HatsugenToday

東谷暁による「事件」に対する解釈論

2024-01-01から1年間の記事一覧

いま催眠術が復活しつつある;応用への本気の取り組みが始まった

催眠術が復活している。とはいっても、悩める女性から催眠術によって、人には話せない秘密を聞き出して心の苦しみを取り去るとか、集団に暗示をかけて巨大な大衆運動を巻き起こすというような話ではない。医学の治療に部分的にもちいて、これまでより痛みを…

イスラエルは中東に秩序をもたらすのか;ハマス、ヒズボラ、イランに勝利した後に来る危機

ハマスを掃討し、ヒズボラに多大な損害を与え、イランにも核施設の一部に打撃を与えたことで、イスラエルは中東において存在感をさらに増強している。では、イスラエルはこの地域の「大国」となって君臨していくのか。それとも中期的にはアラブ勢力の反発を…

日本製鉄によるUSスティール買収は阻止された;呆れたトランプと労働組合の蜜月

日本製鉄によるUSスティール買収はいよいよ大詰めを迎えているが、対米外国投資委員会(CFIUS)はバイデン大統領に買収に反対するように助言すると見られている。これは民主党の閣僚たちが委員を構成しているから当然だが、そのいっぽうで、同じく買…

中国の核弾頭は、本当は何発あるのか?;ペンタゴンのレポートが示唆する核の現実

中国の核弾頭が600を超えつつあるとかのニュースが流れているが、おそらくこの数字も少なめである可能性がある。中国は第一撃を受けたさいに報復する「報復核」に限定するというような説明をしてきたが、プロたちはそんな主張を信じたことはないだろう。…

アサド政権崩壊で浮上する無秩序;そもそも秩序を破壊したのは誰だったか?

バッシャール・アサド大統領はロシアに亡命して、シリアは父親のハーフィズと合わせて50年ほど続いたアサド独裁から解放されたと報道されている。しかし、その解放を実現した中心勢力がハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)であることは、西側諸国…

米国ではギャンブルが爆発的ブーム!;煽っているのは博打産業と州政府とトランプだ

アメリカ全土にギャンブル熱が急激に広がっている。2018年にスポーツ賭博にかけた金額は70億ドル程度だったが、今年は1500億ドルに近づいている。また、オンラインカジノに800億ドル投じられているが、大統領選挙のさいには数億ドルが選挙結果…

バイデン大統領が息子の罪を恩赦にした衝撃;中世の王様きどりとの批判もでてきた

アメリカのバイデン大統領が息子ハンターの罪を恩赦にしたことは、アメリカ社会に大きな衝撃となっている。おかしな話で、バイデンはトランプが大統領になったら、法が無視される社会となると警告していたはずなのに、自分がそれに相当する行為を平然と行っ…

ポケモンGOはスパイの道具だったのか?;米国の情報機関を恐怖させた背景

ポケモンGOでのトラブルといえば、私的な生活空間にポケストップを設置されたとか、プレイに夢中になった運転手が交通事故を起こしたとかの事態が注目されてきた。しかし、公的な役所、とくに諜報機関は、このゲームが敵対する国の諜報機関に利用されるので…

イスラエルとヒズボラの停戦はいつまで続く;現実を直視するための5つの視点

イスラエルとヒズボラの間に停戦が成立した。もちろん、これで中東に長期的な平和が来たわけではない。この停戦が、おそらくはイスラエルによるイラン爆撃の華々しい成果によるものであることを考えれば。むしろ、中東のパワー構造が大きく変化していくわけ…

イーロン・マスクの変身がもたらす危機;彼は最高破壊長官となって米国と世界をぶち壊す

イーロン・マスクがトランプ政権に入ることで、いったい何が起こるのか。世界一の富豪と世界一の暴君が世界を最大限に破壊するのではないかという心配はもっともである。しかし、未来の自動車市場ひとつとっても二人はまったく異なるイメージをもっている。…

