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東谷暁による「事件」に対する解釈論

トランプはイラン戦争が間違いだったと謝罪せよ!;スティーヴン・ウォルト教授が勧める「失敗の是認」

トランプ大統領がネタニヤフ首相と始めたイラン戦争は、いよいよ失敗であったことが明らかになりつつある。いまやトランプはイラン戦争をめぐって窮地に陥っているといっても過言ではない。その理由は以下に述べるが、では、トランプ大統領はどうすればよいのだろうか。ハーバード大学のスティーヴン・ウォルト教授は、自分が間違っていたことを素直に認めるべきだという。それは単に強く求めているだけではなく、アメリカが立ち直るには、そうすることがどうしても必要だからなのである。


米外交誌フォーリン・ポリシー5月28日付はウォルトの「トランプはもはや自分が間違っていたことを認めるべきだ」を掲載している。イラン戦争の停戦協議が挫折しつつあるいま、身も蓋もないタイトルだと思う読者もいるだろうが、ウォルトはまったく正気で述べている。「戦争の終結を遅らせることで、アメリカとその同盟国が被っている苦痛をさらに増幅させ、トランプ自身の評判もさらに下落するいっぽう」なのだからである。

「アメリカがイスラエルとともにイラン戦争を始めた時点で、とてつもない過ちを犯していることは、標準並みの知能指数をもっていれば容易に理解できる。この二カ国が掲げた目標はまったく達成されていないのだ。イラン政権は崩壊していないし、核兵器は放棄されていないし、また、ミサイルとドローンの能力はそのまま残っている。イランは諸国に大きな損害を与えようとすれば、いつでもホルムズ海峡を封鎖すればよいことを証明してしまっている」


そんなことはない、イランはアメリカとイスラエルの軍隊によって爆撃されて廃墟と化し、核兵器を製造する能力を奪われ、ミサイルとドローンも残り少ないではないかというアメリカおよびイスラエル支持者がいるかもしれない。しかし、まず爆撃だけで本当に敵国を壊滅させた例はほとんどないことを思い出すべきだろう。また、たしかにイランはいまの段階で核兵器を保有していないが、実は、その可能性が自国の存続を保障していることを強く自覚している。そして、ミサイルとドローンもアメリカ軍を撃滅するためには少ないが、アメリカに味方する近隣国を苦しめる程度のものは、まだ十分に保持しているのだ。


加えて、いまトランプが始めようとしているのがキューバの爆撃や占領であることを考えれば、ある目的が達成されないと他の目的を設定して、世界の耳目を自分の嘘に引きつけるという、浅はかで空しい試みを、またしてもトランプは繰り返していることが明らかなのである。つまり、イラン戦争がまったくうまくいかないので、ウクライナ、ガザ地区、ベネズエラに続いて、こんどはキューバの体制変更に話題を持って行こうとしているだけのことなのだ。

トランプはこんなことをやっているのはもうやめて、イラン戦争を始めたのは失敗だったと認めれば、トランプにとってもアメリカにとっても、活路が開けるとウォルトはいうのである。これはそのとおりかもしれないが、ほんとうにあのトランプに出来ることなのだろうか。アメリカの大統領のなかで、自分の政策が間違いだったと認めた例としてウォルトがあげているのが3つある。「ジョン・F・ケネディはピッグス湾事件の失敗について全責任を負い、バラク・オバマはトム・ダシェルを保健福祉省長官に任命したことを不適だったと認め、ロナルド・レーガンはイラン・コントラ事件が間違いだったとほぼ認めた」。


しかし、こうした米大統領たちの失敗は、よほどのことがないと本人が認めることはなく、認めたとしても間接的だったり、あるいは回顧録での思い出話としてなのだ。認めない海外の例を挙げれば、いまも英国のボリス・ジョンソン元首相は、ブレグジットを自己弁護し続けており、イスラエルのネタニヤフ首相は底なし沼と化した中東戦争が、自分たちの失敗だったことなど認める兆候すらない。そのことはウォルト教授も十分に認めている。しかし、なおウォルトは「トランプだからできる」という面もあるというのである。

「トランプは政治家としてのキャリアを通じて、それまでの常識を覆す人物であり、そのテフロンのような傷つかない特性はレーガンをも超えている。トランプという人物は『私が五番街で誰かを撃っても支持者を失うことはない』とまで言ったことがあるのを思い出してほしい。そしてまた、残念ながらこの発言は彼のもっとも正確な発言のひとつであることが証明されつつある。近年のアメリカ大統領のなかで、カメラの前で自分の失敗を認め、そして前進できる人間がいるとすれば、それはトランプをおいて他にいない」


もう、ここまでくると、ウォルトが本気でそんなことを言っているか、残念ながら疑わしくなる。しかし、次のようにいえば、それはトランプをおいて他にいないと賛同を得られるかもしれない。「それまでのいくつもの嘘デタラメが暴かれ、そして今進行中のダメ外交をまったく方向転換してしまっても、すこしも恥とは感じず、まったく反省することなく、自分が責任から逃れることだけを追及するアメリカ大統領は、まさに彼しか存在しない。それは、その方向転換がアメリカと世界にとって朗報であるならば、どんなにトランプにとって恥でも反省すべきことでも、たとえ歴史の汚点になっても、大いに遂行してもらいたいものである」。ウォルトの言いたいことは、こういうことなのだろう。