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東谷暁による「事件」に対する解釈論

モジタバ師は意識不明で指導していない;いまごろメモをスクープしたタイムズの見識

イランの最高指導者モジタバ・ハメネイは意識不明の状態にあり、政務を担うことはまったく不可能だと英国紙ザ・タイムズが報じた。ニュースは世界中に流れたが意外に衝撃は少なく、すでにこれまでの報道で十分予想できたためと思われる。このニュースはアメリカとイスラエルの情報機関がもっている情報を基にしたとされるメモが基になっていて、事実かどうかは不明なままであっても、両国はイランの現政権の非正統性を強調する材料に用いるために、意図的に流したものと推測される。


英紙ザ・タイムズ4月6日付は「イランの最高指導者は『コムにおいて意識不明状態で治療を受けている』」と、ややそっけないタイトルでモジタバ・ハメネイ師が職務能力を持たないままに、聖地とされるコムで治療中であることを報じた。この情報は「アメリカとイスラエルの情報機関の情報によるもの」とみられ、「タイムズ紙が入手したこのメモには、最高指導者の居場所が初めて明かされており、テヘランから南に87マイル(約140キロ)にあるこの都市はシーア派イスラム教徒の聖地とされている。「モジタバはコムで重篤な状態で治療を受けていて、政権のいかなる意思決定にも関与できない」とメモには記されているという。


今回の「スクープ」は、これでほとんどすべてといってよい。あとは、コムが聖地であるだけでなく、まだ終わっていないアリー・ハメネイ師の葬式が行われることになっている場所であるが、葬式の日程はまだきまっていないとか、モジタバがこのような状態であるかぎり、彼がイランを支配しているわけではないとかの、古いネタの繰り返しばかりだ。そして「イスラム革命防衛隊が事実上支配していて、モジタバは沈黙の傀儡もしくは名ばかりの存在だとの可能性が高い」という、すでに使い古された憶測を付け加えている。(このブログの「トランプは誰と停戦交渉をしているのか?」を参照)


おそらくこのニュースの元ネタは、他の報道機関にも何らかの条件付きで提示されたと思われるが、掲載してある程度のスペースを割いた「一流の」新聞は、ザ・タイムズだけだったということなのだろう。しかし、それにしても今の段階になってから、すでにさんざん推測されたネタをスクープ扱いにして、しかも、その根拠が「アメリカとイスラエルの情報機関の情報をもとにしたメモ」というのは、ちょっと伝統のロンドン・タイムズの名が泣くだろう。しかも、誰のメモなのかも書いていない。そのメモのブレたような写真でもいいから付帯して、もう少しお化粧をしてほしかった。


わたしはこのニュースが、完全なフェイクで根拠のないものだとは思わない。モジタバはいずれにせよ目立つところに出てくることは危険すぎるから、出てこないことは不思議でもなんでもない。しかし、本当に権力を握っているとすれば、何らかの形でのコメントを自分の名前で世界に発表するだろう。逆にいえばアメリカとイスラエルができる「攻撃」は、爆撃以外にはこんな情報漏洩くらいしかなくなっているということを物語っている。このままイランの国土を爆撃して焦土とし、生き残った政府の幹部たちを暗殺していっても、自分たちの正当性は生まれてこない。

 

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