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東谷暁による「事件」に対する解釈論

英国のコロナ感染がぶり返したのは新型ウイルス?;さらに感染力のあるデルタ・プラスが登場した

英国では新型コロナの感染が、またしても急拡大して、同国民を不安におとしいれ、政府をあわてさせている。10月18日現在で1日の感染が5万人に近づいており、とくに子供の感染が広がっているという。そのなかで、デルタ株から枝分かれした新しい「デルタ・プラス」の感染が急増していることが話題を呼んでいる。

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フィナンシャル・タイムズ10月18日付は「デルタ株の新しい子孫は、その先祖たちより感染しやすいらしい」との記事を掲載して、このデルタ・プラス正式にはAY.4.2をめぐる混乱を伝えている。新型コロナの専門家であるジェフリー・バレットによれば、AY.4.2は10%から15%ほど、もともとのデルタ株より感染力が高いというのである。

英国では10月18日に、新たにコロナウイルスに感染した人が1日で4万9156人いると発表され、これは今年7月以来、最悪の数値を記録している。これは7日平均でみても1週間前より16%もの高い数値を示しているので、その原因として、このAY.4.2が注目されることになった。

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この約5万人という数値がいかに脅威となるかは、日本のケースと比べてみても分かる。英国は先進諸国のなかでトップクラスのスピードで「少なくとも1回ワクチン接種」の割合が70%を超えたが、英国政府は早々と各種のコロナ規制を解除してしまったので、再び急速に感染が広がっていた。そこに新しいデルタ・プラスが加われば、どこまで感染数が拡大してしまうか、もう分からないと思うのも無理ないだろう。

とはいえ、このデルタ・プラスを注意深く観察してきた研究者たちは、いまのところ英国における感染再拡大の中心的な原因だとは考えていないようだ。前出のバレットによれば「AY.4.2は事態をさらに困難にしたことは確かだが、この新型株そのものが最近の英国の感染拡大を直接説明するわけではない」と語っている。

同紙によれば、AY.4.2は、最初に発見されたデルタ株の45の「支族」のひとつということであり、人間に感染するさいに問題となる角(とげ?)のタンパク質に、2つの変異が起こっているのだという。

ケンブリッジ大学微生物学者であるラヴィ・グプタ教授もコロナウイルスの将来を予測するのは難しく、「デルタ株そのものがどのようにして感染力を高めるのかよくわかっていない」と述べつつ、このAY.4.2が今回の急速拡大の原因という考えには必ずしも同意しない。「アルファ株はもともとの武漢新型コロナウイルスより50%感染力が強かった。最初のデルタ株はさらにそれの60%感染力を増した。AY.4.2はそうした規模での感染力拡大にはならないと思う」。

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このAY.4.2(すでにマスコミでは「デルタ・プラス」と呼ぶようになっているが、専門家たちは、混乱するのでやめてほしいとのことである)は、アメリカでも話題になっている。しかし、ニューズウィーク電子版10月18日配信によれば、「緊急の調査」が必要ではあるが、いまのところ全米で4ケースだけで、当面は、それほどの脅威ではないとされているようである。

次は、フィナンシャル・タイムズによる、今回の感染拡大についてのコメントの部分。「英国で急速に感染が拡大している中心的な原因は、(AY.4.2の登場というより)マスクの着用、ソーシャル・ディスタンス、空気の入れ替え、在宅労働といった対策を急速に取り払ってしまったことによる」。常識的だが、日本でもこれから大いに参考になるコメントだろう。

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