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東谷暁による「事件」に対する解釈論

トランプ=プーチン会談は予想どおり大失敗;サプライズ的なトランプ外交の賞味期限切れは明らか

トランプ大統領はアラスカで開催された米露首脳会談で、ウクライナ戦争の停戦をプーチン大統領に同意させることに失敗した。予想されていたことで、いまロシアがウクライナとの停戦を急ぐ理由はない。また、ウクライナのゼレンスキー大統領は領土割譲を条件とする停戦のトランプ案に同意するつもりはない。ただ、トランプだけが不透明になったアメリカ経済を抱えながら、「次のテーマ」を見つけなければならなかった。そんな状況のなかでプーチンがトランプに色よい返事をするわけもなかった。


世界中のマスコミがトランプ大統領の失敗を報じている。ここでは英経済紙フィナンシャルタイムズ8月16日付の「トランプ、プーチンとのアラスカ首脳会談でウクライナ問題についての合意を得られず」を見てみよう。「トランプ大統領は、盛大に始まったアラスカでの首脳会談において、プーチン大統領からウクライナ戦争終結の確約をまったく得られず、期待外れに終わった」。期待していたのは、おそらくトランプだけだった。

「この首脳会談は、プーチン大統領が2022年にウクライナへの全面侵攻を命じて以来、アメリカ大統領とプーチン大統領が初めて会談したものだったが、プーチン大統領を孤立させることで停戦に持ち込もうとする西側諸国の長年のこころみに、ついに明確な終止符が打たれたといえる」


このフィナンシャル紙の指摘は、やや性急な感じがしないでもないが、少なくともトランプが主導してきたウクライナ停戦案が、プーチンはもとより西側諸国およびゼレンスキー大統領を納得させるようなものではなかったことが、決定的に明らかになったということができるだろう。「トランプはプーチンから何の約束も得られないまま、アラスカを後にしてワシントンに戻った。プーチンウクライナ降伏を撤回しないことを明確にしていた」。

そもそもこの会談を行う意義は何だったのだろうか。同紙によればこの会談はトランプがウクライナの屈服を求める要求を撤回しないプーチンに不満を表明したあと、わずか1週間で急遽解された。そんなサプライス的な会談イベントが大きな結果を生むわけがない。プーチンは双方が新たな軍備管理協定に取り組む可能性を示唆していたが、会談後の声明ではそれに触れることすらなかった。ロシアのダルチェフ駐米大使も「進展なし」と述べた。

Financial Timesより:お互いの温度差が際立った会談だった


では、ウクライナの反応はどうなのか。トランプは今回の首脳会談についてゼレンスキーと会談すると述べているが、ウクライナ大統領補佐官は「まだ、ゼレンスキー大統領とは連絡を取っていない」と述べ、会談は「非常に微妙」と言葉を濁している。ウクライナ大統領のチームによる「初期の」見解によれば「何の進展もなかった」というものだとほうじているのだが、これからもこの会談については同じことをいうだろう。

「トランプは近いうちにまた会談したいと述べたところ、プーチンは英語で『ネクスト・タイム・イン・モスコウ』と応じたという。それに対してトランプは『いい話だ。ちょっとばかり批判されるかもしれないが、私は実現したいと思うよ』と答えたという」。何か哀愁がただようような締め括りで、二人が会談するのはこれが最後ではないかとすら思えてくるほどの、後味の悪い空しいイベントだった。

The Economistより:プーチンをたてるトランプ。しかし、何か成果があったのか?


経済誌ジ・エコノミスト8月16日付の「トランプからプーチンへの贈り物」も見ておこう。「贈り物」としているので、プーチンが得をしたのかというとそうでもない。肩タイトルが「北極圏の抱擁」でこれ以上ない冷たい抱擁だったという意味だろう。リードが「ロシアの指導者は名誉を与えられたが、見返りはほとんどなかった」というもので、この視点は同日の米紙ワシントンポスト紙の「会談が行われたこと自体がプーチンへの贈り物だった」という見方と近い。

「核保有国同士が、地政学的ライバルであっても、おたがいに話合うのは理にかなっているだろう。しかし、そのさいに何の利益もないのに、わざわざ栄誉を与える必要があるのかは疑問だろう。トランプへのプーチンによる唯一の譲歩は、プーチンが『戦争終結に真剣に関心を持っている』と述べ、トランプが2022年に大統領だったら、この戦争は起こらなかっただろうと語ったのに、プーチンはそうだと同意したことである」