものの事態だろう。


しかし、それがたとえばメス中佐の訓練が短期間だったために十分に戦えなかったというのなら、やはりウクライナの強力な武器使用制限の撤廃要求に大きなマイナスになると思われる。CNN8月30日付の報道によれば、「ウクライナ空軍のパイロットたちへの訓練は昨年秋からアメリカで始まった。一通り操縦できるようになるまで数年かかることもあるが、メス中佐の場合には6カ月で訓練を終えねばならなかった」とある。