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東谷暁による「事件」に対する解釈論

米国ハイテク株の下落は世界を巻き込む;トランプ経済は救いようのないアリ地獄に向かっている

いま不思議な光景が世界に広がっている。アメリカを再び偉大な国にすると叫んでいた人物の政策のほとんどが裏目にでて、アメリカはかつてない悲惨な状況に転落しつつある。経済政策は自国を苛み、外交政策も孤立を加速し、この国の信頼が下落している。そう簡単にはいかないと思うが、ヨーロッパでは自分たちだけでロシアから防衛しようという機運が生まれている。まずはこの人物がいちばん不得意としている経済において、起こっていることを見よう。ハイテク株の暴落だ。


ブルームバーグ3月10日付の「米ハイテク株、時価総額1兆ドル消失―メルトダウンの様相強まる」は次のように述べている。「10日の米株式市場でハイテクは、2022年以来の大幅安となった。米経済がリセッション(景気後退)に向かっているとの懸念が強まり、長期にわたり市場をけん引してきた銘柄が売られた」。もう少し具体的に見てみよう。

「ナスダック100指数は3.8%下落し、時価総額1兆ドル(約147兆円)余りが消失した。一方、ハイテク大手7社「マグニフィセント・セブン」で構成するブルームバーグマグニフィセント・セブン指数は5.4%下げ、昨年12月の高値から下落率が20%を超えた。テスラの株価は15%急落し、年初来の下落率は45%に拡大した。一方、エヌビディアは5.1%下げ、2カ月で1兆ドル余り時価総額が失われた」


こうした株価の下落は、本来、ハイテク株にあった過剰期待の剥落であって、トランプの政策のせいではないというかもしれない。しかし、株価全体が急激に上昇したその何割かは、トランプが大統領になってから生じたもので、このトランプ政権に露骨に見られたハイテク業界の大物の政府機構への動員は、ほかならぬトランプの「売物」だったのだ。そしてまた、上の引用部分にありテスラはイーロン・マスクの会社であり、これまでマスクがトランプ政権に参画したことで、かなりの関連株が上昇したことは自明だろう。

「今回のハイテク株急落は、トランプ政府高官やトランプ大統領自身が先週末、米景気が減速するとの見通しを示唆したことがきっかけだ。トランプ氏は昨年の選挙戦を通じて、就任初日の関税発動を約束し、成長を阻害することなく減税の財源になると主張していた」(同紙)


こうした急速な株価下落は、いわゆる「トランプ・プット」への失望によるものだとの報道が多くなっている。英経済紙フィナンシャルタイムズ3月11日付は「ウォール街はトランプ・プットが下落相場を支えるとの期待を失いつつある」は、次のように報じている。「多くの投資家やウォール街の銀行は、市場が激しく反応すればトランプ大統領が最終的に最も厳しい関税による威嚇や連邦政府の支出削減を撤回すると予想していたが、市場が動揺するなかで、トランプ・プットへの期待は消えつつある」。

呆れた話だが、これまでの株式市場のバブルが危なくなってきたら、トランプ様が救ってくださると思っていたが、どうもそうしてくれそうにないと分かってきて、株式市場全体が下落を認めざるを得なくなったというわけである。こうした悲惨な傾向はこれからも続くのだろうか。その前に、もう少し世界の経済報道を見ておこう。まず、株式市場以外の経済の世界はどう反応しているのだろうか。


「暗鬱たる気分の落ち込みは市場に限ったことではない。ゴールドマン・サックスモルガン・スタンレーは関税や貿易相手からの報復を懸念しており、アメリカの経済成長見込みを引き下げている。デルタ航空も月曜の夕方、経済の『不確実性』が同社の事業に打撃を与えたと警告し、第1四半期の売上と利益の見通しを大幅に下げた」(同紙)

この悲観的な見方は世界市場に波及している。フィナンシャル紙3月11日付の「アメリカの景気後退懸念で世界市場は下落拡大」は、「ドナルド・トランプ大統領の不安定な関税制度とアメリカの景気後退への懸念により、世界経済の健全性に対する投資家たちの懸念が高まり、株価は2日連続で下落した。中国、日本、オーストラリアの株式市場は3月11日、いずれも下落している。日本のTOPIXと輸出企業中心の日経平均株価はそれぞれ1.9%と1.6%下落した。韓国のKOSPIは1.3%下落して、オーストラリアのS&A/ASXも0.8%の下落を見せた」。

こうした現象はあまりに当然の結果なのでやや面白味を欠くかもしれないが、これで終わりではない。トランプがいまのデタラメな経済政策をやめないかぎり(おそらく、やめられなくなっている)、アメリカの経済を著しく破壊し、そして世界経済へのそのマイナスの影響を拡大していくことになるだろう。そのうちにイーロン・マスクはトランプ政権から離脱すると思われるが、それがひとつの転換のきっかけになる可能性はあるかもしれない。おそらく、それ以上の可能性として、マスク離脱後も、アメリカ経済の混乱と転落は続くはずだ。