中国のコロナ禍はピークより感染者と死者が約98%減ったと中国政府が発表した。嘘ではないだろう、ただし同国の統計に従う限り。しかし、中国の人民と世界の人びとは、この発表を信用する者はほとんどいない。世界は本当のことを知りたいと思っているが、誰よりも知りたいのは中国の人民だろう。
「中国本土の病院における死者は2月7日には102人となり、それはピークだった1月4日の4273人から97.6%も減った、と2月8日に同国当局が発表した。入院している重症者も2000人まで下がり、これもピークの1月5日における12万8000人から約98%分の下落を示している」(ブルームバーグ電子版2023年2月9日付)
これを読んで、心から「ああ、よかった」と思う人は、よほど中国政府を信頼しているか、疑うということを知らない現実の世界では生活できない人間だろう。好意的に判断しても、すでに中国当局は「コロナの死者数は基礎疾患で亡くなった人を除く」と宣言しているわけであり、しかも、今回の発表も「病院において」との限定付きである。ちゃんとした調査をしているとしても、この数値にはコロナ感染により基礎疾患が悪化した人や、病院以外で亡くなった人を加えなければならない。そして、中国はちゃんとした調査をしていないのだ。
ちゃんとした調査をしていなければ、ちゃんとした数値は出てこない。そして、出てきた数値があっても平気で定義を変えてしまう当局の発表は信頼できない。そこでさまざまな他の数値から推測することになるのだが、少し前に中国アカデミー会員の科学者の訃報から推測した例を紹介しておいた。このブルーグバーグ電子版では、全国に1万1790店を展開しているファスト・フード会社ユーム・チャイナ・ホールディングズが、店舗のすべてに発した最近の警告を紹介している。
その警告というのは、最近の売上からする過剰な楽天主義に注意を促したものだった。「春節以後の消費者は実は消費にずっと消極的になっている。国民のかなりの部分が依然として外出することには注意深い」というのが、その警告の一部である。つまり、春節での売上で舞い上がって、これからも売上が伸びていくと思うなよということである。
もうひとつ、かなり決定的な警告もある。他でもない、それは北京の保健当局が小学校や中学校へ送った通達で、春節以後に校内に戻って来た生徒たちにはマスクをさせろとあるという。中国は日本同様あるいはそれ以上に、マスクに感染防止の効果を期待してきた。ということは、中国当局は北京などの大都市ではこれからの感染爆発について、本音では憂慮しているということだろう。
同レポートは中国CDCが発表しているワクチン接種率を付け加えている。全人民の約90.6%が2月6日現在で2回の接種が終わっている。60歳以上でみると、96,6%が2回接種しており、92%が追加接種を行っているという。ただし、これはメッセンジャーRNA型ではなく、かなり効果が低い中国製のワクチンであることも念頭におかなくてはならない。
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