HatsugenToday

東谷暁による「事件」に対する解釈論

プーチン、ウクライナ東部への軍隊派遣を命令する;親ロシア派の2地域独立を承認して断行

いま世界中の報道機関が、プーチンウクライナ東部分離独立承認と、ロシア軍の同地域への進軍命令を報じている。なんのためにこんなことをするのか。もちろん、独立派の保護を口実にウクライナ東部を事実上ロシアに統合して、勢力圏を西側に拡大するためである。

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ワシントンポスト紙2月21日付の「プーチンウクライナの独立派地域に軍隊派遣を命じる」のアップデート版概略をここに記しておく。「プーチンは分離承認地区に軍隊派遣を命令/世界の指導者たちはプーチンによる分離派承認と(ロシア系への弾圧に対する)制裁表明の後、プーチン国際法違反を非難している/ロシアはウクライナの2地域の独立を承認するが、これは戦争の事実上の口実である」。

次はフィナンシャルタイムズ紙2月22日付の「プーチンは分離派独立を認めた後にウクライナ東部への軍派遣を命じる」から。「西側諸国はロシアの軍隊がウクライナ軍への攻撃を開始する口実をでっちあげることを憂慮している。プーチンは、ウクライナが独立派への弾圧と『テロリスト的な』攻撃の度合いを高めていると、根拠のない非難を繰り返している。それは、キエフの政府と西側諸国によれば、『偽旗作戦』(戦争が行われているから介入するとの口実をつくる作戦)のためのウソだという」。

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FT.comより:東部の2地域を「独立国」として承認


こうした事実上のウクライナ侵攻に対して、バイデン大統領はこの2つの「新独立国」(ドネツク共和国とルガンスク共和国:赤色の部分が親ロシア派占領域)へのアメリカ企業によるいかなる投資も貿易・融資も禁止すると経済的制裁を表明したが、いまからそんなことをしても果たして効果があるのかは疑問だ。

また、EU諸国の首脳もプーチンの一方的な独立承認を国際法違反とし制裁を口にしているが、いまのところどのような制裁になるのかは明瞭ではない。国連の安保理が開かれるとの報道があるが、この場合、中国がどのような態度を見せるかが、大きな分かれ目となるだろう。

追伸:安保理事会は日本時間22日午前11時から始まったが、ロシアと欧米による非難の応酬となっている。そのなかで中国の張軍国連大使は「各国は抑制を保ち緊張をエスカレートさせる行動を避けなければならない」「外交的解決を目指す努力を歓迎する」などと述べているが、ロシアに対する非難や懸念を示すことは避けているという(テレ朝ニュース2月22日14:49)。NATOの拡大は批判するが、ロシアのウクライナ侵攻は支持しないとのスタンスは、ほぼ貫かれているということだろう。

 

【付記】ツイッターのタイトル等に、新ロシアとの表記が残っていますが、もちろん、親ロシアの間違いです。すみません。ロシアがでっちあげた勢力だから「新」だなどという含意はありません。