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東谷暁による「事件」に対する解釈論

グラフで見る米大統領選の厳密予想;トランプがわずかリードだが、それはかなり確実だ

アメリカの大統領選はどうなるのか。これまではトランプ優位との報道が多かったが、ポルノ女優の発言を封じる費用の記載をめぐって有罪評決が出たことから、流れが変わったかのように報じるマスコミもある。しかし、いっぽう、有罪評決が民主党系法律家たちの陰謀だという批判が高まり、かえってトランプ支持者が結束する傾向も生まれている。ここでは英経済誌ジ・エコノミストが掲載している予測の一部を紹介したい。


あれこれ解説してしまうと長くなるので、敢えて予測のメソッドについては簡単に述べるにとどめる。要するにさまざまなファクターをどう位置付けして、場合によればバイアスをかけ、あるいは値引きして評価するようなこともやって、「バランスのよい予測」をめざすということである。ジ・エコノミスト誌はデータと処理法においてはかなりのレベルにあることは確かだが「これが絶対的だという予測はない」と謙虚な姿勢を示している。


まず、そうした謙虚な姿勢から出てくる、いま時点の総合的な評価が、「トランプがバイデンをわずかにリードしているが、それはかなり確実性が高い」というものである。2020年にバイデンが勝利した大統領選挙では、トランプが代理人を232人獲得したのに対して、バイデンは306人を確保して、かなりの優位を示して当選している。この結果に対してはトランプ信奉者の暴徒が議会占拠を企て、トランプが加担していた疑いがあり、裁判は続いていることは周知のとおりである。ところがいまや、数字はひっくり返ってしまった。トランプ300対バイデン238だというわけである。


単純にアメリカ全土で世論調査をして、何パーセントの支持があるかという報道は、各種の報道機関や調査機関が行ってきたが、実は、これはあまり有効ではない。副大統領を務め温暖化阻止の運動で有名なゴアは、ブッシュ息子に全土での支持率では勝利していたが、各州に振り分けられた代理人の数では負けていたので、大統領にはついになれなかった。ジ・エコノミスト誌も同じようなデータとグラフはここに示しているが、「支持率だけでは大統領になるには十分でない」とコメントしている。


さて、それでは何がもっと必要なのか。それは激戦州でなるたけ多く優位に立つことである。そもそも、2016年にトランプがヒラリーを下したのは、激戦州の多くで勝利したからだった。ここに示されたグラフは、ミシガン、ウィスコンシンペンシルベニアネバダアリゾナジョージアの6州において、いまの時点で、いずれが優位かをみたグラフである。ご覧のように、6州のすべてがトランプ優位であり、これが「もしトラ」の最大の根拠となってきた。ジ・エコノミストはさらに、これらの激戦州それぞれの勝ち負けがどれほどの波及インパクトを持つかもグラフにしているが、今回は省略した。


そして、陣取りゲームとなったとき、いまの時点でみればトランプ(赤系)とバイデン(青系)がどの州を制するかの予想がここにある図版である。それぞれの州の代理人の数を円の大きさで表現している。それで改めて集計すれば、やはりトランプ有利ということになるが、上の棒グラフでみるように、トランプが圧勝するというような予想ではない。しかし、白い部分がウィスコンシンとミシガンの結果しだいということで留保されており、それがバイデンに転んでもなお、トランプが勝つという予想になっている。もう「ほとんどトラ」といってもよい。


最後のグラフは時間によって、それぞれの候補の支持者獲得がどれほどの勢いを得ているかというグラフである。有罪評決が出たのでトランプは汚辱にまみれて没落していくかもしれないという報道は、やはり民主党系メディアに限られるのではないかと思わせるに十分なもので、これを見てもウクライナ支援の再開はしても、イスラエルハマスの停戦に誘導しきれていないバイデン政権に、勢いが生まれたということはないようである。この予想は、しかし、必ずしもアメリカと世界が幸福になるということではない。もちろん、バイデンに奇跡が起こってもそうだが、しかし、トランプのアメリカはトラブル満載の世界を意味している。