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東谷暁による「事件」に対する解釈論

ロシア軍は兵士も大量に不足している;いま進行中の外国からのリクルート

ロシア軍は武器が枯渇しているとの情報は、すでに多くのメディアが伝えている。今度はさらに、武器だけでなく前線の兵士も不足していて、これから数カ月は動きが取れないだろうと、英国の情報機関が指摘している。では、ロシア軍はいま何をしているのだろうか。どうやら、兵士の募集をやっているらしい。しかも、中央アジアの国々の若者たちを、それらの国では違法になるのを承知で、リクルートするところまで追い詰められているというのだ。


「ロシア軍はウクライナ東部で身動きが取れなくなっていて、これからの攻勢に出るための兵士を十分に補充できないだろうと、英国の情報機関の関係者は語っている」と、英紙ザ・タイムズ12月12日が報じている。同様のニュースは世界中の報道機関も流していて、プーチン大統領の窮状も想像するに難くないのだが、もちろん、このまま手をこまねいて見ているわけはない。

ザ・タイムズによれば、英国国防省ウクライナ戦争の情報をアップデートするなかで、プーチンウクライナ軍の同国東部における防衛線を、突破できるのに十分な兵士数を捻出するのに必死だということである。先週、ロシア政府のスポークスマンは、この戦いの目標はいまも変わっておらず、ウクライナ東部のドンバス地方を「解放」するために努力していると述べているという。

The Timesより


しかし、どんなに目的を維持するのだと主張しても、それに見合うだけの軍隊がなければどうしようもない。ルハンスク州のバフムートに典型的なように双方が一進一退の競り合いを続けるしかなくなる。「ロシアはいまもドネツク、ルハンスク、ザポリージア、そしてヘルソンの諸州を占領下に置くことを目指している。いまのところはロシア軍はドネツクを最優先にしているだけなのだ」と英国防省は述べているという。「ロシア陸軍はこれからの数カ月の間も、戦術上の優位を持ちえないだろうと思われる」。

すでにプーチンはさる9月に部分動員をかけて、前線の戦死者や負傷者にかわる兵士数万人を供給した。さらに、ロシア国防省は徴兵制度によって30万人以上の兵士をリストアップする計画を進め、それは10月には完了したと主張している。プーチンは5万人の徴兵した兵士をウクライナとの戦場に増員したと述べているが、ロシア政府はいまも戦争を継続するために、必死に兵士を募集しているのが現実なのである。

The Timesより


注目されているのが、ウズベクキルギス、タジクの言語でモスクワのバスに兵士募集のポスターが貼られていることだ。そこには、ウクライナと戦う義勇軍に参加することを条件に、ロシアの第一級市民権を与えると書いてあるという。このバスは希望者を乗せて街の中央にある移民センターに向かうが、そこには外国籍の希望者のための軍人リクルート事務所が、この9月より設置されているのである。

ウズベキスタンキルギスタンは、ロシア政府との関係が親密な国だが、国民にはロシア軍に従軍してウクライナで戦ったら、本国では犯罪として起訴されると警告しているという。しかし、それでもなお、多くの中央アジアの移民や二重国籍者たちが、ロシアのウクライナ侵攻以来、ロシア軍に登録して、実際に戦場で戦ってきた。


これまでのほとんどの戦争が、戦争当事国以外の直接および間接の支援や援助、あるいはビジネスとしての物資の提供を受けてきた。いまさら驚くには値しないかもしれない。しかし、ロシア軍がイランからドローンを輸入し、中央アジアの若者たちを義勇兵という名の傭兵にして戦っているだけでなく、ウクライナもまた富裕者たちの兵役逃れを起こしながら、中心的な武器のほとんどをアメリカから供給してもらい、そのアメリカは本国での銃弾類が減ったので、韓国から輸入しているというのだから、もはや構図は立派な世界戦争、「第三次世界大戦」も同然なのである。

ジ・エコノミストの記事は、一見、どこか牧歌的なエピソードで終わっているが、これも戦場に若者を引き付ける、戦争継続の努力であることは間違いない。「ロシア軍はアコーディオン、ギター、ハーモニカ、そしてバラライカなどの楽器を寄付してくれるように呼び掛けている。この寄付の目的は『ロシア軍兵士の士気を高め、連帯感を維持し、英雄的行為を奨励し、そして道徳感と精神の慰安を与える』ことにあると、当局は述べている」。