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東谷暁による「事件」に対する解釈論

ゼレンスキーがトランプの資源権利要求を拒否;安全保障の確約がないのにレアアースの利権50%を強要か?

トランプ大統領の命でウクライナを訪れたスコット・ベッセント財務長官が、戦争で荒廃した同国の復興支援の見返りとしてレアアースの権利50%を要求したが、ゼレンスキー大統領はこれをけったと報じられている。もともと、ゼレンスキーが大統領選挙前のトランプに、ウクライナ国内の利権と引換えに支援を求めたのが始まりだったが、トランプの親プーチン的言動によって、ゼレンスキーが考えを変えたということらしい。


英経済紙フィナンシャルタイムズ2月15日付は「ゼレンスキーはトランプの鉱物資源半分の権利を求める要求をけった」との記事を掲載した。「事情に通じた複数の関係者によれば、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、同国の希土類鉱物の権利の50%を要求するアメリカの提案を拒否した。よりよい条件の交渉を試みているともいう」。

こうした事態は十分に考えられることだった。トランプの言動の不安定さを考えれば、土壇場になって条件が変わることが、当然、ありえたということだけではない。ゼレンスキーはプーチンに対しても、大統領選挙に当選して間もないころに、ウクライナ東部の紛争解決を「すでに1万人も死んでいるのだから、ちゃんと話せばわかるだろう」と、十分な事前準備もなく交渉したが、プーチンはせせら笑って事実上交渉を蹴ったという経緯もあった。こうしたゼレンスキーの軽挙を目の当たりにしたプーチンは、これなら侵攻すればゼレンスキー政権は簡単に崩壊するとの考えをもったとの説もある。


フィナンシャル紙に戻ろう。ベッセント米財務長官は水曜日のキエフ訪問中にゼレンスキー大統領にこの取引を提案したが、これはトランプ大統領が戦後のウクライナ復興への支援と引き換えに、アメリカがウクライナの資源の5000億ドル相当を支払う義務が生じると示唆したことを受けてのことだった。「アメリカとウクライナの交渉に詳しい3人の関係者によれば、ゼレンスキーは鉱物資源に関するいかなる合意にも、アメリカおよびヨーロッパの安全保障が直接むすびつくことを期待しているという」。


「事情に詳しい5人の関係者によると、ベッセント米財務長官は今週、キエフの大統領府を訪れて、ワシントンに戻る前にゼレンスキーに署名を求める文書を提示したという。ベンセントはゼレンスキーとの非公開会談に臨む前に、記者団に対して『この合意は両国の経済をさらに結びつけるものだ』とコメントした。このさいベンセントは、トランプ政権は経済関係を強化することで、ロシアとの戦争が終われば、ウクライナに長期的に安全の盾を提供すると語った」。


ところが、ウクライナ側が文書の詳細を確認したところ、将来のアメリカによる安全保障については何も書かれていなかったと、別のウクライナ当局者がフィナンシャル紙記者に語ったという。その結果として、「会談後、ゼレンスキー大統領は、記者団に対して、提案を検討するものの、現時点では何も署名する気はないと語ったという。

前述したようにゼレンスキーの楽観的見通しもあったには違いないが、これがトランプの外交のやり方で、彼が振り回す「棍棒」は敵対的関係だった外国にも振り回されるが、あきらかに同盟関係にある国にも、同じように振り回されることが明らかになったわけである。こうしたやり方は、ソ連時代を含めたロシア、中国の場合には珍しくはないが、アメリカが暗黙の了解のもとに行うことはあっても、露骨に公に無理やり行うのはこれまでの歴史からみてかなり珍しい。