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東谷暁による「事件」に対する解釈論

イスラエルがハマスとの停戦に合意か;ラマダン月が迫るなかでバイデンは時間との競争に

アメリ国務省の高官は、イスラエルハマスとの6週間の停戦に「基本的に合意」したと発表した。「いまボールはハマスのコート内にある」。もちろん、まだ正式に決まったわけではない。取り決めの細部はまだまだこれからのようだ。フィナンシャルタイムズの記事と、数行だがジ・エコノミストの速報をもとに紹介しておきたい。


英経済紙フィナンシャルタイムズ3月3日付は「イスラエルは基本的には停戦に合意したとアメリカ高官が述べた」を掲載して、いまの停戦交渉の進展具合と課題を手短に述べている。いっぽう、ハマスのほうは応答が待たれている状態で、「ボールはハマスのコート内にある」というわけだ。

この基本的合意がなされたとしても「取引が成立するまでには何百もの項目が残っている」。つまり、解決しなければならない事項がたくさんもある。基本的には停戦のあいだに、ハマスが拘束しているイスラエル人および外国人の人質と、イスラエルの囚人となっているパレスチナ人の交換が行われるが、その比率をこれから決めなくてはならない。また、ハマスが望んでいるとされる継続的な停戦を、どうするのかもこれからだ。アメリカの高官は次のように述べている。

フィナンシャル紙より:112人の死者を出した原因は何か


「基本的にはボールはハマスのコートにある。もし、ハマスが脆弱な人質つまり傷病者や高齢者そして女性の解放に同意すれば、ガザ地区における6週間の停戦が今日にでも実現することになるだろう」

しかし、たとえばハマスが3月2日に発表した曖昧なアナウンスメントは問題を複雑にしている。つまり、拘束されているといわれる人質約130人のうち70人は、イスラエル空爆や砲撃によって殺されてしまったというのだ。これが事実と確認されれば、イスラエルが予想していた人質死者数の2倍に相当し、これまでの交渉の流れが急激に変化してしまうだろうという。アメリカのバイデン大統領は、イスラム教の聖月ラマダンが始まるまえに、なんとか停戦を成立させようと試みているが、それは3月10日に始まるから実はもう余裕はほとんどない。

バイデン大統領の命令によりアメリカ空軍が食料を空から投下


さらに交渉の行方に大きな影響を与えそうなのが、ガザ地区で支援物資を積んだトラックをめぐる混乱で、パレスチナ人112人が死亡した。病院に担ぎ込まれた負傷者に銃撃による傷が見られることから、イスラエル兵の発砲があったことはまちがいない。しかし、ガザの医療関係者はイスラエル兵の虐殺行為だと批判し、いっぽう、イスラエルは威嚇射撃しただけだと主張している。

いまアメリカは空輸によって食料をガザ地区に運び込み始めているが、餓死の危機に瀕している者は50万人を超えているといわれる。最初の空輸は3万8000食分にすぎなかった。アメリカはさらに「地区に洪水のように流し込む」と言っているが、その実現も多くの条件をクリアしながらの時間との競争になっている。