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東谷暁による「事件」に対する解釈論

いよいよ米株価は危険水域に入った!;もちろん日本の株価もつれ落ちする危険が大きい

今日も株価は歴史的な最高値だった、という事態が永久に続くわけがない。とくに日本の株価はいまの日本経済から考えると不自然すぎる。もちろん、世界の株高を引っ張っているアメリカの株高は、もう完全に安全水域から遠いところにある。AIの衝撃、中国からのシフト、コロナ時代のリバウンド、そして日本の場合はアメリカ株の急伸という要素があるが、果たして、そのうちのいくつが確実なものだろうか。


普通、経済紙や経済誌は、株価がバブルだと分かっていても、まだまだいけると報じる傾向がある。それは経済マスコミが金融界と強いつながりがあり、また、景気がいいほうが経済メディアは収入が増えるからである。ところが、英経済誌ジ・エコノミスト2月29日号では社説「株式市場の黄金時代は閉じようとしている」を掲載して、あれこれ論じてはいるのだが、少なくとも、いまの急上昇はもう続かないと警告を発している。

「いまの市場はドットコム相場と同じように、破裂してしまうこともありうる。あるいは、反転するのに何年かかかって、株価は緩慢な市場のなかで停滞するかもしれない。しかし、どのような経路をたどるにせよ、これからの10年の間に、いま信じ込んでいるような、投資家たち特にアメリカの投資家たちが、黄金時代を享受したなどとは、誰も言わないことになるのではないだろうか」

以下のグラフと表はWSJより


この結論じたいも、レトリックが利いているというよりは、あれこれ韜晦しているといったほうがよいかもしれないのだが、ともかく「つづかない」というのが結論であることは分かる。もちろん、それほど長くはないこの社説においても、両論併記的な部分が多く、たとえば、2000年のドットコム・バブルの崩壊との比較においても、いまの「特殊性」を苦しいレトリックで強調しているのである。

同誌によれば、ドットコム・バブルのように「根拠なき熱狂」ではなくて、今回の「根拠のある熱狂」ではないかと論じる部分では、たとえば、チャットGPTの類にはバブル的な要素があるが、エヌビディアについては「ちゃんと実績をあげての株高なのだから」、けっして「幻想」ではないのだと指摘しているくだりがある。


エコノミストたちの評価によれば、このエヌビディアという企業は優れた技術をもっていて、株価の上昇は当然だという説もある。しかし、いっぽう、すでに他のハイテク企業が新しい技術を開発しており、圧倒的な優位もそれほど長く続かないのではないかという見方もある。私見をいってしまえば、確かに優れた技術はあるのだろうが、いまの極端な株価急伸は、いまのAIブームに煽られていることは間違いなく、同社の高い株価はブームの要素が多く含まれると見るべきだろう。


ちょっと面白かったのは、この記事のなかで中国経済の不調や、イスラエルハマス戦争、ウクライナ戦争などが起きているのに株価が上がっているので、いまの株高に本当の根拠があるのではないかと示唆していることだ。しかし、歴史的に見れば、戦争がバブルの切っ掛けになることは、バブル研究の泰斗キンドルバーガーが指摘している。戦争はバブルのきっかけになるし、また、経験的にみて、バブル崩壊のきっかけにもなる。いま同誌で読んでおくべき部分は次の段落である。

「リアリスティックな見方をすれば、利子や税金などを考慮して、いまの株式のリターンは年間4%程度が続くことになることを意味する。そのためにアメリカの企業は、年間6%程度の利益を上げなければならない。それは戦後においてベストの成績を上げるということである。しかし、投資家の大御所ウォーレン・バフェットは、彼のファンドにおいてすら、そんなことは『不可能』であると語っている」


問題はこのバブルが「いつ崩壊するか」である。ジ・エコノミストは緩慢な停滞という可能性もあるなどとしているが、ほとんどの場合が「破裂」してきたことを思えば、やはり崩壊を考えておいたほうがいい。なお、「バブルは破裂して初めてバブルと分かる」というグリーンスパンFRB議長の言葉を、まだ信じている人がいるが、これは彼が対処に失敗したときの言い訳であり、うまく対処したときには「バブルは予測できる」と誇っていたし、また、議長引退後に書いた本でも「予測できる」と論じていることを知るべきだろう。

 

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