新型コロナウイルスにオミクロン株が登場したことで、新たな恐怖が世界に広がっている。まだ、その性質がよく分かっていないのだが、ともかく可能な対策はとらなくてはならない。なかでも機敏に動いているのが、コロナワクチンを供給してきた製薬会社である。
フィナンシャル・タイムズ紙11月27日付は「新しいコロナウイルス変異株に対するワクチンのテストに大わらわの製薬会社」とのレポートを掲載して、そのワクチン開発最前線と製薬会社の株価動向の急激な展開を報じている。ここでは開発のほうを中心に、ざっと紹介しておくことにしたい。
同記事によれば、まずモデルナ社のチームは、すでに「ノンストップ」で開発に取り掛かっており、ビオテック社のリサーチ担当も、疑似ウイルスを用いて自社のワクチンが新変異株に対して有効性を下げるか否かをチェックしている。ジョンソン&ジョンソン社も新変異株に対する自社ワクチンのテストを開始したと語り、オクスフォードの研究者たちも新しいウイルスの入手を試み、アストラゼネカ社は新変異株が発見されたボツワナやエスワティニで調査を始めている。
ft.comより:ワクチンの製薬会社の株価はジャンプした
すでに分かっているのは、オミクロン株の遺伝子が多くの変異を見せていることで、しかも、人間の細胞に感染するさいに使われるスパイク(例のトゲ)のタンパク質の変異がかなりの数(30以上といわれる)に上っているという。どうやら、この変異の生じ方からして、いまのところメッセンジャーRNA型のワクチンのほうが、対応ワクチンの開発には」有利らしく、クレディスイスのアナリストであるジョー・ウォルトンは次のように述べている。
「メッセンジャーRNA型のほうが開発は簡単だと思われます。というのは、遺伝子組の新しい組み合わせを行って、それを必要に合わせて入れ替えるだけでいいからです。それで新しいワクチンの出来上がりというわけです」
ft.comより:10年以上かかったワクチン開発はいまや82日に
もちろん、簡単だといっても今日明日に出来るというわけではない。ファイザー社によれば、開発の始まりから接種が可能になるまで、これまでの110日を31日まで縮小しているという。同紙が掲載しているグラフによれば、従来、ワクチンの開発には10年以上かかっていた。それがコロナワクチンの場合には最速で1年余にまで短縮され、そしていまや82日になると予想されているという(上図)。
ワクチンだけでなくコロナ治療薬の開発にも拍車がかかっている。同紙によれば、「さいわいなことには」、コロナの治療に使われてきた抗ウイルス薬が、ワクチンとは異なった経路で効果をもつことだという。前出のウォルトンによれば、コロナ治療薬にかんしては、今度の変異株のようなスパイクのタンパク質の変異には、あまり影響を受けることなく済みそうだという。
もちろん、まだオミクロン株の性格じたいが不明の部分を多くもっている。それが次第に分かってくるのと同時進行で、ワクチンと治療薬の開発や改良が進むということである。この投稿も、新しい情報が出てくれば追加したい。