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東谷暁による「事件」に対する解釈論

バイデンの経済政策を米国民は評価していない;最新の世論調査はトランプに負けることを示している

アメリカのバイデン大統領は本当に来年再選できるのだろうか。いや、それどころか立候補できるのかも怪しくなっている。バイデンの経済政策についての世論調査が発表されたが、もうこれだけで再選は無理だと思わせる内容だった。経済政策に加えて、歴史上最高齢の80歳、そしてウクライナ戦争やイスラエルハマス戦争への関与の失敗を考えれば、なぜまだ候補とされているのかも不思議になってくるほどだ。


英経済紙フィナンシャルタイムズ11月13日付が「たった14%の米国有権者だけがバイデンの政策はよかったといっている」を掲載した。フィナンシャル紙とミシガン大学が共同で行った世論調査で、タイトルでその悲惨さが推測できるが、決定打となったのは巨額な財政支出を繰り返した結果、インフレが加速して、一時は9.1%ものインフレ率を記録し、国民生活をかなりの度合いで圧迫したことだった。

インフレになっても給料が上がれば大丈夫などと、のんきなことをいっている論者には分からないだろうが、まずはインフレが先行して、生活への脅威となって国民を圧迫する。それだけで政治的にはかなり苦しい事態が生まれる。1兆倍とか1億倍のハイパーインフレを論じるより、まずは8%くらいを論じるべきなのだ。さんざんFRB金利を上げてインフレ率は3.7%まで下がったが、FRBが目標とする2.0%よりはかなり高い。まずは世論調査のデータを見よう。

米国民の多くがバイデン政権下で経済的に悪化したと答えている(ft.comより)


「調査によれば約70%の有権者がバイデンの経済政策はアメリカ経済を傷つけただけでなく、なんらよい結果は生まなかったとしている。この70%のうちの33%はバイデンの政策は『ひどく経済を損なった』と考えている。26%の人だけが彼の政策は助けになったと考えている」

他の数値も見ていこう。財政にかんして何が最も問題だったかと聞かれて、回答者の82%が物価上昇だったと答えている。回答者の4分の3は物価高がこれからの6カ月のアメリカ経済に重大な脅威となると答えている。ミシガン大学エリック・ゴードン教授は「民主党共和党、独立系によらずすべてのグループが、米経済にとって最も大きな脅威は物価高だと述べています。これはバイデンにとってバッド・ニュースです」。

国民の4分の1だけがバイデンは経済をよくしたと思っている(ft.comより)


インフレの脅威に対して、65%の有権者が必需品ではないもの、たとえば休暇とか外食を減らしたと答えている。いっぽう、52%の有権者が食費や毎日の必需品においても消費を減らしたという。「たとえ雇用が増えても、バイデン政権時代の3年間に経済成長があっても、経済政策のデータに対する否定的な見方が生まれているのである」。調査に回答した人の半分以上、52%が、大統領は経済のために何をしたかを『ほとんど知らない』あるいは『まったく知らない』と答えている。

こうして見てくれば、今回の世論調査は、もう間違いなくバイデンはトランプに負けることを示しているように思われる。少し前にも、バイデンがトランプに勝利する原因となった4つの州の世論調査が行われたが、そのうち3つのケンタッキー、ヴァージニア、オハイオの州ではいまやトランプのほうが有利になっている。そして先ほども触れたが、ウクライナ戦争とイスラエルハマス戦争でのバイデンのホーキッシュ(タカ派的)な姿勢はすべて裏目に出ている。

国民の多数派がバイデンは仕事をよくやっていないと言っている(ft.comより)


もうひとつ、今回の世論調査から見ておこう。有権者の40%がバイデンの仕事ぶりを評価していると答えているが、いっぽう、59%が評価していないと答えている。経済政策への取り組みについても、36%がよくやっていると答えているが、61%がよくやっていないと答えている。

もちろん、まだ大統領選挙の結果がでるまで約1年あるから、いまはその通過点と見ることもできないわけではない。しかし、いまアメリカ国内は補助金のリバウンドが起こって消費は悪くなく、また懸念された金融機関の破綻も仮想通貨以外ではそれほど深刻ではないように見える。その時点で、これほどバイデンの経済政策「バイデノミクス」の評判が悪いというのは、9.1%のインフレがいかに国民に恐怖を与えたかということだろう。