いまや統計学的に見ればトランプの勝利の確率が高まっている。この間までハリスが余裕を見せて勝つような雰囲気があったのだが、数値の動きから推測するとトランプに勝利が傾いているらしい。もちろん、このような傾向はわずかの変化で予想が変わってしまうことも多い。しかし、すでに選挙戦は残りが2週間になったこと、肝心の激戦区での動きがトランプに有利なことから、ハリスは後退していると見なされるのである。【増補】は文末をご覧ください。
英経済誌ジ・エコノミスト電子版10月21日付は「ドナルド・トランプが選挙予測でリードしている理由」を掲載し、「残り2週間で共和党候補がわずかにリード」と予想している。「本誌のアメリカ大統領選挙統計モデルでは、トランプがハリスを追い抜いたのは、8月以降で初めてのことだ。われわれの予想では、トランプがホワイトハウスに復帰する可能性は54%となり、過去1週間で6ポイント上昇した。選挙戦は依然として予断を許さないが、現在はトランプにわずかに有利になっている」。
エコノミスト誌より;終盤戦でトランプ逆転の予想。いまの勢いではトランプの可能性はさらに上昇しそうだ。
トランプが優位に立ったのは、「選挙人」での優位性である。この1週間の世論調査では、全国での趨勢と同様に激戦州でのトランプの位置がわずかに強まっていることが確認されている。いうまでもないが、「これは共和党寄りの調査会社がトランプ有利の結果を垂れ流している」というような話ではないと同誌は付け加えている。
エコノミスト誌より;激戦州で勢いがトランプに移っている。全体でも赤く左(トランプ)を向いている赤い三角が多く、右(ハリス)を向いている青い三角は少ない。
「2016年と2020年と同様に、民主党候補は激戦州の世論調査で全国調査よりも悪い結果となっている。ミシガン、ネバダ、ノースカロライナ、ペンシルベニア、ウィスコンシンでは両候補がほぼ互角で、アリゾナ、ジョージアではトランプが2%近くリードしている(上のグラフ)。われわれのモデルでは、ハリスが選挙人の数でも勝つためには、全国一般投票で少なくとも2.5%上回る必要がある。これは8月の時点での1.8%から上昇している」。(つまり、ハリスが不利になっている)。
FT.comより:イーロン・マスクのテコ入れが効いた?
選挙戦も残りがわずか2週間となり、世論調査の平均値が大きく変動する時間はほとんど残されていないと同誌はいう。「だからといって選挙が接戦になるという保証はないが、歴史的変動の範囲内のわずかな世論調査の誤差があれば、どちらの候補も激戦州を制して、勝利者となることができる」。同誌のモデルでは(今回の選挙において)一方が他方に勝利するため306人の選挙人を獲得する確率は50/50であって、これは2020年のバイデン、2016年のトランプが獲得した数値であると付け加えている。まあ、どっちにも勝利のチャンスはまだあるということだが、いまの時点ではトランプに勢いがあるというわけだ。
【増補】ここからが追加部分です。グラフもあります
本文で紹介した数値は10月21日付のものだった。以下に紹介するのは10月23日付のもので、毎日改定されているが、やはり、トランプに勢いが移行してしまったことは明らかだ。ここらで何かが起こらなければ、このまま投票日を迎えるだろう。
2日間でさらにトランプの勝率は2%上昇した
まず、トランプがホワイト・ハウスに帰還する可能性は、54%から56%へと上昇している。この動きを止めようとしたのかは分からないがビル・ゲイツが大量の資金をハリスに寄付して、流れを変えようとしているが、ちょっと遅かったかもしれない。これまでハリスが押さえると見られた選挙人の数の予想がトランプへと移行している。
選挙人の獲得数予測もトランプがいまやずっと優位に立っている
激戦区もまたトランプに傾いている。おそらく民主党系メディアなのだろうが、激戦区でトランプへの支持が固定化していると報じているが、それはこれまで2回ほどの大統領選挙を見ても分かっていたことで、民主党の取り組みがいまひとつ物足りなかった。
激戦区も7つのうち5つがトランプで、残りの2つも接戦となっている
バイデンにいつまでもこだわっていた民主党の優柔不断。その結果がいま出ているのであって、突然、激戦区の選挙民が変心したわけではない。ハリスに切り替えてからは、多少は心変わりがしたが、どうもバイデンとあまり違わないと見えてきたのだろう。ハリスに法曹界出身ということ以外、これといった特色がないことは、最初から分かっていたことだった。何かが必要だったのではないか。