HatsugenToday

東谷暁による「事件」に対する解釈論

コロナ・ワクチンが完成目前か?;沸き立つ英国マスコミをのぞく

英国のメディアが、新型コロナウイルスのワクチンがうまくいきそうだと、沸き立っている。いうまでもなく、同国が誇るオックスフォード大学の研究グループが、かなりいいところまできたというのだから、意気が上がるのも当然だろう。この投稿は、その様子を伝える「速報」としてお読みいただきたい。

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 まずは、代表的高級紙ザ・タイムズだが、同電子版7月21日付は「オックスフォードが、コロナのワクチンを今年中を目指している」とぶち上げている。「ワクチンが今年中には使えるようになるかもしれない。オックスフォード大学の研究者たちは、昨日、里程標となる実験が喜ばしい結果を出したと述べている」。

 同大学のワクチン学教授サラ・ギルバートはザ・タイムズ紙に対して「これは素晴らしいニュースです。このワクチンは私たちが期待したとおりです。素晴らしい! これからすべきことは多いですが、でも、本当にこれは里程標に達したといえます」と、かなり興奮気味のコメントをしている。

 また、同大のジェンナー研究所ディレクターのエイドリアン・ヒルは、これから行われるアメリカ、ブラジル、英国、南アフリカでの治験の結果に依ることになるが、「今年末までにワクチンが使えるようになる可能性があります」と語っている。

 面白いのは、このニュースを聞いた同国のジョンソン首相の反応だが、「素晴らしいニュースだと思う」とツイッターしたうえで、「これは保証されたわけではないし、私たちはまだこれからの検証が必要だ。でも、これは正しい方向への重要なステップだ」と、やや腰が引けている。専門家のいう集団免疫政策を信じて大失敗をしたので、注意深くなったのかもしれない。

 英経済誌『ジ・エコノミスト』電子版7月20日付は、「ワクチンの新薬がコロナを叩く希望を掲げる」という記事を掲載している。同じようにエイドリアン・ヒルなどがコメントしているが、同誌はいつものように「理屈」をちゃんと入れてくれている。

 それによると、ワクチンとして重要なのは、第一に安全であること、第二に効果があることだそうで、今度の実験の意義は第一のステップをほぼ超えたと思われることにあるという。次のステップが世界的規模で行われる治験なのだ。1万人規模の英国内の治験は終わりつつあり、これからブラジル5000人、南アフリカ2000人……と拡大されていく。

 こうしたコロナ・ワクチンの開発競争についてのニュースを聞くたびに、すぐに考えてしまうのが、ものすごいビジネスになるが、それはどのようにして行われるのかであり、もうひとつが国際政治的な意味があって、いわばワクチン地政学的にはどうなのかということである。

 ビジネスについては英国のアストラゼネカ社がオックスフォードと提携しているが、ザ・タイムズが、まずは英国政府が100万人分の買い上げということになりそうだと示唆している。これは体質的に合わない人を薬害から守るためということらしいが、ちょっと詳しいことが分からない。

 さらに、海外に売るときはどうなるのかについては、前出のヒルの発言を紹介している。「彼は次のように示唆した。1人分の予防接種は2.5ポンドより低く抑える。アメリカは3億5000万人分必要になるから、これは10億ドルに達することになる。もっとも、これはトランプが、すなおに英国製ですませた場合のことである。

 ビジネスやウイルス地政学については、追加を書きたい。また、繰り返すが、どうぞこの投稿はあくまで「速報」として読んでいただきたい。