コロナ禍が終息すればインフレが始まるのではないかとの予想は、このブログでも何度か述べている。また、「コモドンの空飛ぶ書斎」でも何度か関連テーマを扱っている。ただし、それは自然に始まるのではなく、アメリカを中心とする先進諸国が「政策」として採用あるいは容認するのではないかということである。
日本経済新聞2月18日付の朝刊は1面に「コロナ下 インフレの芽」との記事を掲載した。サブタイトルでは「需要回復、供給追いつかず」「金融政策の難度増す」とある。もっとも、ここに並べられているインフレの芽というのは、実は、米欧での話で、日本ではそれほどではないのである。いや、それどころか日本はほとんどデフレに後退してしまっている。
日本経済新聞より
そういえば、やみくもな財政出動派や実践的なMMT派は「ほらみろ、日本は財政出動がまだまだ足りないのだ」と言うかもしれない。しかし、こうした日本だけのデフレ現象をみて、GDP比での日本の財政出動が、欧米に比べて圧倒的に足りないからだとは、ちょっと言えないだろう。
この矛盾をマクロ的な数値で説明するには、インフレ率ではない別の指標が必要となる。なぜなら、少なくともインフレ率は、先行指標ではなく遅行指標であって、財政出動が「十分」だといえる数値を予想することはできず、また、因果関係もうまく整合性をもって説明できないからだ。
以下3点、The Economistより
たとえば、英経済誌ジ・エコノミストは、これまでもコロナ下における米欧のインフレ傾向と、日本のデフレ傾向を指摘してきた。ここに同誌が掲載したグラフをいくつか引用しておくので、ご覧いただきたい。そして、もし、いままでのデータで、これまでの主張が正しいと自信をもてるならそれでよいだろう。
しかし、私にはコロナ禍への対応策であった「財政支出と金利ゼロの組み合わせ」は、たしかに必要であったことは確かでも、これまでの政策に欠けていた「日本経済低迷の特効薬」になりえるとはとても思えない。生じているのは米欧日における証券バブルおよび不動産バブルではあっても、経済をデフレから離脱させる政策とはいえないのだ。
どのようなバブルもいつかは崩壊する。そして、コロナ禍からの脱出は、一時的に経済復活をもたらしたとしても、同時にバブルの崩壊の条件を整えることになる。いま、目の前に起きている米欧でのインフレと日本でのデフレという、一見、相反するような現象が、ポスト・コロナ経済を予想する、ひとつのヒントになるのではないかと思われる。今回はその導入として、まずグラフを見ていただきたい。
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