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東谷暁による「事件」に対する解釈論

トランプの半グレ的取引は続く;「日本は深刻な米不足なのに、アメリカ米を買わない」と脅しを入れてきた

トランプ政権は関税政策をめぐって、ほとんど化け物屋敷のようになりつつある。ちょっと先に歩いていくと、突然、別の化け物が現れて脅かしてくれる。また、先にいくとさらに別の化け物が飛び出してくるのだ。これでは超大国の経済政策などとは言えないのだが、マスコミはいちおうそこに何かの思想や配慮があるのだろうという想定のもとに報道するしかない。次の記事の紹介も、ほとんど化け物屋敷のパンフレットのようなものだ。

次に繰り出すお化けは何なのか?


英経済紙フィナンシャルタイム7月1日付は「アメリカ政府はトランプ大統領の関税延期期限前に合意を確保するため貿易政策の焦点を絞りつつある」を掲載しているが、この記事を読むと「不確実」「不明」さらには「不透明」がつぎつぎと出てきて、そんなに不確定で不明で不透明なら記事なんかにしなければよいのにと思わせてくれる。しかし、この化け物たちがつぎつぎと出てくることを示して、いまのトランプ政権の乱脈ぶりを示唆してくれているといえないこともない。

「トランプ政権の貿易担当トップたちは、諸外国との包括的互恵協定への野望を縮小して、差し迫った関税の再導入を回避するため、より範囲の狭い協定を追求しつつある。トランプ政権の関税協議に詳しい4人の関係者によれば、アメリカ当局はトランプ大統領が最も厳しい関税を再び課すと明言した7月9日までに、合意を急ぐなかで最も関係の深い国ぐにとは段階的な合意にしようとしているらしい」

アメリカ国民はトランプにひきずられて動物化してしまった


こうしたより範囲の狭い断片的で新たな協定を追求しているのは、トランプ大統領が4月2日に発表した広範囲にわたる「相互関税」の90日間一時停止期限内に90件の貿易協定を締結するという、ホワイトハウスの宣言からすれば、大きな後退を示すものにほかならない。しかも、そのいっぽうで、控えめな合意にいたるチャンスも、トランプ様は与えてくださるとのことで、「関係者によると、こうした限定的な協定に同意した国は、相互関税は免除されるが、めんどうな協議が続く間は、既存の10%関税が課されるようだ」という。

どうだ、おれ様のパワーはすごいだろうと脅していたが、どうも自分の方にも損害が回って来ることが明らかになってきたので、脅しのやり方を変えて、おまえが恭順の意をしめせば悪いようにしないから「合意いたします」と言え、というシナリオに変えようというわけである。あいも変わらぬ、不良時代に覚えたチンピラのアコギなやり口を振り回してみせているだけのことなのだ。先週も、カナダがデジタルサービス税を撤回したところ(おそらく、そう脅迫したのだろう)、よしよし、カナダとは合意したからイジメは終わりにしてやろうといっているのは、安っぽい不良の常套の手口である。

こんどはコメを買え、なのか? もう十分買ってますよ


この意味での「合意」ならば、英国との貿易協定成立があったし、また、中国とは暫定休戦状態だが、いずれにせよアメリカが主導的に建設的に何かを提示して、それが意味と信頼性のある合意に至ったというわけではない。同紙は「世界の外交交渉担当者たちは、いまや、次に何が起こるのかを理解しようとしている」と述べているが、その裏をかくのがお化け屋敷およびケチな不良の焼き入れだから始末が悪い。同紙は「協議に詳しい関係者たちは、アメリカが後日あらたに課す可能性のある、新たな分野別の関税の見通しの悪さが協議の妨げになっている」と書いているが、半ぐれ大統領をまじめに相手にすれば翻弄されてこうなるだけのことなのだ。

日本について書かれた部分を紹介しておこう。トランプ大統領は自分のSNSであるTruth Socialに、日本とは数週間におよぶ貿易交渉にもかかわらず、日本には新たな関税率が課されるだろうと書いた。そして、「私(トランプ)は日本をとても尊敬しているが、日本は私たちのコメを受け取らないくせに、深刻なコメ不足に陥っている」などと書いている。さらにトランプは「だからアメリカ政府は日本に手紙を送るつもりだし、日本を今後何年も取引の相手であることを望んでいる」などと述べている。ほとんどゴロツキの脅し文句というべきだろう。日本は米を輸入しているし、アメリカからは最も多く輸入している。ドナルドじいさん、ガタガタいうなら減反を完全廃止にして、アメリカ分(約38万トン)をゼロにしてもいいんだぜ。

トランプの世界は、実は、不安定なお化け屋敷だ


同紙によれば、前述の90日間の猶予期間が終わったあとに、予定通りの措置をとるのか否かも不透明だという。あれも不明、これも不確実、そしてこれは不透明なのだが、分からないことはまだある。この5月に、トランプ大統領が「緊急権限」を行使して「相互関税」を課したこと自体が違法であるとする判決がすでに2件ほど下されている。「政権は控訴したが、前出の協議に詳しい関係者によると、この判決は同政権が行うディールにさらに不確実性を注入した」とのことである。