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東谷暁による「事件」に対する解釈論

ウクライナをめぐる米共和党の分裂:「私は彼に問いただしたい」発言の衝撃

ウクライナのゼレンスキー大統領が国連で演説したが、空席が目立っていてとても好評だったとは言えない。安保理の出席首脳はアメリカのバイデン大統領1人だけという異常事態で国連批判が加速しているが、それよりもウクライナをめぐる雰囲気が大きく変わってしまったことに注目すべきだろう。


ひとつひとつ検証すべきところだが、いまのところアメリカの共和党の動きだけが大きくとりあげられている。下院議長ケビン・マッカーシーは、ロシアのウクライナ侵攻を激しく批判して「虐殺」と呼ぶいっぽう、これ以上のウクライナ支援には疑問を投げかけ、ゼレンスキーについても「彼は疑わしい」とまでコメントしている。

では、共和党の内部はどうなのだろうか。日本での報道では「共和党の一部強硬派」などの表現をとっているが、その「一部」とはどれくらいで、「強硬」とはどれほど強硬なのだろうか。英経済誌ジ・エコノミスト9月20日号に「共和党ウクライナ支援を評価する」が載っていて、簡単なグラフを添えている。これだけで分かるわけがないが、何も提示しないで「一部強硬派」と言っているよりましだろう。


まず、グラフの下の2つを見てみよう。これは2022年の4月から5月の間に、ウクライナ支援の法案に対して、下院の共和党員196人が賛成していたが、それが1カ月後には149人に減ったというわけだ。もちろん、同じ内容の法案ではないから一概には言えないが、最初の高揚が少し冷めたことは分かる。

次に、上の2023年7月になってからの3つについての記述を見てみよう。3億ドルのウクライナ支援基金についての法案に対して、すでに下院の共和党員の89人が反対するようになっている。キーウ政府へのすべての防衛援助に対する禁止法案(いわゆる白紙法)に対して70人が賛成しているいっぽう、ウクライナ防衛レンドリース法の延長に対して下院の共和党員71人が反対している。


ちょっとわかりにくいが、ともかく「一部」とか「強硬」とかでは表現できない動きが共和党の下院には生まれているということだ。前出のマッカーシーの発言を引用しておこう。「彼(ゼレンスキー)は我らの大統領なのか? 何が何でも支援だということにはならない。私は彼にいくつも問い質したいと考えている」。国連のゼレンスキー演説の後で、マッカーシーは「彼は説明してくれた」とか述べて若干修正しているが、どちらが本音かは歴然としている。共和党は今回、ゼレンスキーの議会演説を断っている。

同誌は9月21日付の「ウクライナは長期戦に直面している:路線の変更が必要だ」で、ウクライナ戦略を根本的に見直す時期だと指摘してる。もう、短時間で反転攻勢が効果をあげで、その戦果を背景にしてロシアとの停戦交渉を展開するというのは難しいという。その理由の最大のものはロシアのプーチン大統領は停戦を望んでいないというものらしいが、それよりも大きいのはウクライナ支援に対するストレスが世界に広がっていることだろう。しかし、この短期間での勝負を主張していたのは、いったい誰だったのかを思い出すべきではないだろうか。アメリカは最初からある程度の時間をかけて、ウクライナの犠牲のもとにロシアの軍事力を削ぐことが目的だった。