HatsugenToday

東谷暁による「事件」に対する解釈論

ウクライナに供与される戦車が届かない?;同盟・友好国が見せる表明と現実のギャップ

約束したはずのウクライナに対する戦車の供与が進んでいないらしい。このままだと、最初しぶっていたドイツだけが、かろうじて約束を守る事態になりかねない。アメリカの戦車エイブラムスがウクライナの戦場に届くのは、2年後という予想もあるというのだから、あまりにも杜撰な武器供与作戦ではないのか。


米経済紙ウォールストリート紙は、2月9日付に「ヨーロッパの同盟国が約束したにもかかわらず、ウクライナに戦車は届きそうになり」との記事を掲載し、「ヨーロッパの同盟国はドイツによる積極的な工作にもかかわらず、早期に届けることに渋っていて、ロシアの攻勢が始まるまでに、十分な戦車数が届くのは疑わしくなってきた」と報じている。高性能のドイツ製戦車レオパルトを持っている同盟国が、ウクライナに喜んで供与することを決定し、それが渋るドイツを動かしたという「美談」はどこに行ったのか。

まず、英国とフランスだが、それぞれ220両くらいの戦車を持っているが、実際に戦闘に仕える状態のものが何両なのか分からないという。ドイツの場合ですら、同じくらいの両数を持っているのだが、修理が必要なのがかなりあって、配備可能なのは半数以下という。アメリカはエイブラムス31両を送るとバイデン大統領が誇らしげにいっていたのに、同国の当局者たちは「戦場に届くまで2年はかかる」と言い出した。


そのいっぽうで、英国はチャレンジャー2を14両といっていて、これは何とかなりそうらしい。フランスは主力戦車ルクールを200両もっているが、急に渋り出して、供与するのは戦車ではなく装甲車を送ることにしたという。この装甲車「AMX-10RC」はキャタピラではなく車輪で走るらしいが、火力が大きいので軽戦車と見なされるらしい。

他のヨーロッパ諸国が供与を申し出たために、ドイツのショルツ首相が、他の国にも戦車の供与を呼びかけることになった経緯はすでに述べた。そして、そのお陰でオランダ、デンマークも戦車の供与に応じると表明したとの報道があった。ところが、このウォールストリート紙の記事によれば、それぞれの国の当局者たちは、自国の戦車をウクライナに提供することは「ない」と答えたという。


また、フィンランドスウェーデン、ベルギー、スペインも、ドイツが認めればドイツ製レオパルトを供与するとの姿勢を見せたことになっていたが、やはり、いまの段階では何の約束もしていない。ウォールストリート紙によれば、フィンランドは130キロのロシアとの国境があるゆえに、この種の政策は取りにくいとのことだが、もうひとつ、NATO参加をめぐってトルコが牽制しており、供与を表明できないらしい。もし、NATOに加わればその後に240両の一部を供与すると同国当局は示唆しているとのことである。

フィニッシュ国際問題研究所のミナ・アランダーは次のようにコメントしている。「ドイツしゅりょkがヨーロッパ諸国による戦車供与の最大の貢献国になりそうです。というのも、同国が産業界が保持しているストックが最大規模で、しかも、他のヨーロッパ諸国に比べてドイツ陸軍が最も強い参加意欲をもっているからです」。どうも、ヨーロッパ諸国のウクライナへの協力についてのは、それぞれの政府が発表する見込みと、ウクライナを支援する世界の報道と、進行しつつある現実とのギャップは、きわめて大きいように思われる。