ウクライナ国民の大半はもう戦争をやめたい;世論調査が再確認したゼレンスキーの危機状況

アメリカと英国は自国が供与した長距離ミサイルを、いまさらウクライナに使わせて戦局が変わるかのような幻想を世界に与えている。しかし、肝心のウクライナ国民はすでに戦争をやめたくてしかたがないのだ。すくなくとも半数以上の人がこの戦争が勝てるとは…

イスラエルはイランの核施設を攻撃していた;アメリカの要請など無視するネタニヤフの暴走

イスラエルが10月に行ったイランへの報復のなかで、核施設の「特定の構成施設」を攻撃したと、ネタニヤフ首相が議会で演説した。これはあきらかにバイデンを「卒業」して、トランプに「入学」したということで、アメリカ政府はイランの核施設と石油施設は…

トランプが勝利した人口動態学的な背景;非白人住民、ヒスパニック、移民人口の規模

トランプの時代が来たとなると、もう欧米のマスコミは、これからの分析に傾斜してしまう。それは仕方ないともいえるが、なぜトランプが大統領になれたのか、なぜハリスは負けたのかについての分析が少ないのは、これからの政治について考えるとまずいのでは…

トランプ大統領が生み出す世界規模の大混乱;スティーヴン・ウォルト教授の国際政治「冬の時代」への警告

トランプの圧勝といってよい大統領選の結果は、これからの国際政治に何をもたらすのだろうか。すばらしい時代がやってくると思っているのは、トランプ崇拝者か度外れた楽観主義者だけだろう。しかし、だからこそいま冷静に、トランプ時代の恐ろしい兆候に目…

トランプ当選を祝福したゼレンスキーの本音;ウクライナの多くの高官がトランプ勝利を期待していた

トランプが再びワシントンに返り咲くことが決定したことで、ウクライナのゼレンスキー大統領は何を思っているのか。ついに同国がプーチンの野望を跳ね返す道が断たれたと思い、失意の沼に落ち込んでいるのだろうか。そうではないとの説もある。これまでのバ…

米大統領選の直後にウクライナ停戦は可能か?;リチャード・ハース「停戦提言」の意図と実現性

ハリスとトランプの大接戦が終わりに近づいた11月4日、米国の戦略家リチャード・ハースが米外交誌フォーリン・アフェアーズにウクライナの停戦案を提示した。「終戦」ではなく「停戦」であり、アメリカや西側はウクライナへの支援を続けるが、戦争状態は…

テスラの完全自動運転は実現困難だ;可能と信じているのはイーロン・マスクだけ?

イーロン・マスクの電気自動車企業テスラが、2026年をメドにAIを使った自動運転自動車を実用化すると意気込んでいる。しかし、実際にはAIはそこまで進化していないとして、その実現を危ぶんでいる関係者は多い。AIといえば株が上昇するだけでなく…

ハリスとトランプの戦いは再び大接戦に!【増補2】;トランプが盛り返したが、最後はハリスが逆転か

ハリスとトランプの戦いは、ハリス有利からトランプ有利に逆転し、そしてあと1週間を切ったところで大接戦になっている。なんだかアメリカ・マスコミがたくらんだのではないかと思えるほどだが、英経済誌ジ・エコノミストのかなり精度の高い予測によれば、…

過半数を割ったら首相退陣というのは異常な話;連立は普通のことで、28%は異常値だろう

いまごろ、こんなことを書いているのもナンだけれど、自民党と公明党を合わせても過半数を割るかもしれないというのは、可能性として低くはないだろう。しかし、それが即政権交代になるような話はいくらなんでも安易で、おかしなバイアスがかかっているとみ…

イスラエル軍がイランに再報復の攻撃敢行!;米国は関与を否定するが次の準備はしていた【増補】

イスラエル軍が10月26日の早朝、テヘランを中心とするイランに対してミサイル攻撃を行ったと発表した。これは10月1日のイランによるイスラエル攻撃に対する報復と思われる。いまのところイランでの被害はあきらかではないものの、核施設や油田はター…

