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東谷暁による「事件」に対する解釈論

解放されたパレスチナ人はほとんどが少年だった;捕虜交換の内実を検証する

イスラエルハマスの一時的停戦で、イスラエル側から解放された人たちはほとんどが少年で、しかも、西岸地区で拘束された者たちだった。彼らはどのようにして捕虜となったのか。そしてまた、これについてハマスの反応はどうなのか。ともかくデータから見てみよう。そこには、この一時的停戦(戦闘休止、一時休戦などの表記もある。英語はほとんどがtruceで通している)の性質と、これからますます厳しくなる展開を示唆するものがある。

ジ・エコノミストより


経済誌ジ・エコノミスト11月17日号によれば、イスラエル政府は解放した300人のリストを公表した。それによれば、ほとんどがガザ地区ではなく西岸地区と東エルサレムで拘束された者たちであり、しかも、驚くべきことには90%が16歳から18歳の少年たちなのだ。ということは、ハマスの戦闘員もいないわけではないにしても、ハマスとは対立するファタハが支配する地域の年少者たちだということである。

ジ・エコノミストより


イスラエルの発表では、ここにはハマスイスラム聖戦に属するものが含まれているというが、同誌の記述によれば「ほとんど半分は政治的な参加をしていない」という。彼らは投石をするなどの行動に出て「地域の安全」を脅かしたという罪で捕まっている。67人がすでに有罪となっているが、残りは裁判をまだ受けていない。イスラエルハマス戦争での拘束者の解放なのだから、当然、ハマスの戦士かと思うと、まったく違うのに驚くとともに、伝え聞いたパレスチナ西岸地区での、若者たちの葛藤を目の当たりにしたような気になった。

ジ・エコノミストより


同誌によれば、今回の「交換」は規模が小さいとのことである。たとえば、2011年のイスラエルの解放人数は1027人、1983年の場合は4500人の「囚人」が解放されている。イスラエルはこれまで80万人のパレスチナ人を拘留してきたという。さて、冒頭で触れたハマスの反応だが、このリストの内訳についてもちろんハマスは知っている。「西岸地区はハマス民族主義運動のライバルであるファタハが支配しており、彼らはハマスを憎んでいる」。ここまで傾向が明らかなのだから、イスラエルは意図的に行っているのだろう。「しかし、今回、最初に解放された若者たちが、西岸地区でハマスの旗を振る群衆に、歓迎される光景がみられた」とのことである。