イスラエル軍はガザ市に達した。いまやハマスと直接戦闘を続けていると報じられている。すでに予想されていたように、これから「厳しく長い」戦いが続く。その結果が出るのは先のことだが、まちがいなく膨大な数の犠牲者が生まれ、世界からの人道的な観点からの批判は高まり、ネタニヤフ首相やバイデン大統領の責任を問う論調も強くなるだろう。
イスラエル軍の地上部隊が、ガザ市郊外に達したことを最初に伝えたのは、イスラエルの有力紙ハーレツだったらしいが、すぐにカタールのアルジャジーラが同内容を繰り返し、10月30日の現地時間午前8時58分にはワシントンポスト電子版が「イスラエル軍ガザ市に本格的に進攻」を掲載した。
「イスラエル軍のタンクと歩兵はガザ市郊外に侵攻し、ガザ地区の北部と南部をつなぐ主要道路のひとつをただちに封鎖した。このガザ市侵攻の最大の目的は、人口が最大の地域を包囲することだった」
これから悲惨な戦いが続けられることになると思われるが、おそらくイスラエルは10月7日のハマスによる急襲への報復を超えようとしている。これを機会にガザ地区からハマス勢力を一掃し、人道支援を介してパレスチナ人をエジプトや他の中東諸国に追いやって、アメリカが主張してきた「二国による解決」ではなく「一国独占」を目指すのではないか。しかし、それは他のイスラム系勢力による新たな報復と攻撃を生み出すことになるだろう。
その前に現出する光景は、膨大な数の犠牲者が横たわる悲惨なもので、たとえそれをイスラエルが「勝利」と宣言し、アメリカが「すばらしい時代」といったとしても、ネタニヤフ首相は失脚し、すでにイスラエルへの過剰な支持によって、支持率が下落しているバイデン大統領は来年の大統領選に敗北するだろう。
すでに軍の幹部に責任をなすりつけようとしたネタニヤフは、イスラエル人の支持を失い、強引なイスラエルの作戦を支援して犠牲者の山を築くことを是認したバイデンは、いかにアメリカ国内のイスラエル・ロビーに支持されたとしても、国民の半数以上の支持はもう得られないだろう。
ガザ市を中心とする地上戦はまだ始まったばかりで、その展開には多くの不確実性を含んでいるが、すくなくとも11月19日に会談したバイデンとネタニヤフが思い描いたような、戦後はやってこない。それぞれ、抱えている問題は異なっていたが、いずれの場合も、どんなことをしてでも国内の圧倒的な支持を得ようとする欲望が、最初から悲惨となることが分かっていた戦争へと向かわせ、おそらく皮肉なことに国内の支持を失うのである。
【追加:11月2日】ちょっと目を離していたが、すでにバイデンは10月26日のギャラップによると支持率は37%で、前月の41%から4%下落。また、イスラエルのシンクタンク「イスラエル民主主義研究所」が10月23日に発表した世論調査で「ユダヤ人の市民で今の政府を信頼する」と答えたのは20%にすぎず、6月の28%から大幅下落している。もちろん、これらはまだ序の口だろう。