HatsugenToday

東谷暁による「事件」に対する解釈論

黒川検事長の辞任はこれでいいのか;辞めるべきは別の人だろう

なんとも後味の悪い出来事である。黒川検事長はやめることになったのだから、これでよかったとは、とても言えない。そもそも、これまでのルールを自分の都合で破る人間がいて、そのためこの人が居残ることになっていたわけである。本来、やめるべきは、自分の都合で勝手な差配をしようとしていた人物、つまり、安倍首相ではないのか。

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最終的には、やめない人間をスキャンダルで追い込むという方法は、これまでも幾度となく行われてきた。そしてまた、ほかに方法がなければこれしかないということも、わたくしはあっさりと認める。しかし、まず「賭けマージャン」というのが何ともせこい。また、この「賭け」の部分についてまだ明らかでない。さらに、ご禁制の「3密」やっていたというのは、本来の重大さに比べて、あまりにも比重が低い。

 スキャンダルで追い込むということでは、田中角栄の辞任を思い出すが、この場合は田中の土地ころがしという、まさに首相としてふさわしくない事実を提示することで、この人物はやめるべきだという同意が国民に生まれた。(田中はロッキード事件で辞めさせられたと信じ込んでいる人が多い。とくに若い人に多いが、これは間違いである)。

 しかし、安倍政権の独裁的性格を叩くのに、「3密賭けマージャン」というのは、ちょっと寂しい気がする。そもそも、マージャンの面子が全部新聞記者だというのもあきれる。たぶん、情報漏洩もこの人たちだと推測されるから、マスコミの「自炊」だということになってしまうではないか。

 やっぱり、黒川の脱法的定年延長を批判するには、正々堂々、安倍首相を叩かなくてはならないはずだった。そしてまた、政治家たちはもうこの暗愚の帝王を退ける方法を考えているべきだった。「あの時代の首相で記憶に残るのは、お友達パーティ、お仲間優遇政策、おとりまき人事、あ、それからアベノマスクだな」じゃ、いまの時代があまりに可哀そうというべきだろう。

 勘ぐれば「3密マージャン」なんか口実に過ぎないのかもしれない。さすがに、自民党のなかも、もうやってられないという雰囲気なのかもしれない。なんだっていいから、この人事はやめさせておこうという空気があって、こうした小事件が見つかったから、「じゃあ、これでやめてもらおうか」ということだったのかもしれない。

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3密マージャン発覚は「突然」だったとか、「2回あった」とか「4回あった」とか、「司法のトップのやるまじき行為」とか報道されているが、こんなのほんとは勝手にやってろ、てなレベルのものではないのか。それより、私がうんざりしているのは、こんな状態になっても、自民党内にはなんら反乱の兆しがないことである。あるのに隠されているのなら結構だが、どうもそうではないようだ。

 国民が絶望するべきは、出世主義者の3密マージャンなどではなく、政治の堕落、自民党そのものの堕落ではないのか。もう、こんなことしか残っていないというのが実態ではないのか。「若手」とかからでてくるコロナ対策も、相変わらずの予算アップ、金額のみの「おねだり」だけなのだ。

 余計な話だが、平時のような需要喚起が必要なのではないのに、あいかわらずコロナ以前と同じ主張をしている。目の前の事態は、需要も供給も下落し続ける現象であって、何かの一つ覚えばかり言っている「若手」政治家などは、安倍首相同様、アベノマスク並みだということに、なぜ気がつかないのか。こっちのほうが、よほど「日本はおしまい」の予兆だと思う。