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東谷暁による「事件」に対する解釈論

ウクライナ、台湾、そして日本(2)ロシアはウクライナ侵攻にさいし核兵器演習を断行する

ロシアがウクライナ侵攻にさいし、同時に大規模な核兵器演習をして、西側の介入を牽制するとの観測が有力になっている。アメリカでは侵攻の時期をめぐっても、さまざまな議論が進んでおり、2月の中旬から3月までの間になるのではないかとの説が有力だ。北京冬季オリンピックに訪れたプーチン大統領は、習近平主席とともにNATO拡大を批判している。

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英紙フィナンシャル・タイムズ2月5日付は「米国はロシアがウクライナをめぐり西側に警告するため核兵器の演習を行うと見ている」を掲載した。「米国の軍部および情報機関は、今月(2月)にも大規模な核兵器演習を行うと見ている。プーチン大統領ウクライナ侵攻を断行したさい、NATOが介入することを牽制するためと思われる」。

すでに日本でもウクライナ情勢が、緊張の度を高めていることは報じられている。たとえば、ロシアはウクライナとの国境に10万の軍隊を展開し、また、ベラルーシ内にも3万の侵攻軍を準備している。おそらく、中国側からの要請もあって、北京五輪の間は侵攻に踏み切ることはないが、それが終わる2月20日が、ひとつのタイミングであることは、容易に予測されるだろう。

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ft.com より:クリミア半島を走るロシア戦車


米国でロシアの核兵器演習の可能性を主張しているのは、統合参謀本部議長のマーク・ミリー将軍と国家情報長官のアヴリル・ヘインズだという。彼らは下院議員たちに、プーチンは2月中旬の核兵器演習を計画していると語ったと同紙は伝えている。この情報はもちろん非公式なもので、議会関係者から得たものということになっている。

ウクライナ情勢をめぐっては、アメリカ内でも多少のブレがある。たとえば、ワシントンの政府内では、ロシアが限定戦を行うには十分な軍事的準備が終わっているが、首都キエフを占領するような全面戦争を遂行するには70%程度の準備でしかないと見ている。いっぽう、米軍内の専門家たちは2月中旬の全面侵攻が可能だと予測し、このことと核兵器演習の予測とは一貫したものだと考えているという。

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となれば、中国の出方が気になるが、すでに述べたように、冬季北京オリンピックを表敬訪問したプーチンは、2月5日に中国の支持を取り付けたと見られ、「NATOの拡大には反対する」との文言を共同声明のなかに盛り込んでいる。米政府のある高官は、中国は今回の2首脳会談のさいに、「ウクライナエスカレート化を制止」するようプーチンに促したと見ているが、ロシアはすでに侵攻を決めているとの観測は根強い。この高官は次のようにも述べているという。

「もし、ロシアがウクライナに侵攻してしまえば、中国は見方を変える。そのとき、ヨーロッパの安全保障は危うくなり、世界の平和や経済にとって危険になるが、中国はいやいやながらとはいえ、ロシアのウクライナ侵攻を是認し、戦術的な支援をせざるを得なくなる」