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東谷暁による「事件」に対する解釈論

エジプトの情報機関長官がイスラエルを説得?;ラファ侵攻の作戦中止を検討中との情報もある

エジプトの情報機関のトップがイスラエルを訪れ会談し、ラファ攻撃の計画を白紙に戻して新たな交渉を開始することを提案していたが、これに対してイスラエル側が、エジプトの提案に対して検討する意志があることを表明したというニュースが流れている。これまでも繰り返されてきた駆け引きだが、その可能性はあるのだろうか。ともかく、いま流れている情報だけを紹介しておこう。


経済誌ジ・エコノミスト4月27日は正午過ぎ、速報として次のような短い記事を流した。「エジプトの情報機関長官が、イスラエル側の高官と繰り返し会談して、難民が集中しているラファ侵攻の計画を廃棄し、新たな広範囲の交渉を始めることを、説得し続けていた。イスラエル側の高官は彼らがエジプトの提案、つまりハマスが33人の人質を解放することと引き換えに、ガザでの戦闘を6週間停戦とするとの案を検討すると語った模様である」。

このエジプトの情報機関トップとはこれまでの報道からして、エジプト情報機関長官アッバス・カメルだと思われる。米経済紙ウォールストリート紙4月26日付の「エジプト交渉者をイスラエルに送る」との記事も同氏に触れている。「イスラエルの高官は、彼らが33人の人質解放との引き換えに6週間以下のガザでの戦闘をやめる提案について、検討する意志があると語っている」(同紙)。さらに、NHKテレビも4月26日に「地上作戦強行構えイスラエルにエジプト働きかけか」を放送し、また、ネット上に記事を投稿していている。


もちろん、こうした交渉は繰り返されては中断してきたので、これが決定的なものとなるとは思われないが、イスラエル国内世論も踏まえれば、これまでと何らかの違いはあるかもしれない。たとえば、イスラエル国内ではガザ攻撃については支持率が高いが、昨年末のヘブライ大学の調査ではイスラエル人の56%が、イスラエルによるガザの併合とイスラエル人による再入植には反対する(賛成33%、分からない11%)という結果もある。

いま流れている情報には、きわめて悲観的なものもある。前出のウォールストリート紙に出てくる説だが、130程度といわれた人質のかなりの部分はすでに亡くなっていて、交渉のための人質の数は揃えられないというものだ。これはアメリカの情報コミュニティに属する高官が語ったものだという。

戦争以後のガザ地区についての見方は、これまでもイスラエル知識人層が入植再開を批判していたが、国民の半分以上が、実は入植を強引にすすめてきた宗教的右派を含むネタニヤフ政権に反対していることになる。この情報については、もう少し追跡する必要があるが、とりあえず報告しておきたい。以降の動向についても、何らかの形で追加しようと考えている。