HatsugenToday

東谷暁による「事件」に対する解釈論

イーロン・マスクのDOGEが危機に直面!;職員削減の方法があまりに悪趣味で反発を食らう

イーロン・マスクが繰り広げているDOGEによる政府機関の「改革」が、早くも挫折しかかっている。歳出削減と職員削減を急激に実行しようとしているが、前者については制度的な制約があり、後者についても職員の中から強い反発が生まれ、おそらくは停滞を余儀なくされるだろう。イーロン・マスクがなぜこのような、暴走とも思われる改革に突入したのかは不明だが、政府機関と民間会社との違いを無視していることが大きい。


AP通信によればDOGE(政府効率化省)の職員21人が辞任して注目されている。この21人はDOGEに名称が変わる前のアメリカデジタルサービスの時代からの技術スタッフで、かれらの連名の辞表には「政府の中核になるシステムを壊したり、重要な公共サービスを解体することに、自分たちの技術者としての能力を使いたくない。また、DOGEを正当化するために力を貸すつもりもない」(FNNprime on news 2月26日付)とのことだ。

イーロン・マスクはSNSでDOGEの職員に「先週の業務成果を示さなければ辞職だ」と通告したが、前出の技術スタッフばかりでなく反発が激しく、機関そのものが機能不全に陥る危険も出ている。同じような処置を求められた他の政府機関では、通告の文書を変えるなどする辻褄合わせが見られる。たとえば、米国人事管理局(OPM)では、22日に職員宛てのメールを送付したが、文面には「辞職」の文言を入れずに、成果の報告のみを求めた。国防総省などのいくつかの省は、それ以前に、職員に対して送られてきたSNSに返信しないように呼び掛けていたという。


すでに、多くの報道機関がDOGEの政策が行き詰まっていることを伝えている。たとえば、英経済誌ジ・エコノミスト2月24日付は次のように述べている。「いまのところ、マスクのチェンソー連邦政府機関をそれほど刈り込んでいない。従業員に提供された『退職延期制度』は7万5000人の労働者、つまり全体の3%が申し出に応じたのみである。さらに大きな問題になったのは、同じ処置が核関連施設の労働者20万人に適用されたことで、その結果は単に混乱を引き起こしただけだった。たとえば、アメリカの核兵器備蓄を監督する国家核安全保障局では、前日に「誤って」解雇されたとみられる労働者約300人が「解雇解除」されている」。

こうした混乱については、日本経済新聞2月26日付も次のように報じている。「DOGEのリストラは強引さが際立つ。AP通信によると、13日の夜には誤って核弾頭の組み立て工場で勤務する専門家らを解雇する騒動が起きた。核安全保障局(NNSA)で最大350人の職員が突然解雇され、オフィスから閉め出された。政府はミスを認め、解雇を取り消した」。また、2月25日には「メールに何の意味があるのか記者に問われたトランプは、『仕事をしている人なら返信するのは簡単なことだ』と述べるにとどめた」という。


こうした乱暴なやり方は、旧ツイッターを買収してXと名を変えたさいに、大量の職員を解雇して世界中の注目を集めたが、これはあくまで強力な支配権限を奪取した私企業だからできることだ。公的な機関において同じことをすれば、必ず法制度にぶつかることは目に見えていた。それでもあえて断行したのは世論が支持してくれると思ったか、トランプがサポートしてくれると信じていたのか、そこらへんは分からない。

そもそも、こうした公的機関の職員削減については、法律的根拠がないと難しいことは分かっていたはずだ。ところが、イーロン・マスクはまるで悪戯でもあるかのような調子で、この困難な分野に突入してしまった。2月20日にはアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領からプレゼントされたチェンソーを振り上げて、歳出と職員をちょんぎると気勢を上げたものだ。こんなのは職員からしてみたら改革でも何でもなく、『悪魔のいけにえ』のようなホラー映画の現実化であって、ジョークや洒落とはとても言えず、単なる趣味の悪い「威嚇」「恐怖政治」だろう。


では、アメリカ国民はイーロン・マスクの言動をどのように受け止めているだろうか。2月20日にワシントン・ポスト紙と調査会社イプソスが発表した数値によれば、マスクに対する支持は34%にとどまり、不支持は49%に達している。ジ・エコノミスト誌と調査会社ユーガブの調査では、「マスクがDOGEサービスを自分の企業や個人の利益のために利用していることを懸念している」が、非常に懸念39%、いくらか懸念9%で合計52%に達している。

有名な企業家として、一私人として、趣味の悪いジョークをいったり、仮想通貨を煽ったり腐したりしても、それはまだ自己責任だろう。しかし、公人として限度を超えた悪趣味を発揮し、また、それが自分の企業や個人に利益を与えるためと見られているのは、やはり大きな問題となっていくだろう。イーロン・マスクがトランプ政権から離脱あるいは解雇されるのは、けっこう早いのかもしれない。

 

●こちらもご覧ください

hatsugentoday.hatenablog.com