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東谷暁による「事件」に対する解釈論

トランプの爆撃戦略ではイラン政権を倒せない;米国当局も顧問団も効果については懐疑的

トランプ大統領はイランへの介入を強化するかどうか選択を迫られている。たとえ投入する兵力を増強しても、イランの今の体制は崩れないと見られている。そして、そもそも現時点での中東における米軍の兵力では、これ以上の介入は無理だとされている。そのいっぽう、トランプの国際政治における成果は、実はまったくない。ウクライナ失敗、ガザ失敗、イラク核兵器除去失敗、グリーンランド奪取失敗、ベネズエラ大統領誘拐による資源増強失敗、そして何より対中国外交失敗。もう新しい戦争の開始しか人気取りの手段はないのである。

政権崩壊をうながすには厳しい地上戦が必要だ


米経済紙ウォール・ストリート紙1月15日付は「トランプは米当局者にイラン大規模攻撃では政府を転覆させられないと助言された」を掲載して、民主化を要求するイランのデモを支援して軍事的介入を増強し、いまのハメネイ体制を崩壊させることはできないと外交当局者にいわれたと報じている。おそらくすでにソ連・東欧崩壊のさいと同じく、アメリカはイランに扇動を行うエージェントを入れていると思われ、彼らからの情報も分析しての助言だと思われる。

「米国当局と中東諸国はホワイトハウスに対して、大規模な爆撃作戦では政権が崩壊する可能性は低く、むしろ紛争を拡大する危険性があると伝えた。いっぽう、小規模な攻撃は抗議活動参加者の士気を高めることはできるものの、最終的にはいまのイラン政権による弾圧の勢いを制止することはできないと米当局者は述べたもようだ」

空母エイブラハム・リンカーンから爆撃機を発進させるのか?


大きな誤解として、爆撃を続ければ攻撃された政権は崩壊するという思い込みが世界中に蔓延している。特に日本の場合は太平洋戦争で大規模な爆撃によって「終戦」させられたと思い込んでいるので、この神話は根強い。しかし、たとえばハーバード大学のスティーヴン・ウォルト教授などが指摘しているように、さまざまな研究は、爆撃はむしろ攻撃された側を鼓舞することが多く、少なくともそれだけでは屈服させるのは不可能であることを示している。日本の場合は爆撃に加えて、ソ連の参戦と原爆が「終戦」を決意させた。しかし、政権変更を伴う戦争には徹底的な地上戦が必要であり、日本の場合ですら凄惨な沖縄戦をへている。

困ったことに同紙によれば、トランプはどのような行動を取るかについての最終決定を行うことなく、大規模攻撃を命じた場合に備えて兵力を配置するよう要請したという。「大統領とそのチームは、イラン国内での政権による抗議行動者の殺害が続けば、重大な結果を招くだろうとイラン政権に伝えた」とホワイトハウスの報道官カロリン・リービットは15日、記者団に語った。「これから何をするのか知っているのはトランプ大統領だけであり、大統領の考えを理解しているのはごく少数の顧問団だけだ」。

 

口はよく回るが、実のない報道官のコメント


すでに報道されているように、アメリカは14日にすでにイラン政府が800人を処刑するという計画を把握したが、実際に処刑は行われなかったとトランプはSNSに投稿している。リービットはどのようにしてこの情報を得たかは答えなかったという。ここまでのウォール・ストリート紙の記述は、すでに同紙の日本版で知ることができる。以下は日本版が割愛した部分である。

「リービットはトランプ大統領が最近イスラエルベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談したことを認めたが、その具体的な内容は明らかにしなかった。会談の日時についても発表していないが、当局者によれば、この会談でイスラエルが攻撃の可能性について懸念を表明しているとのことである。この報道に先立ち、NBCはトランプ大統領の顧問たちが、アメリカの攻撃後によっていまのイラン政権がすぐに崩壊するとは、保証できないと述べたと報じていた」

レイムダックになるのも、そう遠くないかも


そもそも、なぜトランプ大統領は次から次と新しい武力行使、あるいは新しい対外圧力を行おうとしているのだろうか。それは簡単なことで、先ほども触れたようにトランプはこれまで、対外政策においてひとつも成功したものがないからだ。それは第一期政権でも同じで、対中国、対ロシア、対北朝鮮において何ら見るべき成果をあげていない。それはトランプの性急な性質にもよるが、トランプ政権の成立過程を思い出せば納得できることが多い。

いまや米国民における人気に陰りが出てきただけでなく、彼の支援者たちであるMAGA(アメリカを再び偉大にしようと唱える国粋的連中)やTECH(ハイテクを中心とする大企業家たち)のグーループからも批判や離脱者が出ている。歴史を振り返ってもすぐに分かるように、大衆人気と社会の混乱のなかから誕生した独裁者というのは、実は政権基盤が弱いので、大衆と支持者を引き付けておくために、派手な政策や危険な軍事作戦に活路を見出そうとする。トランプもその例外ではないということなのである。