ウクライナのF16を撃墜したのは、自国軍のパトリオット・ミサイルだとの疑いが持ち上がっている。そのいっぽうで、ウクライナ空軍のミコラ・オレシュク中将がゼレンスキー大統領によって役職を解かれたことが明らかになった。ウクライナ軍が調査しているF16の墜落原因についての情報の中に、「友軍による撃墜」であったことを示す情報があったことから、下院議員がこの資料をに基づいてウクライナ軍を批判、それに対してオレシュク元中将がソーシャル・ネットワークで「ロシアの扇動」に加担するものだとして非難している。【増補部分は文末に】

英経済紙フィナンシャル・タイムズ8月31日付は「F16の墜落でトップパイロットが殺された後、ゼレンスキーは自国空軍のトップ級を首にしている」を掲載した。もちろん、ここには不確定な情報が混じっていることは十分考えられる。しかし、まずは同紙に従ってF16墜落と空軍中将解任をめぐる、いまの事態を追跡してみよう。
米国産のジェット戦闘機F16が墜落してから5日後、ゼレンスキー大統領はウクライナ空軍のミコラ・オレシュク中将を解任した。ゼレンスキーはその理由について述べていないが、ソーシャルメディアのテレグラムに投稿されたビデオによれば、彼は「司令官クラスを強化して、国民を守り、兵士たちすべてを守るために行ったと語っているという」。

これだけでは何のことか分からないが、すでにこのブログで紹介したように、ウクライナ政府はF16の墜落について「パイロットや整備員のミスから、友軍の攻撃まで」あらゆる可能性を探っていることになっていた。そのなかで、「友軍の攻撃」についての情報が、「防衛および情報委員会 下院議員メンバー」であるマリアナ・ベズラの目にとまり、そこでベズラ議員が空軍に問いただしたところ、オレシュク中将が不正行為と隠蔽工作にいたったということらしい。
「ベズラ議員は下院議員の資格で、F16墜落の秘密情報について何度もアクセスしたが、この情報は公開されていなかった。ベズラ議員の見るところ、F16は8月26日月曜日にアメリカ製のパトリオット・ミサイルで撃墜されたと思われる。このパトリオットは、ウクライナ領内のエネルギー施設を激しく攻撃しているロシアのミサイルやドローンに反撃していた」

ベズラ議員の空軍に対する批判は、今回の「誤射」に留まっていない。「今回の友軍による誤射はすでに3回におよんでいます。ただし、以前の2回についてはすでに公表されているわけなんです」。こうした批判に対してオレシュク元中将はテレグラムで「彼女の非難は『ロシアのプロパガンダ』を助長しているだけだ。私は何も隠していない。アメリカも調査には協力してくれている」と反論している。
この2人の主張のいずれが正しいのか、私は判断する材料をもっていない。ただ、これまでの経緯と関係者のコメントを考えれば、ウクライナ空軍がアメリカ製のパトリオットの操作を誤ってF16を撃墜してしまった可能性は否定できない。そして何より、隠蔽していなければ、オレシュク元中将はなぜ解任されたのか。ロシアは公式にはまだ何も言っていないが、ウクライナの軍内と国内に失望と怒りが増殖するのを待っているのかもしれない。【以下、増補】

【増補】このニュースについては、ニューヨークタイムズ8月30日付が「ゼレンスキーがF16の墜落から数日後に空軍のトップを解任した」でも取り上げている。なるだけ重複を避けて追加しておきたい。まず、ニューヨークタイムズの冒頭近く。「西側の高官は墜落事故についての調査に関するコメントをしている。それによると、友軍のパトリオット・ミサイルによる攻撃がF16を撃墜した『示唆』が感じられるとのことだ。ただし、整備員のミスやパイロットのエラーの可能性も排除できない」
また、軍事専門家によれば、「友軍による攻撃が生じる可能性は、ミサイルやドローンの弾幕的(集中的かつ連続的)攻撃の場合にはとくに深刻なものになる」という。つまり、その可能性が高いというわけだ。「優秀な奴でもそうでない奴でも、ミサイルが同時に飛び交うようなときに、間違いのないように行動するのは難しい」と、CSISのマーク・カンシャンはいう。「兄弟殺し(友軍を撃墜する)は大きな問題だが」。
パイロットについては次のような記述もある。「パイロットのオレクシィ・メス中佐が墜落で死んでいる。彼はF16に搭乗して戦闘する以前に、速成トレーニング・プログラムを通過した約12人ほどのウクライナ人のひとりだ。このトレーニングの在り方もリスクを生み出した要素だと、専門家は述べている」。通常はトレーニングに数年かけるが、メス中佐の場合6カ月だったことは、すでにこのブログで紹介した。