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東谷暁による「事件」に対する解釈論

中国経済が勢いを失っている;コロナ対策失敗のツケが大きく回ってきた

中国経済の第2四半期は予想どおり思わしくなかった。奇跡的な復活を煽っていたビジネス誌もあったが、無理やりコロナ政策を変更して150万人ともいわれる死者を出し、それでも経済が順調に成長したら、それこそ世界中の人間の努力をあざ笑うものになっていただろう。起こるべきことが起こった。さて、それではその内実と対策はどうなるのか。

 

中国経済は第2四半期で勢いを失った。GDP上昇率は第1四半期に比べてわずか0.8%にとどまった。輸出がマイナスになり、小売が低迷し、そして勢いを失った不動産部門は、経済を押し下げている」(フィナンシャル・タイムズ7月17日付「中国経済の第2四半期は勢いを失った」)

もう少しいくつかの数値を見てみよう。第2四半期の経済成長率は、ロイターのアナリスト予想投票平均の0.5%より高い0.8%だった。しかし、2.2%だった第1四半期と比べるとかなりの落ち込みである。また、前年同期比革でみれば6.3%の成長だが、これは上海などがロックダウンをしていた時期との比較であり、ロイター予想投票では7.3%という数値が出ていたのだから、この観点から見ても低い。

フィナンシャルタイムズより(以下同様):伸びないGDP成長率


中国国家経済統計局が「一般論として」行ったコメントでは、経済成長は今年の前期で「完全に常態に戻った」とのことだが、「しかし、世界政治および経済の状況はきわめて複雑で、国内の経済回復も確実とはいえない」とNSBのスポークスパーソンであるフウ・リングイは述べている。とくにこの数か月は、家計とビジネス・コンフィデンスに勢いがないと、同紙は指摘している。

ここでNBSが発表している各種経済指標を見てみよう。今年6月の輸出は前年比8.3%のマイナス、不動産の販売は6月前年比較では3.1%増だが、5月前年比較は12.7%もの下落だった。16歳から24歳までの今年第2四半期の失業率は21.3%に上っているが、都市部では6月の失業率が5.2%と比較的低いところもみられる。

前年同月と比べた場合の輸出量が下落してしまった

 


今年前半の不動産投資は、昨年同時期に比べて7.9%のマイナスで、商業用フロア面積当たりの売上は5.3%下落している。資本投資が冷え込むなかで、個人投資は0.2%低下し、そのいっぽう、政府の刺激策の効果と思われるが、インフラ投資は年初と比べると7・2%上昇を見せている。

ざっといって、なかには上昇している分野もあるが、全体的にはかなり悪い状況だろう。ムーディのアナリスト、ハリー・マーフィ・クルーズによれば、「中国の経済回復は『悪い』から『もっと悪い』に向かっている」ということだ。彼に言わせると「消費者は消費を避けて貯金するようになっている。企業は投資を回避するようになっており、海外の消費者はモノよりサービスに向かっているので、モノを売る中国は輸出が伸びないのだという。「中国にとって2023年は忘れたい年になるだろう」。

中国の70都市における前年同月の新築住宅価格比較


そのいっぽうで、中国内ではケータリングが21.4%の伸びを見せており、輸出に大きく貢献するEVが、第1四半期に35%もの伸びを示していることは忘れるべきではない。とはいえ、中国経済を全体としてみれば、やはり停滞していると言わざるを得ない。実態はいまもよくわからないままだが、大勢の死者を出したコロナ禍への対策が失敗だったことは間違いなく、そのツケはしばらく払わないわけにはいかない。