イーロン・マスクの大統領選「票の間接買収」;なぜこれが犯罪でなくなる可能性があるのか

イーロン・マスクがトランプに投票する人には、毎日100万ドルが当たるクジを引く権利を与えると発表したので、アメリカでは大問題になっている。これは違法ではないのか? そうでないとしても、あまりに露骨な選挙を金で買う行為ではないのか? その背景…

統計学的な予想ではトランプが勝つというのは本当か?;いま勢いがハリスから離れている【増補】

いまや統計学的に見ればトランプの勝利の確率が高まっている。この間までハリスが余裕を見せて勝つような雰囲気があったのだが、数値の動きから推測するとトランプに勝利が傾いているらしい。もちろん、このような傾向はわずかの変化で予想が変わってしまう…

イスラエル軍はハマス指導者シンワル殺害に成功!;次に来るのは平和ではなくイスラエルの孤立だ

イスラエル軍はハマスの指導者シンワルの殺害に成功した。これでガザ地区を含むイスラエルに平和が来るのだろうか。まったくそれはありえない。すでにイスラエル軍は次の殺戮のための作戦を立てており、そのことによってネタニヤフ首相は政治生命を保ち続け…

イランの核兵器完成は意外に早い?;対イスラエル戦略は大幅に変更されている

イランは核武装に至るのか。イスラエルはそれを阻止する行動に出るのか。この問題を考えるうえで、イランのいまの開発力がどのレベルにあるのか、そして、どれほどのスピードで核保有に至るのかが問題になる。実は、その開発期間については確定した説がなく…

トランプが敗北したときに言い出す5つの嘘;2020年の混乱が再び始まる

トランプの「嘘」は、ますますその本領を発揮しているようだ。アメリカ大統領選では民主党系メディアの頑張りによって、ハリスはたちまちにしてトランプを圧倒したような印象を産み出したが、ここに来てまた接戦といえるデータが発表されるようになった。こ…

日本のイノベーション力はどれほどか?【増補】;石破政権の経済政策は日本経済を押し上げるかを考える

目に触れると読んでみたくなるのが「ランキング」記事だ。経済から芸能の世界まで、どこまで正しいいのか分からないようなランキングがネット上で発表され、そのたびにちょっとのぞいてみたくなる。経済やビジネスに関心がある人は、やはり日本の世界におけ…

ネタニヤフに欺かれ続けるバイデン;次はイスラエル・イラン戦争が世界をパニックにする

イスラエルのネタニヤフ首相は、いまイランへの報復プランを画策するのに忙しい。ちゃんと米バイデン大統領にも相談しているようだが、決断するのはネタニヤフで、バイデンはまたしても欺かれると予想されている。ネタニヤフが狙うのはイランの油田なのか、…

ネタニヤフの「勝利」は長く続かない;スティーヴン・ウォルト教授が憂慮する「イスラエルの暗転」

いまイスラエルのネタニヤフ首相は絶頂にある。ハマスを掃討し、ヒズボラを抑え込み、そしてイランとの戦いについても、アメリカのバイデン大統領は全面的な支援を約束している。しかし、戦争の歴史が示していることは、華々しい勝利が長期的な戦いでの敗北…

イランによる報復は次の引き金を引く;イスラエルが行う再報復は何が標的になるのか

イランによるイスラエルに対する報復は何を引き起こすのか。それはもちろんイランとイスラエルとの全面戦争である。それでは、その先にあるものは何か。今回の報復がかなり本格的なものだったことで、中東情勢は一気にいままでと異なる状況に突入してしまっ…

イスラエル軍はレバノン侵攻を開始した;なぜヒズボラは指導者の暗殺を阻止できなかったのか

イスラエル軍は、「限定的」とは付いているものの、レバノンへの地上戦を開始した。報道を聞いている限りでは、レバノンのヒズボラ勢力は、ガザ地区のハマスなどとは比べものにならないほどの「脅威」だということになっていたが、どうも違うようだ。すでに…