イスラエル軍はハマスの指導者シンワルの殺害に成功した。これでガザ地区を含むイスラエルに平和が来るのだろうか。まったくそれはありえない。すでにイスラエル軍は次の殺戮のための作戦を立てており、そのことによってネタニヤフ首相は政治生命を保ち続ける気なのだろう。この異常な指導者を戴いたイスラエルが失ったもの、そしてこれから失うものは計り知れない。
イスラエル軍が殺害に成功したとみられるシンワル
多くのメディアが一斉にイスラエル政府によるシンワル殺害の成功報道を流している。しかし、そこに平和が来たと書いたものは皆無である。それは当然のことだろう。平和とは相手があって成立するもので、相手を消滅させてしまえばカオスだけが残り、そこに秩序形成の手がかりは存在しないからだ。英経済紙フィナンシャルタイムは次のように報じている。
「イスラエル国防軍は、シンワルが『ガザでのイスラエル国防軍による作戦中に』殺害した3人の戦闘員の1人である調査をしていると発表した。イスラエル軍は声明で『現段階ではテロリストの身元は確認できない』として、武装勢力が殺害された建物内に人質の痕跡はなかったと指摘した。もし確認されれば、シンワルの死はイスラエルの1年におよぶガザ戦争における極めて重大な瞬間となり、ハマスに壊滅的な打撃を与え、ネタニヤフ首相に象徴的な勝利をもたらすことになるだろう」
戦争だけが、おいらの生きがいさ
では、ガザ地区はどうなるのか。瓦礫の山のなかに何百万人もの難民が残されているだけで、それが「平和」だというにはあまりにも殺伐とした風景といわねばならない。この地区をどうする気なのか。そしてここに残された難民をどうする気なのか。それをイスラエルは自国だけで平穏な生活が営まれている空間に戻せるのだろうか。
いま、イスラエル軍はいぜんとしてガザ北部のジャバリア難民キャンプ周辺で地上攻撃を継続している。しかも、同国軍はガザ南部のラファでも大規模な掃討戦を継続しており、さらに、ヌセイラトとアル・ブレイジの難民キャンプでも作戦を拡大していると伝えられている。ネタニヤフに戦争を終結させようとする意志はなく、ただたんに難民と敗残兵を殺し尽くしたいだけなのではないかとしか思えない。
嘘つきピノキオ・バイデン
この中東での無秩序を作ったのは、きっかけとしてはハマスの陰惨な1200名の殺戮だったが、いまやイスラエル国家のなかでのアパルトヘイト地区での、住民虐殺の無意味な継続となっている。そして、それを抑制するどころか、武器を供与して、イスラエルを事実上煽ったのはアメリカのバイデン政権である。バイデン大統領はアフガン撤退に失敗して以来、中東政策のほとんどに冷静に対処することなく、いまの惨状を生み出してきた。中東でこれほどの大失敗をしたアメリカ大統領は、これまで存在しなかったのではないだろうか。