イランのイスラエルに対するミサイル攻撃は、完全に失敗したわけではなく、約16%がイスラエル内に着弾していたという報道が行われている。英紙ザ・テレグラフの記事は、数値を含めてかなり具体的な事実を並べている。もちろん、イスラエル当局はコメントを避けているが、そもそも、ミサイル防衛網がいかに優れていても、すべてを迎撃することは不可能だ。イスラエル軍のある高官による予想では、イランは数年後に8000機から2万機のミサイルを保持する可能性すらあるという。

「イランのミサイルは12日戦争の間に、イスラエルの5つの軍事施設を直撃していたことが、小紙ザ・テレグラフのレーダー分析から明らかになった。このイランによる攻撃については、イスラエル当局は国内でも公表していなかったが、それは軍事情報の制約によるものだという」(ザ・テレグラフ7月5日付「イランは12日戦争の間に、イスラエルの5つの軍事基地をミサイル攻撃していた」)

まず、概要を述べてしまうと、イランは「12日戦争」の間に、イスラエル国内の5つの軍事施設をミサイルで攻撃した。攻撃対象には、主要な空軍基地、情報収集センター、兵站基地などが含まれるという。これはアメリカのオレゴン州立大学の研究者たちが(ザ・テレグラフに協力して)衛星レーダーのデータを用いて分析した。軍事施設以外にも、住宅地やインフラへの攻撃が36件以上確認されており、イスラエル国内の15000人以上が家を失い、またワイツマン研究所やソロカ大学医療センターなども被害を受けたという。

すでに述べたように、イスラエルは「アイアンドーム」と呼ばれる防空システムを持っていて多くのミサイルを迎撃したが、戦争の中盤には迎撃率が低下して、最大16%のイランのミサイルが防衛網を突破して着弾したようだ。このさい、実は、アメリカのTHAADミサイル防衛システムも参加(参戦?)していて、36発以上の迎撃ミサイルを発射していることが分かっているという。ここに述べた16%という数値は、イランがアイアンドームについて当初発表した想定迎撃率が87%だったことを考慮すれば、ほぼ妥当な数値といえる。
イラン側からの情報によれば、こうしたミサイル攻撃のさいには、同時にドローン攻撃も行って防衛システムを混乱させる戦術を採用したという。また、イランのイスラム革命防衛隊の幹部(後出)によれば、今回のイスラエル攻撃には全体の25~30%しか使用していない。また、イスラエル軍の幹部の予想では、12日戦争当初のイランのミサイル保有数はせいぜい2500機だったが、今後数年でミサイル保有数を8000~20000発に増やす可能性があると述べている。いっぽう、イスラエルの「アイアンドーム」は(アメリカの支援があったとはいえ)高性能の防衛システムと言わざるを得ず、イランが受けた損害に比べれば、28人の死者が出たとはいえイスラエルが受けた損害は小さいと見るべきだろう。

イランのイスラム革命防衛隊の副司令官であるマジ・ゲン・ファジルが、7月1日にテレビに登場して話したことは、いまも情報戦のさなかにある発言ゆえに、そのまま受け取るわけにはいかないが、いちおう、数少ない当事者の発言として紹介しておこう。「われわれは、今回の戦闘で保有するミサイル能力の25%から30%を使ったにすぎない。そして同時に、ミサイル製造のサイクルはわれわれのミサイル能力を力強く支えてくれている」。
ミサイル能力について、同紙の(地の文に見られる)コメントは次のとおり。「(イスラエルによる攻撃でイランは大きな被害をうけたが)にもかかわらず、かなりのイランの弾道ミサイル格納庫は無傷だと見られている。イスラエルによる推定ですら、12日戦争によって破壊されたミサイル発射装置は半分に過ぎないし、また、ミサイルの備蓄のかなりの量が存続している」。