新しいコロナウイルスの変異株オミクロンは、いまのところまだその性格がしっかりとつかめていない。WHOは「懸念すべき変異株」に指定して「高いリスク」があると警告しているが、最初にオミクロンが発見された南アフリカからは「入院した患者はいまのところ重症化するのは少ない」というニュースが流れ、少しだけ希望も生まれてきた。
いま、感謝祭の休みもとらずに必死に研究を続けているのがワクチン製造メーカーだと、フィナンシャル・タイム誌11日29日付が報じている。名づけて「オミクロン・ワクチン:追加ワクチン接種(ブースター)はメッセンジャー型ワクチン開発者たちを発奮(ブースト)させている」。洒落ている場合ではないと思うのだが、事実はその通りだろう。
ウォールストリート紙11月28日付によれば、モデルナやファイザー(とビオテック)は、すでにオミクロン用のワクチン開発を始めており、こうしたワクチン製造企業の株価が急騰するいっぽうで、これからの戦略を練るのに忙しい。「モデルナのホーゲ社長は『恐い変異株で、われわれも緊張している。とはいえ、ワクチンでウイルスを止められることは分かっているので、そのアップデートだけでいけるかもしれない』語っている」。
このアップデートだけでいいという見通しがどこから出てくるかといえば、前出のフィナンシャル紙によれば、「これまでの伝統的なワクチンとは異なり、メッセンジャーRNA型のワクチンは、油脂の小さな泡のなかに遺伝子を入れたものである。したがって、もしオミクロンに現在のコロナワクチンが効かないとしても、(その泡のなかに入れる遺伝子を組み替えればいいから)新しいバージョンのワクチンは100日以内には準備できる思われる」からなのだ。
ft.comより:WHOのテドロスは「きわめて高いリスク」と発言
とはいえ、世界の研究機関やWHOによれば、このオミクロンの性質が対策を立てられるレベルまで分かるのは、この12月の半ば以降ということで、ワクチンメーカーが抱いている楽観的イメージとのギャップはまだ大きい。ワクチンの新バージョンが出来ることと、政府や保健機関が方針を決めることとの間には、かなりの温度差がある。このギャップがどこまで小さくなっていくかは、この1週間の研究の進展によるだろう。
日本は岸田政権が「新規入国者は原則禁止」にして、世界的にも注目されフィナンシャルタイムズ11月29日付は「日本は強力な新株を食い止めるために外国人の入国を禁止した」と報じて、措置としては「(世界で)最も強いもの」と評価している。たしかに、今回の岸田政権の動きは、安倍政権のように中国からの観光客を野放しにした措置と比べて、かなり強いものだといえるだろう。
それにしても、ワクチン製造企業と投資家たちの反応は早い。すでに海外の経済メディアは、モデルナやファイザーがこれからどれくらい収益を上げるか、さらには株価がどこまで上がるかのシミュレーションに余念がない。オミクロンの性質が分かった段階で、とんでもない「タヌキの皮算用」だったことが判明するかもしれない。個人的にはぜひ、そうであって欲しいけれども、警戒はまだまだ続けるべきだろう。